シュリーナガルで手作り絨毯を作り続けるナシールさんのこと


■手織り絨毯は中央アジア全域に
ティラキタ買付班、素敵な手織り絨毯を求めて、代々、絨毯を作り続けているナシールさんちを訪問してきました。今回の話の舞台はシュリーナガルと言う場所で、地図ではこちらになります。



地図を見て頂くと一目瞭然なのですが、シュリーナガルはインドではありますが、完全に中央アジアに位置するお土地柄。パキスタン、アフガニスタン、タジキスタンと近く、インド本土やネパールとは距離があります。

ペルシャ絨毯に代表される手作り絨毯は、ペルシャ=今のイランが有名ですが、実は中央アジアのいろいろな所に産地があります。その理由は、絨毯やラグが、彼ら遊牧の民の生活必需品だからです。

生活に必要な品を自分たちで作っている。ただそれだけの、とても簡単な話なのです。

手織りの絨毯の歴史は古く1000年前にも遡れるほどですが、その頃は今のような国境などはなく、交易路を行くキャラバン隊の行き来によって物や絨毯を織る技が伝えられていきました。

精細な手織り絨毯の技は、今のイランだけでなく、今のトルコやウズベキスタン、パキスタン北部などに伝わり、そしてインド北部のカシミールにも伝わっています。

そしてこちらの絨毯がナシールさんの作品です。


■手織り絨毯の工房は湖の中に
シュリーナガルは、寒くて雪に閉ざされてしまうお土地柄のため、家庭内手工業が盛んで、街の中には色々なものを作っている職人さんたちがいます。近年になり、その数は減ってきましたが、まだまだ手工芸は健在です。



今日はナシールさんちに行くよ。ナシールさんちなのだけど、ボートでしか行けない特別なところにあるんだよ


と、友人のザヒッドに案内してもらいました。途中までは車で行き、途中からボートなのだそうです。車に乗り込み走り始めると、窓の外には水をたたえたダル湖が広がり、古来から天上の土地と呼ばれていた素晴らしい風景が広がってきます。

程なくして車を降りて、歩き始めました。細い道の左右には水が広がり、家は水の上に建てられています。水の中に木で杭を打ち込み、基礎を作って建てるのでしょうか。壁は日干しレンガ、屋根はトタンで葺かれ、水の上で人々が暮らしていました



ここからは歩きで行くよ



水の中に建物が立っているかのようです。

ザヒッド、ここ、すごい綺麗なところだね


昔はもっときれいだったんだよ。この風景を求めて、アフガニスタン戦争が起こる前はヨーロッパから旅人がバスに乗ってやってきたもんさ


薪に使う木材を、船に積んでいる人たちがいました。一つ一つ、手作りの船に積んでいます。きっと、船でないと家に行けないのでしょうね。




■代々絨毯づくりをしていた家系のナシールさん
そして、小さなボートに乗り込みます。まるでおとぎ話の中のような風景の中を進みます。


ボートに5分ほど乗って、ナシールさんのお宅に到着しました。僕達の到着を待っていたと見えて、家族全員で出迎えてくれました。



こんにちは。素敵な絨毯を作っていると聞いて、日本からやってきました

ナシールです。遠い所をようこそ!! こちらは夫のナズィール・アフマッド。夫婦で絨毯づくりを行っているんですよ

もし良かったら、絨毯づくりのことについて話を聞かせて頂けませんか?

ええ、いいですよ。うちの家系はね、絨毯づくりの家系なんです。私の家も、旦那の家も、実家で絨毯づくりをしていたんです。25年前に母が亡くなって、旦那のナズィールのもとにやってきたんですよ


と言いながら、絨毯造りを行っている部屋に案内してもらいました。絨毯づくりを行っている部屋は手作りの木の小屋で、さほど大きくありません。



電気もない薄暗い部屋の中に、大きな木の棒に抱きつくようにして織りかけの絨毯がありました。眼の前にあるのは、年月の重みを感じる長年使ってる道具です。

私が使ってるこの道具は、結婚してきた時に、嫁入り道具として持ってきて。それから25年間、ずっと絨毯づくりに使っているんです


■小さな小屋の中で絨毯づくり
お世辞にも立派とはいい難い小さな小屋の中に、大きな丸太が上下に鎮座していて、その間に経糸が走り、出来上がった絨毯が下の丸太に抱かれるようになっています。丸太の前には長椅子が置かれ、そこに座りながら作業をするとのこと。



絨毯の近くには独特な形をしたナイフと櫛が置かれていました。複雑に見える手作り絨毯ですが、絨毯づくりに必須の道具は実はこれだけなのだそうです。



上からは絨毯の毛の材料であるカラフルな絹糸が吊られています


ナシールさんがこうやって作っているのよ、と実際に作っている様子を見せてくれました

上から下がっている経糸に対して、糸を結ぶ作業がほとんどでした。糸を結んではナイフでカットして、また糸を結んでの繰り返しです。


今作っているこの絨毯は、どれくらいのサイズなのですか?

これはね、60cm x 90cmで、そんなに大きくないわ。 今これで、1ヶ月くらい織ったところかしら

これで一ヶ月?

そう。60cm x 90cmのもので、3ヶ月はかかるわね



ここで、ザヒッドが横から口を挟んできました。

ここシュリーナガルでは、1インチ(3.3cm)に対し18回糸を縛るのが普通なんだよ
そうすると、1平方インチ(3.3cm四方)では324回縛るよね
だから、凄く時間がかかるんだよ


1平方インチ(3.3cm四方)に324回???
まぁ、確かに絨毯を見るとそういう風になっているけど…
しかし、3ヶ月かぁ…大変だな


大変さ。だから、最近つくる人の数がどんどん減っているんだよ




一日にどれくらい作業するのですか?

1日に5時間から8時間ぐらいですね
子どもの世話もありますしね
私達はムスリムなので、金曜日はおやすみで、日曜日は半日なんですよ



あの、ナシールさん
この仕事をするのに、一番大切なところって何ですか?

一番大切なのは道具ね。枠が正確でないと狂ったデザインの絨毯ができてしまうわ。そしてとにかくきちんと作らないと、お客様は手にとってくれないし。細かい作業を、綿密に、淡々とできなければ駄目ね

建築でもなんでもそうですが。確かに、道具が正確でなければちゃんとした物は作れません。もう、その通りだなぁって思います。

ナシールさん、この仕事で一番嬉しい事、いい事は何ですか?

長い時間をかけて一つの作品ができた時は本当に嬉しいわよ。作品ですもんね。

あとは、家で仕事できることかしら。家の仕事や子供の面倒を見ながら仕事ができるの。

だから街に働きに出なくてもいいからとてもいいのよ。



一つの作品に取り掛かり始めて、3ヶ月間かけてひとつの作品を作り、現金収入を得るこの仕事は彼女にとってぴったりだと言います。

絨毯を作っている部屋を見終わったら、居間に通されてお茶の時間&絨毯の品評会。
座っている間にみんながどんどん集まってきましたので、みんなで集まって写真を撮らせてもらいました!



ナシールさん、今回は絨毯を作る工程を教えて頂いてありがとうございました!!

そして、ナシールさんの絨毯。2枚だけやってきました。2枚と言ってもナシールさんの半年分のお仕事です。ぜひ、お店の方も見てみてくださいね♪

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