インドのストリートアイテム – チャイダーン(Chaidaan) [インドモノ辞典]
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■インドのストリートアイテム - チャイダーン(Chaidaan)
インド人がこよなく愛する国民的ドリンク、チャイを運ぶ道具であるチャイダーン(Chaidaan)は、インドのストリートカルチャーにおいて、なくてはならない大変重要なアイテムです。今回は、チャイダーンを話のとっかかりに、インドにおけるチャイのあれこれについて書いてみたいと思います。
チャイダーン(Chaidaan)は、チャイホルダーとも呼ばれています。インドはヒンドゥー語のほかに第二公用語として英語を使っているので、英語名もあるっていうことですね。
チャイダーンとはその名の通りチャイカップを運ぶ道具で、6個から12個ぐらいのチャイカップがストンと入る穴があり、その上のハンドルを持ってチャイが安全かつ簡単に運べるようになっているシンプルな道具です。
チャイダーンは地域の中小工房で作られているので様々なバリエーションがあります。こちらはネパールの鉄工所で、ティラキタにやってきているネパール製のチャイダーンはこの工場で作られています。職人さんが一個一個溶接して作ります。
一番シンプルなチャイダーンは針金を折り曲げてバスケット状にしたもの。かつてはティラキタでも取り扱っていましたが、インドクオリティだったので、取り扱いをやめちゃいました。
インド人に任せたら、ペラペラだわ、錆びてるわと言う超絶現地仕様のチャイダーンがやってきたこともありましたっけ。なんともインドな味わいでした。
ちょっと手が込んでくると、鉄筋を使って作られたり、鋳型で抜いたりして作られています。こちらのチャイダーンは鉄筋タイプですね。
チャイダーンのバリエーションの多さは、そのまま、インド人たちの自由さでもあります。彼らは手近にある材料に創意工夫をプラスしてチャイダーンを作ります。
チャイダーンのサイズや大きさは自由自在。2個しか運べないチャイダーンもあれば、12個運べるものもあります。チャイグラスは必ず左右に入れなければいけない訳ではなく、チャイがこぼれないように上手にバランスを取って入れたりします。
こよなく愛されるチャイダーンのデザインがどこからやってきたかはよく分かっていませんが、インドやネパールなどの南アジア全域でどこでも見かける、非常に一般的なアイテムです。
■4時間ごとに3万カップものチャイが無料で振る舞われる
町のチャイワラたちはこのチャイダーンなしでは働くことができません。チャイダーンがなければ、唯一の商品であるチャイを運ぶことができませんからね。
インドでチャイを作る人をチャイワラといいますが、普通、チャイワラは1日に300杯以上のチャイを作ります。映画「聖者の食卓」でも有名なアムリトサルのゴールデンテンプルでは、4時間ごとに3万カップものお茶が振舞われるそうですよ。
その昔、チャイを飲むためにはチャイワラの所まで行かなければ飲めませんでしたが、携帯が普及してからは、電話で注文して配達してもらうなんていうスタイルが出現しました。
現在インドはモンスーンの真っ最中。この時期、インドの各都市は排水が悪いので腰の辺りまで浸からないと移動できなくなってしまうのですが、そんな時でも電話で注文を受けたら、腰まで水に浸かりながらチャイを運んだりします。
source:indianexpress.com
■チャイ屋もtiktokで営業する今
つい先日、インド国内でのtiktokの使用禁止例が出てしまったので、この話題はちょっと古くなっちゃったのですが。インドの片田舎に行った時、「一緒にtiktok やろうぜ!!」と半ば強引に誘ってくるチャイ屋に会いました。よくよく話を聞いてみると…
辺境の地でチャイ屋をやりながら、tiktokのフォロワーが12000人!もいるんだとか。
tiktokでチャイと一緒にダンスをして宣伝&営業しているのだとか。見た目はおんぼろの、昔ながらのチャイ屋でしたが、やってる事は最新でした。
ティラキタ買付班もむりやり登場させられました…
■チャイはお皿で飲むのもアリ
インド人達、熱いチャイを飲む時はお皿で飲む人も多いみたいです。チャイがこの様に出てきたら、おもむろにコップを傾けお皿に出して。お皿で飲みやすい温度にまで冷まして頂きます。
■起業大国インドとチャイの関連性
インドで、自分のチャイを売るのはそんなに難しいことではありません。一番簡単な方法はチャイが入ったヤカンを手に持って、長距離列車に乗り込むだけ。必要な資本はチャイの葉っぱと牛乳だけという手軽さです。
町の中でチャイを売る場合でも、ティーラ(Thela)と呼ばれる4輪の台車にコンロとヤカンがあれば出来上がり。チャイ屋さんは相当貧乏で、学のない人でもできる簡単な起業です。
どんなことでもそうですが、人間が何かをできるようになるには練習が必要です。
言葉を喋るのだって、赤ちゃんの時から、徐々に言葉を喋っていて上手になりますよね。
サッカーボールを蹴るのだって、何回も蹴ってみて、上手になっていきます。
それと同じように、起業をするという行為も、何回もその行為を繰り返して、初めて上手になるのだと思います。
まずチャイの屋台を始め、それが上手に行ったらお店を借りてレストランを開店、そしてチェーン店にすると言うステップを踏んでいくとすると、一つ一つ小さな失敗と学習を繰り返しながら大きくなることができるので、大きくなったときでも失敗しづらいのだと思います。
インドは世界最大の起業数を誇っている国で、いろいろな新規事業がインドから出てきていますが、それはこのように簡単にチャイのお店を出せるとか、小さなビジネスであったら街ですぐ試すことができるなどの、新しいチャレンジに寛容な社会があるからではないでしょうか。