聖地バラナシが炎上!! ガンジス河の環境対策が人々の怒りを呼んだ
■2015年10月5日にバラナシで暴動が発生した模様です
インドっていろいろな側面がある国です。いい人もいて、悪い人もいて、ヒンドゥ教徒もイスラム教徒も拝火教とも仏教徒もいて、それでいて一つの国に纏まっています。多種多様な価値観が混じり合っている国です。普段はとても平和な国ですが、とは言うものの、たまに様々な事を火種に暴動が発生します。この記事を書いている数日前、2015年10月5日にバラナシで暴動が発生し、街に戒厳令が敷かれた模様です。
バラナシ在住の友人に電話して聞いてみたところ、9月にガネーシャ・チャトゥルティと言うガネーシャのお祭りがあったのですが、そこが始まりになっているとの事でした。
ガネーシャ・チャトゥルティの様子はこんな感じです。
ガネーシャ・チャトゥルティとは大きなガネーシャ像を作り、何日間かお祈りし、最後には海や河に流すお祭りなのですが、ガンジス河浄化のため、今年からガンジス河にガネーシャ像を流す事が禁止されました。
ガンジス河だけでなく、環境汚染はインドで大きな問題になっていて、今まで環境問題に無頓着だったインド人たちがなんとかしようと真剣に考え始めています。デリーでは「Green City. Clean City」という標語を街のいろいろなところで見かけますし、インドに行く毎に街がどんどん綺麗になっている事を実感します。
その流れで河川の浄化を目的に、何千年も続いてきたお祭りの内容変更を州政府が人々に迫ったのです。それ自体は分かる話です。河を汚さないこと、環境を守ることは大切です。
とは言うものの、古来から何千年もガネーシャ像を聖なる河に流し続けてきたインド人達…自分たちの信仰を抑圧されたと感じるヒンドゥ教徒たちが黙っている訳はありませんでした。
ちなみにインドで怖いのは暴動が起きるとその数倍のただ暴れたい人たちが出現し、大騒ぎをすることです。写真では火をつけられた車が燃えていますが、きっとこれはただ暴れたい人の仕業なのだろうなと思います。インドは日本に比べてずっと若い人たちが多い国です。
若いということはエネルギーが有り余っているということでして、こういう騒ぎの時に一気に不満が暴発してしまう傾向があります。そのような時の熱狂した群衆は誰も止めることが出来ません。
10月6日にバラナシに電話した所、既に街は平常に戻り、普段の生活が戻っているとのことでした。
とは言うものの、ここ数ヶ月、バラナシは不安定になると思います。
デモや人々が集まっている所など、危なそうな所には近づかない事を強くおすすめします。
なお、今回の暴動は基本的には宗教と行政の問題であり、私達外人の問題ではないので、旅行するにはまず問題ないと思います。
この問題はバラナシで起こったことで、インドの他の街は至って普段通りだと思います。
この様なセンセーショナルな写真が出ると、「インド=危ない」と短絡的に感じがちですが、インドはヨーロッパ大陸と同じくらい広い地域ですし、その地域の一部で問題が起きただけですので、インド全体として見るとそこまで大きな問題ではありません。
この暴動を一番初めにレポートしてくれた伊藤 顕允さんの記事にはより詳しく、今回の状況が書かれています。
許可を頂き、転載させていただきました。より詳しい事情が書かれておりますので、ぜひ、ごゆっくりお読みください。
■伊藤 顕允さんのFaceBookの記事
昨日(10月5日)バラナシは、ダサシュワメード(ゴドウリヤ)、ラクサ、コトワリ(ヴィシュワナート寺院界隈)、チョークの4地区に戒厳令が出され、軍隊も出動して治安回復をしました。今日(10月6日)は、バラナシ市中の学校はすべて休校です。事の発端は、昨月9月にあった「ガネーシャのお祭り」の後、UP州政府(とバラナシ市)が、ガネーシャの神像(粘土で祖型して、着色した布や紙で飾ったもの)を、ガンジス河に流すことを禁止したため、宗教的伝統を重んじるヒンドゥ教徒、特に、バラナシ在住のヒンドゥ教の出家修行者(ダンディ・スワミ)たちが激怒して、旧市街の中心、ゴドウリア交差点で「チャッカ・ジャーム(とうせんぼ)」の抗議行動を行いました。9月22日のことです。
