パドマ・シュリーアワード受賞 インドの人間国宝が作るペーパーマッシュがやってきました


■凄まじく完成度の高いインド手工芸の真髄

これは凄い…ヤバすぎる…

と言葉を失うレベルのペーパーマッシュに出会いました。長年、色々な手工芸品を見続けているティラキタ買い付け班でも、初めて見るクオリティ。完成度が異常に高く、美術品として美しい、インド手工芸の真髄とも言える作品たちです。





モノの持つオーラが違うとしか言いようがない究極の作品たち。こちらの作品を作っているのはインドの人間国宝パドマ・シュリーアワード受賞者であるファヤズ・アフマッド・ジャン(Fayaz Ahmad Jan)さんです。



俺のことだったらWikipediaに載ってるよ。

という事で検索してみたら…確かに!

Fayaz Ahmad Jan
ファヤズ・アフマッド・ジャンはインドの張り子職人であり、芸術工芸と張り子の仕事でインドで4番目に高い民間人賞であるパドマシュリ勲章を授与されました。 Fayazは、米国、ブラジル、フランス、スウェーデン、イタリア、シンガポール、オマーン、ドバイ、イラン、キルギスタンで開催されたさまざまなワークショップに参加しています。


インドのTVでも紹介されている人物でした。


ちなみに、パドマ・シュリー勲章(Padma Shri/Padma Shree)とは、インド政府が民間人に与える勲章で、毎年共和国記念日に授与されます。民間人を顕彰する勲章としては4番目の格式を持ち、国籍を問わず公共性のある分野で優れた功績を残した人に贈られます。
パドマ・シュリー勲章は、芸術、教育、産業、文学、科学、スポーツ、医学、社会福祉などの分野で多大な貢献を果たした人に授与されます。故中村哲氏はアフガニスタンで長年、医療や農業支援に尽力したことが評価され、パドマ・シュリー勲章を受章しています。

■長年の夢だったカシミールを訪問する
ファヤズさんに出会ったのは、インドの中でもハンディクラフトが特に盛んな、ハンディクラフトの聖地カシミールを訪問した時のことです。ティラキタとカシミールとのお付き合いは長く、もう15年以上になるかと思います。

カシミールはこちらの場所です。


一度はおいでよ! いいところなんだよ

と、カシミール製品を届けてくれるザヒッドさんにずっと言われ続けていたのですが、先日、カシミールを訪問する機会に恵まれました。


カシミールはパキスタン、アフガニスタンとの国境が近いこともあって、インドと言うよりはすでに中央アジアといったお土地柄。街の雰囲気がインドじゃないんですよね。


長い冬の間は雪で閉ざされてしまうので、家の中でできる仕事としてハンディクラフトが盛んになりました。カシミールは領土問題などもあり、紛争地域と言うイメージもありますが、今は問題なく安心して旅行できます。

カシミールは風光明媚で本当に素敵なところでした。今回の訪問ではザヒッドさんちに泊まらせていただきました。ザヒッドさん、奥様、本当にありがとうございました。


ザヒッドさんとは、過去に「洪水というよりも津波…商品の裏にあるドラマとその後」なんていうトラブルもありましたが、なぜか憎めない、嫌いになれない、大変イイヤツであります。ザヒッドさんの顔からはいい人が滲み出ていますもん。

せっかく来たんだから、カシミール工芸の粋を見て行ってくれよな!

と、ザヒッドさんに紹介されたのが、ファヤズさんでした。

■ファヤズさんの工房を訪問する
ザヒッドさんのお家で息子さんと一緒に食事を頂きました。ザヒッドさんちはムスリムなので、お客様の前には女性は出てきません。

これから、ペーパーマッシュの人間国宝の工房に行くからな

と言って、ザヒッドさんちを出発して100mほど…近い!! 古い家の中に小さな工房があり、そこに座っているおじさんが、人間国宝その人、ファヤズさんでした。人間国宝はとってもご近所さんでした。





訪問した時、ファヤズさんは外国のアートプロジェクトに出す作品を作っていました。このプロジェクトは年単位でかかるもので、大きなドア、抽斗、カウンター、天井、窓など、部屋を全て彼のアートで埋めるのだそうです。



ファヤズさん、過去には、10m x 5mサイズのムンバイ空港のアートを手掛けたとのこと。ムンバイ空港はすてきなインドのアートを集めたことで知られていますのですが、12人がチームになって、作るのに2年ほどかかったとのこと。2年間、シュリーナガルで制作し、一週間、チャトラパティ・シヴァージー国際空港に行って、設置をしたのだそうです。



ファヤズさんの家に招待していただきました。彼の家には彼の作品が集めた部屋があり。今までどこにいても見ることのできなかった工芸品クラスの素晴らしい作品がありました!



