ナグチャンパニセモノ論争に終止符? インドやネパールにある同名会社の不思議


■ナグチャンパが幾つもある不思議
皆様、ニセモノのナグチャンパがあるっていう話を聞いたことがありますか?

似てはいるけれども、ちょっと違う感じのパッケージのナグチャンパが幾つも存在するのです。ネット上では、パッケージが違うということで「これはニセモノだ!」と言う記事なども書かれていたりします。

実は、これ。2つは本物で、他のものは別の会社のブランドです。本物が1つでなく、2つあるとは、なんとも紛らわしい話ですが、これはインドやネパールを含む、南アジア諸国のビジネススタイルと親族関係が一因にあります。

なぜ、本物が2つあるという事態が起こるのか?

日本人には知られざるその理由を深掘りしてみたいと思います。

■同じ名前のお店がいくつもあるぞ?
インドとネパールを歩いていると、しばしば、「同じ名前のお店がいくつもあるぞ? なんでだ?」と言う状況が出現します。

ムンバイの中心地、世界遺産にもなっているチャトラパッティ・シバジー・ターミナス駅から30分くらい歩いたところに、とても大きなマーケットがあります。



布市場のマンガルダス・マーケット、宝飾品市場のザベリバザールを中心として、ありとあらゆるものが揃う巨大マーケットで、お店と、人混みと、商品とが詰まりまくっている、いかにもインドらしい市場です。



その中心地にあるのが、有名なバガット・タラチャンド・レストラン。1985年に現パキスタンのカラチで生まれ、印パ分離の時にムンバイのザベリバザールに移ってきた、ムンバイっ子だったら誰でも知っている大変有名なレストランです。

特筆すべきはそのお味で、控えめに言って大変美味しい!!!

上質な素材を使って、インド料理好きだったら誰もが納得の行くクオリティの料理を作り続けています。もちろん、ティラキタ買付班も大ファンです。



が!! しかし…。

とても謎なことに、この、バガット・タラチャンド・レストラン。B Bhagat Tarachand、R Bhagat Tarachand、K Bhagat S Tarachand、Shree G. Bhagat Tarachandと、ビミョーに名前の違った4店舗が存在します。

こちらはK Bhagat S Tarachand。


こちらはB Bhagat Tarachand。


こちらはShree G. Bhagat Tarachand。


ちょっとずつ名前の違うバガット・タラチャンドの店舗。「どれが本物なの? どれが一番美味しいの?」と不安になります。不安がって、ティラキタ買付班は、一番美味しいとインド人が太鼓判を押すB Bhagat Tarachandにしか行かなかったのですが。

ちょっとずつ名前の違うお店が近隣に幾つも存在する現象。
これ、インドやネパールでは割とよく見かけるのでした。

■なぜ、バガット・タラチャンド・レストランは5店舗もあるのか?
その理由を探していたら、インドのブログAlphabet Soup for the Soulにその答えがありました。

B バガット・タラチャンドの共同経営者であるヒテシュ・チャウラは、彼らの共存について興味深い話をしてくれました。

「私の曾祖父であるK タラチャンドは1895年にカラチでこの店を開きました。パキスタン分離後、彼と私の祖父4人はムンバイに移住しました。」タラチャンドはジャベリ・バザールに土地を買ってレストランを開きました。今ではK バガット・タラチャンドとして知られています。家族が増えるにつれて、一つの収入源では不十分になりました。

「当時は競争なんて大したことではありませんでした。(彼らは)兄弟の近くにいようと思ったんです。何か緊急事態があれば、いつでも呼べるからね」とヒテシュは言います。

チャウラ家は互いに声が届く距離に土地を買い始めました。それぞれのレストランは、その店を経営する息子の名前にちなんだ頭文字が付けられました。

今日、ヒテシュは50人以上のチャウラ家の四代目にあたります。彼らはみなムンバイで飲食業を営んでいます。
とのこと。

ちょっとずつ名前の違う、B,R,K,Gの4店舗は全て本物であり、全て正統なお店なのでした。

■ビジネスはファミリービジネスが当たり前
バガット・タラチャンドレストランだけでなく、同じ系統の名前の店が何軒も近隣に存在する現象は、インドやネパールでは割とよく見かける光景です。

近隣に存在する同じ様な名前の店は、基本的に祖父や曽祖父が立ち上げたビジネスを、息子たちが兄弟間で引き継ぎ、金銭的や人間的に何かしらの問題が発生した時に出現します。

