毎日1万人に無料の食事! 誰もが神様の聖餐を頂けるウドゥピの寺院を訪問する

■寺院料理、プラサード
インドのお寺に行くと、よく出会うのが「プラサード」です。プラサードとは、簡単に言えば神様に捧げられた食べ物のお下がりのようなもので、お菓子や果物を少しいただく場合もあれば、お寺によってはきちんとした食事として振る舞われることもあります。

有名なところでは映画になったシーク教徒のお寺、アムリトサルのゴールデン・テンプルなんかがありますね。



インド料理というとレストランで食べるカレーやビリヤニを思い浮かべますが、寺院で食べる料理はまたちょっと別物です。その土地、その寺院、その宗派によって内容もずいぶん違っていて、インドを旅していると「ここではこういうものを食べるんだ」という発見が毎回あります。

■ヒンドゥー教的に、聖なる食事
プラサードは、単なる無料の食事ではありません。一度神様に捧げられたものを人間がいただく、というのが大切なところで、ヒンドゥー教では特別な意味を持つ聖なる食べ物です。

私たち日本人からすると、「お寺でご飯を食べさせてもらった」という感覚なのですが、現地の人たちにとっては、それだけではありません。神様から分け与えられたものをありがたくいただく、という宗教的な行為でもあり、お寺の中でみんな一緒に食べるということ自体にも意味があるのでしょう。

■インドのお寺訪問には、プラサードがつきもの
ティラキタでは長いことインドに通っていますので、これまでにも色々なお寺でプラサードをいただいてきました。南インドの大きなお寺で食事をいただいたこともありますし、小さなお寺で甘いお菓子を手のひらにちょこんともらったこともあります。

その時その時ごとに、ブログに残しています。

ディープ・インディア探訪 ヴィシュヌ寺院の床で聖餐プラサードを頂く



オニオンもガーリックもなし。けれど満たされる─その名は「ISKCON」


お寺を訪れて礼拝をして、最後にプラサードをいただく。インドのお寺巡りをしていると、そういう流れになることがけっこうありますし、個人的には寺院建築を見るのと同じくらい、このプラサードが楽しみだったりもします。いや、間違いなく寺院建築よりも楽しみですね。

その土地、その土地で何千年と伝えられてきた伝統を頂くことになりますので、そこでしか味わえない特別な体験になります。

そして今回も楽しみにしていたのですが、ここのプラサードは、今まで経験したものとはかなり違いました。

正直、インド歴30年の僕でも衝撃だったので…
ぜひ最後まで読んでくださいませ♪

■ウドゥピのシュリ・クリシュナ寺院


今回訪れたのは、南インド・カルナータカ州の海沿いの町、ウドゥピにあるシュリ・クリシュナ寺院です。

ウドゥピという名前は、日本ではそこまで知られていないかもしれませんが、インドでは有名なヒンドゥー教の巡礼地のひとつです。町の中心にあるシュリ・クリシュナ寺院は13世紀、インド哲学の一派であるドヴァイタ(二元論)で知られる聖者マドヴァーチャーリヤによって開かれたとされ、現在でも毎日たくさんの参拝者が訪れています。

ここで祀られているのは、子供の姿をしたクリシュナ神、バーラ・クリシュナ。ちょっと変わっているのが、御神体を正面から直接見るのではなく、ナヴァグラハ・キティキと呼ばれる9つの穴が開いた窓を通して参拝することです。

確かに、なんか小さな穴を覗いたな

そう言うことだったのね。理由のわからないまま参拝してたわ


そして、このお寺を語るうえでもうひとつ面白いのが、とにかく「食べること」と縁の深いお寺だということ。

ウドゥピという名前は、インドでは「ウドゥピ料理」という料理の名前としても知られています。野菜や豆、ココナッツなどを使った南インドの菜食料理で、もともとこの土地のお寺や僧院の食文化と深く結びつきながら発達してきたものです。

ウドゥピ料理と言う名前のついたレストランは、ヒンドゥ教徒的に清浄なベジ料理を出すんだって聞いたよ


カルナータカ州観光局の資料でも、ここでは毎日クリシュナ神に多くの料理が供えられ、そこから参拝者にも食事を振る舞う習慣が育っていったと紹介されています。

なので、今回の目的のひとつが、そのご飯。

ウドゥピまで来たんだから、ぜひともここのプラサードを食べてみたい!!!

