油を食べるカレー ニハリについて
今週はカレー&スパイス伝道師 渡辺 玲 監修のビーフ・ナハリが新入荷しました。
聞き慣れない名前のカレーであるナハリ、もしくはニハリについて、ティラキタ買い付け班の実体験を元に書いてみたいと思います。
ナハリとはどんな料理なのか。
どこで食べられるのか。
レトルトのナハリは果たして本当のニハリなのか。
「これを読めばニハリのことを知った気分になれる!!」様な感じで書いていきたいと思います。
■ニハリとは
ニハリとは、ナハリとも呼ばれる、イスラム教徒のカレーです。ニハリの見た目は油たっぷりのギトギトで赤茶、油の中に山羊肉やヤギの骨がごろんと転がっています。油には肉のダシとスパイスがたっぷりと溶け込んでおり、油の下にあるグレービーなソースを、熱々のチャパティですくいながら食べます。
Wikipediaには「牛または羊のすね肉や山羊肉、鶏肉を骨髄とともにじっくり調理する」とありますが、ティラキタ買い付け班が見た所、デリーではヒンドゥー教徒との共存の理由からか、牛肉は使われず、山羊肉を使って作られていました。
ニハリは伝統的なムスリム料理で、ムガル帝国末期の18世紀末にハイデラバードやオールドデリーで作られ始めたか、今日のラクナウに当たるアワディにある王室のキッチンで作られ始めたと考えられています。
ニハリは油を食べるカレーであるとよく言われるのですが、油たっぷりの北インド料理に慣れているティラキタ買い付け班でさえ、ニハリを初めて見たときは、「この料理、油ばっかり!!」ってびっくりした程。
お皿に盛られているニハリの上に、5mmくらいの油膜が張っている状態なので、油を避けて食べることはできません。このニハリに限らず、イスラム料理ってだいたいそんな感じでして、お皿の上には油膜が貼っている印象です。パキスタンで食べたアフガン料理も油だらけでしたっけ。
実際に食べてみると、辛さの中に、肉の旨味、スパイスの味わい、玉ねぎの香りなどが複雑に溶け合って、なんとも言えない滋味に溢れた味が口の中に広がります。
焼きたてのチャパティを、ナハリの中に浸し、口に含むと、「ああ、デリーに来たなぁ…」と心から思えるんですよね。
■ニハリを求めてオールドデリーへ
現地在住の友人から教えてもらったのが、1957年から営業している老舗のHaji Shabrati Nahari Shopです。パハールガンジからオートリクシャに乗り、ジャマーマスジットのゲートno.1 と伝えて出発です。目的地につくと、デリー在住の友人はずんずんと、混沌としたオールドデリーの中に進んでいきます。さすがはデリー在住!! 迷いが一切ありません。
小路を曲がり、また曲がり。何回も何回も曲がって、Haji Shabrati Nahari Shopにたどり着きました。ティラキタ買い付け班スタッフから出た言葉は「こんなとこ、案内が居なかったら絶対来れないよ!!!」
グーグルマップの住所を掲載しておきますので、地元の人に聞きつつ行けばなんとかたどり着けるとは思いますが…
1957年からやってる名店ですから、地元で知らない人は居ないはずです。
迷ったら、人の良さそうな顔のインド人を捕まえて場所を聞きましょう。
きっと親切にインド人が教えてくれると思いますよ。
それでもわからない場合はインド版食べログであるZOMATOのHaji Shabrati Nihari Shopをインド人に見せてください。
■デリーでニハリを食す
Haji Shabrati Nihari Shop。大人気の地元の名店ですので、夜に行くと人だかりになっていて、なかなか中に入れないのだそう。今回、ティラキタ買い付け班は朝に行きました。7時30分からオープンしていてなくなり次第終了だそうです。中に入って頼んでみると。。。出てきたのはこの赤い油ギトギトの中に肉が浮いたカレーと、焼き立てあつあつのナン。
早速一口、ナンですくって食べてみます。口の中に広がるのは、マトンの滋味と、油の旨さ。辛さも、スパイスも適切で、インド人に比べて辛いのが苦手な僕たちでも美味しく頂ける味でした。
とろとろに溶けたお肉と、赤い油をナンですくいながらどんどん食べ進めます。口の中の味覚神経が振り切れる上限いっぱいで刺激されていくのを感じます。
これはウマイ!!
今まで食べてきたムガル肉料理の中で、始めてリピートしたいと思った!!!
友人によると、マカズと言う脳みそのカレーは格別絶品でここに来たら必ず食べなければいけない一皿なのだとか。
そして、骨髄を追加すると50rsプラスなのだそうですが、それもまた美味しいのだそうです。
このお店、決して行きやすいお店ではありません。混沌のオールドデリーの中にあるし、テーブルも椅子も、衛生的にも現地仕様。
インド始めての人にはちょっとハードルが高いかな??と思うお店です。でも、何回かインドにやってきて、カリムホテルも行って、オールドデリーで出ててくるムガル肉料理とはこういうものかと、一定の理解ができたあとに行くと、心から楽しむことができる、そんな、インド上級者向けのお店です。
■レトルトのニハリは果たして本当のニハリなのか
さて、ココで本題です。この様に本場ではハードコア感満載のニハリですが、レトルトで出てきたカレー&スパイス伝道師 渡辺 玲 監修のビーフ・ナハリは本場に比べてどうなのでしょう?こちらのパッケージの商品ですね。
中を開けてみました!
おや、油がちょっと少なめですね。
でも、大きなお肉がごろりと入っています。
実際に食べてみると、複雑なスパイスと肉の味がします。
大変美味しいです。よくできています。
レストランでこれが出てきても、全くレトルトとは思わないお味です。
本場のものと比べると油が少なめですが…これは日本で売る以上、仕方のないことでしょう。
現地仕様のニハリを持ってきたら、100人中90人くらいがクレームを言うと思いますもん。きっと返品の嵐になると思いますもん。そして、現地のニハリは、僕たちが食べると油で胃もたれがします。美味しいんですけどね。
油を食べるのがニハリであると定義したら、これはニハリではない。(かもしれない)
でも、現地そのままで作ったら日本では受け入れられない。
ギトギトの油以外は現地のニハリにだいぶ似ています。
むしろ、日本人が好きなニハリはこれです。
だからこの商品はこれで正解である!
と思うのです。
正直、とっても美味しいですよ。