その時、この「チャッカ・ジャーム」に対して、警察がこん棒でばんばん修行者達を殴打して(これを「ラティ・チャージ」と呼びます)排除したのですが、その手荒な行動が、SNS/YouTube に流れ、現場の激しい様子が、バラナシ中ならず、世界中に知れ渡りました。
抗議行動を起こしたのは、シュリ・ヴィッディヤ・マト(シャンカラ・アチャーリヤの学校)のアヴィ・ムクテシュワラナンダ院長さんです。怪我をされ、入院されました。
統治者側(行政・治安側)の乱暴をゆるさないと、昨日10月5日のお昼に、マイダギンにあるタウンホール(旧市庁舎)広場で、抗議集会が開かれました。なにしろ「ヒンドゥ教の伝統」に対して、為政者側が、非情に手荒に、真正面からぶっ叩きましたし、それが映像で拡散しましたので、様々なヒンドゥ教の団体が、昨日の集会に参加しました。その集会を主催したのは、VHP(Visva Hindu Parishad)という、ヒンドゥ教の最保守派の全国組織でした。
BJP(インド人民党)が政権を取り、ナレンドラ・モディさんが首相となり、インド国内では、ヒンドゥ教保守派の動きが活発になっております。BJPの背後には、RSS(Rashtriya Sewa Sangha インド奉仕団)、VHP(Visva Hindu Parishad 世界ヒンドゥ協会)という保守的な団体がいます。いま首相になっているモディさんの中央政府が、どのくらい彼らの影響を受けるか、注意深く観察する必要があります。
全国的に今クローズアップされているのが「牛を屠殺すること、牛肉を販売すること、牛肉を食べることを禁止する」ことを法律化することです。デリー近郊での牛肉にまつわるリンチ死事件、直近では、ジャンム・カシミール州で高等裁判所が「牛肉の販売を禁止する」裁定を下し、それに対して州政府が上告し、デリーの最高裁判所が高裁の判断に異議を唱え、2ヶ月間の猶予を与えた、ということがあります。
バラナシでの昨日の集会とその後のデモ行進には、10万人が参加したそうです。集会やデモ行進は、静かに行われたようですが、行進がゴドウリア交差点に達すると、再び警察軍隊の強制排除が始まり、それに激怒した参加者・一般市民が対抗して、ポリスチョウキ(警備ボックス)周辺に放火し、林立する看板やオートバイが焼失したようです。この騒乱を鎮圧する為に警察軍隊は催涙弾を発射し、さらに、市内4地区に「カーフュー(戒厳令)」が出されました。
私の Facebook には、バラナシからの写真やニュースがどんどんアップされてきています。まだ私は日本の岐阜県にいるのですが、画面の前では完全にバラナシ市中にワープしております。
戒厳令は夜中に解除されたそうです。
しかし、インド暦では10月はお祭りのシーズン。バラナシのラームナガルではいま、伝統の「ラーマーヤナの野外演劇」が連日催されています。10月13日から「ナヴァラットリ(女神が降臨する聖9夜祭り」が始まり、10月22日は「ヴィジャヤ・ダシャミ(ダシュヘラ)」「ドゥルガ女神の神像の河流し」の日となっています。
さて、統治者側はどうするんでしょうね。
写真はすべて、バラナシの友人たちを介して Facebook 内で転載されたもので、オリジナルの所有者は不明です。
■10月5日のバラナシの写真
伊藤さんの記事にもありますが、写真はすべて、バラナシの伊藤さんの友人たちを介して Facebook 内で転載されたもので、オリジナルの所有者は不明です。著作権的に問題がある場合はすぐに削除させていただきますので、ご連絡いただければ幸いです