手作りの伝統を受け継ぐサンガネールのウッドブロック工房を訪問する



ティラキタ買付班、インド、ラジャスタン州サンガネールのウッドブロック工房を訪問してきました。

ウッドブロックプリントは単純に言うと、「布にスタンプを押すだけ」の簡単な印刷方法です。本当に原始的な印刷方法ではありますが、その簡単な方法で、インドの方々は様々な素敵な布を作り続けてきました。


■ウッドブロックの工房はサンガネールに
今回の話の舞台は、デリーから電車で5時間走った所にあるマハラジャの街ジャイプルです。

この街は数多くの手工芸で有名です。宝石、木彫り、金属工芸など、様々な工芸品が作られていますが、その中でも手作りの布がとても有名で、ジャイプル郊外のサンガネールとバグルーが2大生産地と言われています。



今回、ティラキタ買付班、ジャイプル郊外にあるサンガネールのウッドブロック工房を訪問してきました。工房がある場所はサンガネールのナムデイチョークの近く。ずっと昔からウッドブロックを作り続けている一族のビカスさんの工房を訪問しました。





ビカスさんは36歳。子供の頃から父親がウッドブロックを作ってるのを見て育ちました。ウッドブロックづくりに使うトンカチや、のみが身近にあったので、遊んでいるうちに自然とウッドブロックが作れるようになったそうです。



特別なウッドブロックメイキングの教育とかは受けてないんだよね

と言いますが、子供の頃から身の回りに道具があるその環境が、彼の英才教育になったのでしょう。

父親も、祖父もずっと、ずっと、ウッドブロックを作って暮らしてきたんだよ

元々ね、うちの家族はウッタール・プラデーシュ州のファルカバードに住んでいたんだけど。サンガネールからの注文が多かったから、一家で引っ越してきたんだ。俺が子供の頃の話だよね

現在はここ、サンガネールで15人の仲間と一緒にウッドブロックを作っています。

■ウッドブロックの制作風景を見させてもらいました
ウッドブロックを作るには、原料となる木がなければ話になりません。材料の木はチークとローズウッド。そして、ラジャスタンでしか産出しないという木材であるテコメラが使われます。



この工房とあと倉庫がいくつかあるのだけど、1年分くらいの材料を常に持っているよ。木材は冬の間に、半年くらい乾燥させてから使うんだ


工房の中には輪切りになった木が沢山積まれていました。デザインの大きさによって、適切な木材を選び、デザインを彫り進めていきます。



ちょうど、デザインの紙を持った人が木を探しに来ました。トレシングペーパーを木に合わせて、ちょうどいいサイズの木材を探しています。



工房のあちこちに職人が座り、コツコツコツコツと丁寧に彫っています。


こちらでも


こちらでも


ウッドブロックは印刷工房からの完全なオーダーメイドで、彫っているデザインは一人ひとり違います。

ビカスさん、一つのウッドブロックを彫るのにどれくらいの時間がかかるのですか?

サイズやデザインの細かさで異なるのだけど、そこにある15cm四方のやつで3日位かな

3日でこれを彫り上げるのですか?? 木だから一回ミスしたらまた作り直しですよね。丁寧に彫り込んでいかないと失敗する気がしますが。早すぎないですか?

一日中、集中して作るし、毎日の仕事だからね

ちなみに、このオーダーメイドのウッドブロックはお幾らくらいになるのですか?

一個3000ルピー位かな。

■ウッドブロックにも工夫
ウッドブロックをよく見てみると穴が開いていました。


ビカスさん、この穴はなんのためにあるのですか?

それはね、空気抜きの穴なんだ。上からブロックを布に押した時、空気が逃げる場所がないと、デザインが崩れちゃうんだよ。空気が抜けないとダメなんだ

ウッドブロックは昔からずっと作られていると思うのですが、昔と変わったことはありますか?

これが昔のウッドブロックだよ

と、ポンとウッドブロックを手渡されました。

これが今のウッドブロックだよ

と、もう一つウッドブロックを手渡されました。

違いがあるのだけど、わかる??

いや…同じに見えますが、どこが違うのですか?

デザインの彫り込みの深さなんだ。今のウッドブロックは5mmくらいの深さなんだけど、昔のものは1cmくらい彫ってあるんだ。深く彫ることによって、ブロックの本体が水に浸からないから、ウッドブロックが長持ちするんだよ

ブロックは一度購入すると3年から4年かぐらい使われ、新しく注文されます。ブロックは使い続けると徐々に曲がってきて、印刷用としては使えなくなるとこのと。

全てコンコンコンコンと手作業で作られるさんがネイルのウッドブロック。インドの古く長いウッドブロックの伝統を感じさせてくれます。

工房の中では10人ぐらいがコツコツコツコツとウッドブロックを作っていました。


■布にかける人類の情熱
太古の昔から、人類は布を作り続けてきました。木や植物、虫の繭などの使える繊維を使って糸を紡ぎ、糸を織って布を作ってきました。

今、私たちが日常的に身につけているコットンですら、綿花から私達の衣類になるまでにはたくさんの工程が必要になります。

綿花を摘み、ゴミを取り除き、紡いで、糸にします。
糸を織って布を作ります
染色などの様々な方法で、布にデザインを施します。
布を裁断、縫製して衣類ができます。

原料から衣類になるまでには多くの工程がありますが、布にデザインを施す工程は特に大切で、古来から様々な方法が編み出されてきました。

今でこそ、機械による大量印刷ができますが、その昔、機械がなかったときには、人類は自分たちの手で布を染め、デザインを作ってきました。

ウッドブロックプリントは単純に言うと、「布にスタンプを押すだけ」の簡単な印刷方法です。本当に原始的な印刷方法ではありますが、その簡単な方法で、インドの方々は様々な素敵な布を作り続けてきたのですね。

人類の文化遺産も言うべき、インドの手作り布を紹介できること、とても嬉しく思います。


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