作品のクオリティが半端ない!!!!!!


とにかく全てが細く美しくどうなってるんだかさっぱり分かりません


置いてある作品全てが、圧倒的なハイクラスです。


■ファヤズさんに製作工程を見せてもらう
ペーパーマッシュの工房は「これぞ究極のリサイクルプロダクト カシミールのペーパーマッシュ製品の工房を訪問する」でも書かせていただいたのですが、ファヤズさんの工房では遥かにレベルの高いクオリティでモノが作られていました。

こちらがある程度形が作られたペーパーマッシュの壺。


そこに接着剤をつけた薄い紙を何重にも貼っていきます。この工程は通常のペーパーマッシュにはありません。

ペーパーマッシュそのままでは凹凸があるので、水をつけた石でペーパーマッシュの表面を擦ってスムーズにします。

その後、のりをつけた薄めのトレシングペーパーをつけます。


こちらのボールがトレシングペーパーをつけた後でスムーズになってるのがわかるでしょうか。まだペイントしていないにも関わらず、どことなくキラキラと光って、既に風格があります


出来上がったペーパーマッシュの表面は白くまだ何も模様が描かれていません。大きさの割にとても硬くそして結構丈夫です。ペーパーマッシュは紙で作ってるから、柔らかいと思いがちですが、実は相当丈夫で木にも負けません。紙と接着剤で作られているので、水には弱いのですが、通常の使用には問題のない丈夫さです。

トレーシングペーパーの上から80番のサンドペーパーでペーパーがけをします。200番や400番のサンドペーパーは、また後工程で行います。

一番最初に一番下のベースカラーを塗りますこれは一番最初全部につけるものでラフに塗っていきます。


ベースカラーを塗った後、下絵であるアウトラインを描き始めます。これが基本のベースのアウトラインで、そしてその後、カラーシェーディングを付けていきます。


全て描き終わったらクリアーのラッカーで外側をもう1回細めのサンドペーパーで磨いて表面を平らにして、もう4回ラッカーを乗せます。ラッカーを乗せる行程は最低3回、多ければ5回やるそうです。ラッカーを載せすぎると黄色がかってくるので、ラッカーの加減がどれぐらいかはデザインによるそう。

■ファヤズさんのシンプルな生活
ファャズさんに彼の幸せを聞いてみました

仕事をしてるのが幸せで、とにかくこれだけをやっていたいな。他の事なんて全然やりたくないね

絵を描いている間、どんなことを考えているんですか?

やはり私はアーティストだからアートで世界が満たされるといいなとかかな。世界から争いや戦争がなくなるといいなとか。インドでもイランでも、政治家たちはすぐに戦争をしたがったり、原爆を作りたかったりするけれども、そんなものは許せないよ。

今までどんな苦労がありましたか?

俺は小学校2年生の時に父親を亡くしてね。それからの人生が色々大変だったな。他の人達は学校に行って勉強しているのに勉強ができなかったもの

学校に行けなかったんですね…それは大変…

若かりし頃にデリーで展示会があってさ。そこに招かれたんだけど、ホテルじゃなくって、展示会の中のテントで寝ろっていわれたことはよく覚えてるよ。政府主催の展示会だったのに、とても寒くて、風邪をひいてねぇ


ファャズさんをよく知るザヒッドさんが付け足しました。

彼の今の人生はとてもシンプルなんだ。朝起きて、絵を描いて。夜まで描いて寝る。アートの世界に集中しているだけなんだ

今まで、色々大変なことがあったけど。今は幸せだよ。

ファヤズさんとの素敵な出会いがあり、ティラキタに彼の作品がやってくることになりました。インドの伝統工芸の頂点とも言うべき作品の数々、お買い求め頂けるようになっています。

写真も丁寧に撮りましたので、ぜひ、ゆっくりと鑑賞していってください。


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