一つ一つ 手彫りで作品を作っていく カシミールの伝統木彫のこと



■木彫の国インド
あまり知られていないことですが、インドは木彫の国でもあります。インドは布の国でもあり、お香の国でもありますが、木彫の国でもあるのです。インド製品全般に言えることではありますが、インドの木製品は、一目見れば「あ、これはインドの製品だよね」と一目でわかる独特の味わいがあります。

インド全土で色々な木製品が作られてはいますが、その中でも盛んなのがウッタールプラディーシュ州のサハランプール。

サハランプールは古くから木製品の街として知られ、インド好きの人であれば見たことがあるであろう、シーシャムウッドのお香たてなどを製作しています。南インドでも木彫が行われていて、お寺に奉納される木のガネーシャ像などが作られています。



とは言うものの、木はインドでは高級な素材ですので、多くの建築物は容易に手に入る石で作られていることが多かったりして、木材を巡る状況は日本とは異なります。

さてさて、木彫の国インドの中でも、ひときわ高品質な作品を作り続けているのがカシミールの人々です。サハランプールの木製品ももちろん良いのですが、そちらはいわゆる一般的なお品。カシミールの木製品には作品とも言うべき、緻密で精細なクラフトマンシップが存在しています。

ティラキタ買付班、数あるカシミールの工房の中でも、随一の腕を持つ工房にお邪魔してきましたのでレポートします。

案内してくれたザヒッド曰く…

カシミールの中でも一番の腕の職人に会いにいこう!


とのことで連れて行かれました

■シュリナガルのグラムさんの工房にお邪魔しました
お邪魔したのはカシミールで木彫品を作り続けているグラムさんの工房です。風光明媚なダル湖の近くに工房を構えて40年になります。

グラムさん、作業にとても集中していました。ティラキタ買付班が入っても、今目の前で作られている作品から目を上げてくれません。5分ほどしたら一段落付いた様で、話ができるようになりました。



はじめまして。ティラキタです。日本からカシミールの工芸品を探しにやってきました。

いらっしゃい。私はグラム・ハッサンです。見ての通りの木彫職人さ

今、お仕事を拝見させていただいたのですが、全てノミで彫って作られるのですね。

そうだね。大雑把な所は機会で削るけど、彫刻はすべて手作業だよ。




どうして、彫刻の仕事につこうと思ったのですか?

木彫を始めたのはね。住んでいる地域が木彫エリアだったのと、兄が木彫をやっていたからね。自然と木彫をやることになったんだ

何年くらい木彫をやっているのですか?

40年間だね。僕が今、55歳だから、15の時からずっとだ。一人前の木彫アーティストになるのには、20年の修行が必要なんだよ

アーティストになるのは大変でしたか?

私の父は服を作っていたのだけど。私は他のアーティストに習って、木彫を始めたんだ。親方に習って、独り立ちして25年間になるね。時々疲れて工房から逃げ出したくなるときがあるよね。でも、また工房に戻って来ちゃうよ。

毎日、10時に工房に来て、19-20時頃まで作業するんだ。家に帰ってから、24時頃まで作業することもあるよね。

ぐるりと工房を見回すと、半完成品の作品があちこちに置かれています。どれも、今までのインドでは見たことがないクオリティで、作品というべきものばかりです。

カシミールはイスラム教徒が多いお土地柄。クルアーンの壁掛けは需要があるのだそうです。


こちらはお盆などだそう。インド伝統の蔦模様が寸分たがわず彫り込まれています。


こちらはロータスシェイプのカフェテーブル。1回目のラッカーが終わっているので、あと何回かラッカーをかけて、完成なのだそうですよ。



こちらは開けるのに一手間かかる、いわゆる箱根細工的なギミックが入っているアクセサリー箱


かわいいキドニービーンズ型のチェストも素敵です。


すごいクオリティの高い作品ばかりですが、全部、ここの3人で制作しているのですか?

いやいや。工房に居るのは3人だけなんだけど、他にも100人ほどの人たちが、各々の家で働いているんだよ。

なるほど。カシミールの家内制手工業ですね。

そうそう。モチーフと素材を渡して、家で作って持ってきてもらうんだ。


インドらしいけど、他では見かけないデザインの半円形のテーブルは、他の人達が家で作ったものを持ってきたのだとか。


■素材はウォールナッツ
この工房では、木彫の素材はすべてウォールナッツ(くるみ)の木を使っていました。

他にも色々あるけど、くるみがいちばんいいんだ。


クルミの木を、一旦水につけて、ちょっと柔らかくして彫り込むそうです。



工房で作業をじっくりと拝見させていただいたのですが、全て手で彫っていて、とにかく時間がかかります。コツコツ、コツコツと言う音だけが作業場に響き渡ります。




使い込まれたトンカチと。


ノミと。


ウォールナッツの木だけで作られるグラムさんの作品。


一本の木から掘り出して作られたジャー。象が何頭も浮き彫りになっています。細い部分を折らずに作るのは大変そうです。これを作るには15-18日位かかるとのこと。


ヒマラヤの山の中で文字通り、コツコツと作られ続けているカシミールの木彫。せっかく訪問したので、4-5点ほど送っていただきました。

手間がかかっている分、お値段もそれなりにするのですが、すべて手作りと考えると、そこまでお高くはないかな…と思ったり。価値のわかる特別な人向けのアイテムですね。

カシミールの精細彫り木工家具/民芸品はこちらからどうぞ。


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