仏教徒の宝 タンカを求めて チベット密教のアトリエを訪問する

■仏教徒の宝 タンカ
今日は仏教徒の宝であり、素晴らしい仏教美術であるタンカ(仏画)の工房を訪問したレポートです。タンカと言っても、聞き慣れない単語だと思いますので、まずは少々説明させてください。

タンカって何ですか?

タンカはチベット仏教の仏画でね、チベット仏教徒にとっては、非常に大切なものなんだよ。

瞑想する時に使う道具でもあり、旅のお守りとして携帯したり、その家の家宝としたり。もちろんチベット僧院には沢山のタンカが収蔵されているよ

凄い細かく描かれていますよね

そうなんだよ。タンカはそれを描くことも修行だから、とにかく細かく、詳細に描きこまれているのが特徴なんだ。

絵の中に仏様が何柱もいらっしゃると思うんだけど、その全ての神様が隙なく描きこまれているよね。

アート性が素晴らしくて、今は諸外国のコレクターにとても人気なんだよ

■タンカははるか昔から
ネパールでタンカに最初に出会ったのはいつの頃でしょう。1990年代中盤にバックパッカーとしてネパールを訪問した際のことだったと思います。

その頃のネパールはまだ十分な電力がなく空港を降り立ったら街の半分は暗いまま。空港からの道路は砂利道で、ボロボロのタクシーでガタガタと、街に降りて行ったことをことを思い出します。

ネパールの街って不思議なものでして。街でもあり宗教空間でもあります。街の所々にストゥーパがあり、道路の端っこには仏塔が建てられ、ちょっと小道に入ると小さな神様が待っているという塩梅です。

30年ほど前の開発されてない頃は、本当にそこが一国の首都なのか、それとも巨大な宗教都市なのか判別できないような、何とも言えない不思議空間が広がっていました。



以前に比べると多少モダンにはなりましたが、現代においても、その不思議な街の感じは大きくは変わらず。神様と出会える小径や、街角の仏塔などはそのままです。



その街中で薄暗い光の中で見つけたのが、タンカでした。古いキャンバス地に、小さな小さな神様が数多く描かれ、仏画を持った手の中で、絢爛豪華な仏教世界が展開されていたのです。



これはなに?

タンカっていうんだよ。我々、仏教徒にとって大切なものなんだ。中に仏様が描かれているのだけど。これを持って、我々はチベットから旅してきたんだ

そこで出会ったのは、チベットからダライ・ラマと一緒に亡命してきたチベット人でした。

これって、いつ頃から描かれているの?

いつ頃からって…。そんなの解らないよ。もう、はるか昔だろうなぁ…

チベット密教が信仰されている所に旅に行くと、しばしばタンカを見かけます。こちらの写真はインド、スピティの最深部にあるダンカール寺院に奉納されていたタンカです。


壁にはいつ描かれたものともしれないタンカがかかっていました。


彼が言ったとおり、タンカはチベット密教の大切で伝統的な仏具なのだなと肌身で実感するのです。

■ネパールの古都を訪問する
そんな仏画との出会いからかれこれ30年。素敵なタンカを求めて、ネパールの古都を尋ねてきました。尋ねたのは、ヒマラヤの山中にあるカトマンズ盆地の中心に位置する古都パタンです。

古都パタンはユネスコ世界遺産にも登録されてるネパールの古都で、金属製品を作る人や、神様を作る人、木工芸人など、数多くの職人たちが住んでることで有名な町です。

まずは、パタンの町の中心部を散歩します。パタンは昔からの建物が本当に素晴らしい場所です。


街の中はまるで迷路みたいで小道が色々なところにあります。手作り石鹸を作っているお店や。今風の素敵なカフェもあったりしますが、それ以上に昔ながらの宗教都市感が強いところです。迷いながらもタンカのアトリエに到着しました♪♪♪





■タンカのアトリエにて
タンカのアトリエでは、男性が集中してタンカを描いていました。


こんにちは! 日本から素敵なタンカの制作工程を知りたくてやってきたのですが、色々教えて下さい

まず、タンカを描くのに必ず必要なものは、絵の具だよね。高級なタンカと、安いタンカでは使われる絵の具が違うんだ。安いものはポスターカラーを、高いものは岩絵具や宝石を砕いた顔料を使うんだよ。

青色はアフガニスタンから伝来のラピスラズリを、緑色はマラカイトを、赤は虫から取れるコチニールを使うんだ

へぇ…。ポスターカラーだと、安いって言うことでいいのですか?

いや、そうでもなくて。ポスターカラーのほうが描きやすいので、絵師によってはポスターカラーを使って大変高品質な作品を作っている人もいるよね

なるほど…。キャンバスはどんな感じなのですか?

小さなタンカは画用紙サイズだから普通に描くけど、大きなタンカは枠に張ってから描くんだよ。

良いタンカを描くにはまず下地が重要だよ。下地がしっかりしていないと、きちんとした作品ができないからね。

絵が曲がっていないか、円は真円か、構図が崩れていないかも大切だけど、まずは下地!




■タンカのアトリエにて
カトマンズの郊外にあるタンカの工房では、若い女性が部屋の中で黙々と絵を描いていました。描いているのはチベット医学の図です。



アトリエの別の場所で描かれていたのは、六道輪廻図でした。六道輪廻図は、仏教の輪廻転生の考え方を一枚の絵柄にしたものです。


この人達は一日中ここにいるの?

もちろんだよ

一日中、神経を張り詰め、細い筆で神様を描いてゆく…チベット密教を信じる人達にとってはタンカの作成こそが修行であり、スピリチュアルな作業なのだなと実感させられます。

こちらの写真は千手観音を描いているところです。髪の毛の先ほどの細い筆で千手観音の腕を一本一本描いていました。


一枚作るのにどれくらいかかるの?

小さなもので10日。大きなものになると半年以上さ。制作中の一番大きなものは3年かけているよ

タンカ制作の最終工程をやっている人もいました。金のタンカの上をガラスのペンでなぞっています。

ガラスのペンには絵の具は付いていませんが、強く描くことによって、金色がなめらかに変化し美しく反射するようになります。時間をかけて絵の全面に施すことによって大変ゴージャスなタンカが出来上がるそうです。



一筆一筆、丁寧に描いて出来上がるタンカ。汗と時間の結晶なんだなぁとしみじみと感じます。伝統を守り続ける人々の姿が印象的なアトリエ訪問でした。







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