陽気で楽しいタミルのおっさん達の憩いの酒場TASMAC



■インドとお酒
インド人は割とお酒が好きです。宗教的、伝統的に、飲酒が良い事とされていず、お酒の売買や飲酒が規制されてきたこともあり、日本みたいに大っぴらに飲める訳ではありません。とは言うものの、インドに行くと夕方から真夜中まで飲み会になることもあります。そこにはインドならではの、建前と本音が入り交じる不思議なルールが存在しています。

インドでは年上の人の前でお酒を飲まないって聞いたけど、どうなの?

と、ジャイプルの取引先のビニーさんに聞いてみました。

あ、インドって、そういう所があるよね。普通は親や目上の人の前では飲まないと思うな

うちの家庭はあんな親父(所ジョージみたいな趣味人のオヤジさんです)で結構リベラルだから、親父の前でビールの1杯や2杯くらいは飲んだりするけど。親の前で、激しく酔っ払ったりすることはやっぱりルール違反だよ


表向き、飲酒はあまり良くないこととされていますので、建前と本音が共存する感じではあります。

表向きは飲まないよと言っても、実は飲んだり。
女性は飲まずに男性陣だけで飲んだり。
年長者の前では飲まなかったり。
ヒンドゥー教の寺院の周りではお酒の売買が規制されていたり

そこに各州の独特な事情が加わって、インドのお酒ワールドを形作っています。

■お酒事情は州ごとに
お酒事情は州ごとに異なります。お酒の税金は州ごとに管理されていて、このビールはマハラシュートラ州でしか売ってはいけないとか、ウエストベンガル州でしか売ってはいけないとか、ボトルに書いてあったりします。州ごとに酒税率も異なります。

こちらの写真はハリヤナ州でしか売ってはいけないビールです。


パキスタンにほど近いグジャラート州は、ドライステート、すなわちお酒のない州として知られています。

コルカタのあるウエストベンガル州にはドライデーがあります。「インド最後の日だから、みんなで飲もう!」という話になった時、全然飲める場所がなくて困ったこともありました。

お酒に対して寛容だなと思うのはゴア州でしょうか。他の州では鉄格子の隙間から買わなければいけないお酒ですが、ゴアでは普通にスーパーで売られています。酒税も安く、ラインナップもそれなりにあって、十分満足できます。

こちらの写真はゴアのスーパーのお酒コーナー。個人的には、右下の白におさるのラベルのBIRAが一番好きです。

■みんなが好きなのはウィスキー
インド人が大好きなアルコールといえば、何と言ってもウイスキー。

基本的にインド人との飲み会ではウイスキーが出てくるよね
最初はちょっとビールを出してくれるけど、やっぱりメインはウィスキーだな


ビールはあるのですが、日本のようなさっぱりしたラガービールは好まれず、ストロングと言われるアルコール度数8%位のビールが大きなシェアを占めています。お味の方は正直、アルコールが強すぎてたいして美味しくありません。ティラキタ買付班は、ビラというおしゃれなパッケージのビールが好きです。

インド人にとってお酒は嗜好品というよりも、酩酊感を楽しむドラッグのような位置づけだと思うんだ


特に貧しい層にとってのお酒はまさにドラッグで、1日の稼ぎでウイスキーの小瓶を買って、味わうでもなく、カポッと一気飲みをしてしまいます。

酔えればいい、一番安いアルコールを飲んでるのですから、味は重要ではないのでしょう。

■タミル・ナードゥの酒場はタスマック
南インドのタミル・ナードゥ州に来てみると、タミルにはタミルならではの、酒場の形が存在していました。

タミルにはタスマックという、公営の酒場があるんだよ


と聞いて、早速訪問してみました。他の州では酒屋は酒屋として、単独で存在してるのに対し、タスマックはその裏に飲み屋が併設されているところが違います。

こちらがタスマックの看板。お酒の広告は禁止されているのでしょう。スプライトの大きな看板の下にTASMACの文字がありました。


薄暗い照明の店内に入ってみました。お世辞にもきれいな場所ではありません。インドの地元の人々の場所ってこんな感じがあります。お酒は奥の鉄格子の中の人に言って買い、おつまみは右手の鉄格子の中の人に言って買います。