一軒の店を兄弟間で仲良く経営していければいいけれども、兄弟仲が悪かったりするケースもままあり、なかなかそうもいきません。そこで出てくるのが、名前を全員が引き継ぎつつも、お互いのビジネスは別のものとして行う形態です。

インドやネパールは家族を人間関係の軸に持つ家社会であり、同じ系統の仕事をし続ける職業カーストが同時に合わさっている社会なので、ビジネスの基本はファミリービジネスです。



日本や米国、ヨーロッパでも、ファミリービジネスと言う形態は数多いですが、インドやネパールのそれとは比べ物になりません。彼らは、家族でビジネスを興し、家族で守り育てることが一族の繁栄につながり、幸せにつながると強く信じています。

富とは家族で守り育てるもの。

西洋社会の株式会社の考え方である、資金を広く社会から公募して、配当という形で社会に還していくと言う会社経営のあり方よりは、彼らは一族の繁栄を大変重視します。

会社は家族のものであり、社会の公器ではない。

という事なんだろうな、そしてそれは、割と幸せそうだな、と思ったりします。

家族の中には、出来る人、できない人、そもそも働くことのできない人、色々な人がいますよね。

家族経営であれば、そのすべての人達が、働けて、満足できる形を作ろうとするはずです。株主に利益を還元していくのが目的の、いわゆる資本主義的な会社ではなし得ないことを、当然のこととして行うのです。

話の本筋から外れますが、ティラキタを経営している私自身は、会社はそこで働いている社員と社長のものであるのが当然であり、収益を目的とした資本主義的な株式会社では人間は幸せになりえないと思っています。

■ナグチャンパの会社に直接聞いてみた
インドの展示会において、ナグチャンパのブースが出ていたので、挨拶に行ってきました。

「こんにちは! いつもお世話になっております♪」と言って挨拶をすると、怪訝な顔をされました。

「ここは、シュリニヴァス・スガンダラヤ社ですよね? 長年お世話になっている日本のティラキタです。」と言ったら、「わたしたちはムンバイに本拠地があるShrinivas Sugnadhalaya LLPなんですよ。あなたの取引先はムンバイのShrinivas Sugandhalaya (BNG) LLPでしょう?」とのお答え。

「え? シュリニヴァスって会社が2つあるんですか?」

「そうなのよ。ムンバイのシュリニヴァスと、バンガロールのシュリニヴァスがあって、もちろん元々一緒だったんだけど、分かれて2つの会社になったのよ。」

シュリニヴァス社はSetty家により50年以上続いた世界的なお香ブランドですが、2014年に兄弟間の争いの末、2つの会社に別れました。法廷闘争まで行った挙げ句、2つの会社が今まで通り、同じ商品を同じ名前で作り続ける事になったのだそうです。

シュリニヴァス社においても、バガット・タラチャンドと同じことが行われていたのでした。兄弟って、どこの世界でもなかなか、仲良くなれないものなのですね。

どちらも創業者である父親の意志と、伝統的製法を引き継いでいるので、日本では考えられない事態ですが、2つの本物のSatya香が誕生することになりました。しかし、パッケージの一部のデザイン違いと、微妙な香りの違いもあることから、片方を買った人がもう片方を買った時に、なにか違うと混乱が生じる原因となり、日本のみならず、世界中でナグチャンパ偽物論争が勃発したのでした。

■ナグチャンパは香りの名前
シュリニヴァス社は2つに分離し、ナグチャンパは本物が2つあるということになりました。そして偽物ではないけど、青いパッケージの非常に似たような製品が幾つか存在しています。

シュリニヴァス社のナグチャンパは全世界的に有名ですもんね。二匹目のドジョウを探すような製品が出現するのは当たり前。ナグチャンパは割と一般的な香りの名前ですし。ナグチャンパの名前をつけて製品を作る事は全く問題ありません。青色のパッケージ、赤色の文字を使うことも問題ありません。

と、言うことで。

2つは本物で、別の会社のシュリニヴァス社のナグチャンパのそっくりさんがいくつか存在するという現在の状況が出現しました。

ナグチャンパ偽物論争は、「職業カースト制度を内包した家族経営が社会の基本」と言う南アジアの国々ならではの理由があって出現したものなのでした。

ちなみに、ティラキタは、バンガロールのシュリニヴァス社とお取引させて頂き、正規品を輸入させて頂いております。安心してご購入くださいませ。
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