見ないで作ってみよう。そして売ってみよう。

この世の中には「見ないで描いてみよう」という面白い遊びがあるが、インド亜大陸(だけではないが)にはどう考えても「見ないで作ってみよう」というコンセプトで作られたのではないかと思われる商品が陳列されていることがある。そう、商品として売られているのである。

もちろんこれらは世界中にはびこる劣化コピーとは一味違う。コピーはコピーに過ぎないし、劣化コピーはその劣化版に過ぎない。だが、これらにはイマジネーションがある。推測があり、類推があり、飛躍があるのだ。


デザインが崩れまくったデッド・ベア。こりゃひどい…

これらの商品が並んでいるのはいわゆるツーリストエリアのお土産屋さんだ。探せばいろいろなカテゴリがあるのだが、その中でもこのコンセプトが著しく見て取れるのは主に刺繍屋の仕事である。「どんなデザインでも思いのまま!」など、大きいことが書かれた張り紙が店の表に張ってあり、その奥で男たちが黙々とミシンに向かっているような店だ。店先には「アイ・ラブ・インディア」だったり「Hard Yak Cafe」だったりのTシャツがごっそりかかっている。

大体それらと一緒に並んでいるのがゲバラやボブ・マーリィのそっくりさん達だ。そっくりと言っていいレベルから、一緒に名前が記されているからどうにかそれと分かるものまでその幅は広く、層は厚い。これが実在の人物を離れると空想はさらに自由になる。世界的に有名な冒険家「タンタン」に至ってはタッチが微妙に似ているかもしれない程度で、どう見ても本人より20歳程年上に見えるものもある。シンプソンズがスポンジボブとあんなに似ていると発見したのもこういう店でだ。

究極だったのはカトマンドゥで見つけたデッド・ベアのワッペンだった。既に熊ではない。耳が羽のようであり、下半身はデザイン以前にデッサンが狂っている。手には枯れ枝らしきものを持っている。販売員のおっちゃんの話だと

「これか?ひとつ50Rsだ。ところでこれはライオンなのか?それとも人間なのか?」

ジェリー・ガルシアもまさか60年代のヒッピー三大聖地のひとつで半世紀後に自分たちのマスコットがこんなにサイケデリックでアヴァンギャルドなリミックスをされているとは夢にも、幻覚の中でも思い付きはしなかっただろう。

21世紀も彼らは躍動するイマジネーションとともにコピーを超えた斬新なキャラクターたちを生み出していくに違いない。

文章:DJ sinX(しんかい)
日本での7年のDJ活動の後、世界各地でプレイするべく2007年から旅を始める。オーストラリア、東南アジアを経て現在インド亜大陸へ。活動はDJだけに留まらず、音楽イベントの開催、「Thanatotherapy」名義にて楽曲作成なども行う。

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2 Comments + Add Comment

  • こんにちは。はじめまして。
    先ほどから、デットベアの偽者のエイリアンを見て、笑いが止まりません。
    ティラキタさんのブログ、面白すぎます。
    これからも、楽しんで読まさせて、いただきます!

  • こんにちは!
    インドパパことティラキタの梅原です
    これ、ほんとうに面白いですよね! 私もSinXさんから原稿をもらったとき、爆笑してしまいました!

もし宜しければコメントをどうぞ

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