お酒のアテはどんなものが売られているのか、鉄格子の中を覗いてみます。お酒は分かるけど、アテは別に鉄格子の中でなくてもいい気がするけどなぁ…と思いますが。多分そう言う地元ルールなのでしょうね。


魚のマサラフライに、お豆と青唐辛子と生の玉ねぎをまぜたもの、茹でたひよこ豆が並んでいました。


よく見るとお肉も売ってるわよ?

お店の端っこではお肉と唐辛子と玉ねぎのスパイス炒めをつくる人がいました。


タスマックの入り口ではおつまみが売られていて、お酒を買って奥に入ると、屋外でお酒を飲めるように、テーブルと椅子が並んでいます。


なんだなんだここは楽しそうだぞ


インドでお酒を飲む場合、鉄格子の酒屋で買って持って帰るか、ちょっとおしゃれなバーに行くかの二択なのですが、タスマックは一般のローカルなインド人が日常的にやってきて飲む場所でした。全く飾り気はなく、ギリギリ許容できる感じの汚さです。

インド人たちが友人とやってきてはちょっと飲んだり、オートリクシャのおじちゃんたちがやってきては日々の疲れを癒したりする場所なのですね。



ワカナム! 君たちどこから来たの?

ジャパンだよ!

ジャパンから何しに来たの?

世界的に有名な、ミーナクシテンプルに参拝に来たのよ

本当か! フレンド!! 来てくれてありがとう!!

とインド人ならではの人間関係の近さでフランクに話しかけられます。あっという間に友だちができて、あっという間に楽しくなれてしまう。人懐っこいタミルの人達がもっと人懐っこくなる、インドマジックが炸裂しそうな場所です。

こんな感じのローカル飲み屋、他の州では見たことないな。
あったら楽しいのにな



■TASMACの歴史
アルコールにあまり寛容でないインドのことですから、TASMACが今の形になるまでに様々な紆余曲折があったことでしょう。

タミル・ナードゥ州では、アルコールの消費とその社会的影響が長年議論の的となっていました。1950年代には、一時的に禁酒政策が導入されましたが、実行の難しさや違法な酒類の蔓延により、数年後にこの政策は廃止されました。

その後、州政府はアルコールの販売を管理するため、1983年にTASMACを設立しました。TASMACの主な目的は、アルコールの消費を制限しつつ、政府の収入源を確保することでした。

設立当初、TASMACは一部の酒類の販売を許可していましたが、徐々にその販売網を拡大し、2000年代にはほぼすべてのアルコール販売をTASMACが管理するようになりました。これにより、タミル・ナードゥ州内の酒類の販売は完全に政府管理下に置かれるようになりました。

現在、TASMACはタミル・ナードゥ州の主要な収入源の一つであり、多くの州営酒類販売店を運営しています。また、TASMACは州内でのアルコール消費を監視し、違法な酒類の取り締まりも行っています。

社会的影響TASMACの設立以降、タミル・ナードゥ州におけるアルコール消費に関するさまざまな社会的問題が議論されています。一部の人々は、政府がアルコール販売から得られる収入を優先していると批判しており、特に低所得者層や若者の間でのアルコール依存症の増加が問題視されています。

一方で、TASMACによる管理により、違法な酒類の流通が減少し、州の収入が安定するという意見もあります。
とのことで、やっぱり、インドならではの事情が透けて見えます。

なにはともあれ、行って飲んで喋ってとっても楽しいTASMAC。地元のおっちゃんたちと仲良くなるのにこれ以上ピッタリの場所はありません。

タミルを訪問されたときは、ぜひ一度、訪問してみてくださいね♪


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