オディシャのも衝撃だったけど…ここのはどうかしら


で、実際に食べてみたら、想像していたものとずいぶん違いました。



■まずは寺院を参拝して
いくらプラサードが目当てと言えど、まずは寺院を参拝します。

門前町には神様関係のお店が並び


牛が参拝者の鞄にいたずらをするような、インドらしい光景が広がっていました。


こちらがシュリ・クリシュナ寺院の正面玄関です


中に入るまでに2-3時間は並ぶのですが…その理由は先程書いた、「穴の中からクリシュナ神をのぞく」形の参拝だからなんですね。ひとりひとり、気持ちを込めてクリシュナ神にお祈りするので、列は一向に進みません。

参拝待ちの行列のところにあったのがこちらの「礼拝時の服装について」です。伝統的なドーティやサリーはOKで、現代的な服装はNGとのこと。特に半ズボンは完全にNGですね。


■参拝が終わり、いざ!! プラサード!!
参拝が終わり、いざ!! プラサード!!です。

プラサード会場はどこかな…

とウロウロしていると、大きな鍋で料理をしている光景に行き当たりました。凄い大きな釜が並び、薪がこれでもかと詰まれ、超大鍋料理が作られていました。



そして、プラサード会場に到着。お寺さんで、なかなか写真が撮れなくて説明しづらいのですが…手で、石の上から直接ご飯を食べたのです!!!!


え? ここ、食器がないわよ?

全員、石の上で食べてるぞ。こんなの初めてだ!!
食器だけでなく、バナナの葉っぱすらないぞ!!!


南インドですから、てっきりバナナの葉っぱでも敷かれて、そこにご飯が盛られるのかなと思っていたのですが、何も出てこない。ではどこに食べ物を盛るのかというと、なんと目の前の石の床にそのままドバー!なのです。

ご飯も、サンバルも、ココナッツチャツネも、全部床の上。床に置かれた食べ物を、そのまま手で食べていくという、かなり思い切ったスタイルのプラサードでした。



■石の床だからできること
床に直接食べ物を置く、と書くと「それって不潔なんじゃないの?」と思うかもしれませんが、もちろん普通の汚れた床にそのまま料理を置いているわけではありません。

食事が終わると床はきれいに掃き清められ、そのあと大量の水を流して、次の人たちが食べられるようにきちんと掃除されます。石でできた床なので、水でザバーッと洗ってしまえるんですね。そうしてきれいになったところへ次の人たちが座り、またご飯やサンバルやココナッツチャツネがドバドバと配られていきます。

食器を何百枚、何千枚と洗う必要もありませんし、大人数にものすごいスピードで食事を提供するという意味では、かなり理にかなった仕組みでもあります。



■インド慣れしていても、初めての食体験
インドには何度も来ていますし、プラサードも色々な場所で食べさせていただきました。それでも、石の床をそのままお皿にしてご飯を食べるというのは初めての体験でした。

インドは広くて、本当に色々あるなーーー

しかもここの食堂、とにかく規模がすごいんです。大きな部屋の中に石でできた食事スペースがずらーーっと並んでいて。それが1階だけではなく2階にもあって、一つの部屋に数百人が一度に入って、一斉にご飯を食べられるようになっています。

一回の食事時間は、体感ではだいたい10分くらい。みんなが食べ終わると床を一気に掃除して、次の人たちが入ってきて、またドバドバと料理が配られる。これを一日中繰り返しているわけですから、一体一日に何人がここで食べているのでしょう。

何千人どころか、日によっては何万人という単位になっていても全然不思議ではありません。

どんだけ出すんだ。すげえ

■そして、ご飯はうまい!!!!
こういう大規模な食事ですから、もっと大味なのかなと思っていたのですが、これがちゃんと美味しいのです。

しかも、そんなに辛くありません。油やスパイスをたくさん使った派手な味ではなく、かなり素朴で、毎日でも食べられそうな感じの料理でした。塩加減もほどよくて、食べていて全然疲れない味です。

最初にジーラライスがやってきて、そのあとに白いご飯が来るというのも、ちょっと面白い順番でした。それから豆を蒸したような料理があって、これが思いのほか美味しい。ココナッツチャツネもあり、サンバルもあり、それぞれを床の上でちょっとずつ混ぜながら食べていきます。

途中には甘い揚げ菓子のようなものまでやってきました。

「もう結構お腹いっぱいだな」と思っていたところへ、最後に登場したのがキールです。甘いミルク系のデザートなのですが、残っていたご飯とキールを混ぜて食べたら、これがまた美味しい。

結局、最後にはしっかり満腹になりました。

これだけの人数に美味しいご飯を出すって凄い!!!


そして改めて周りを見ると、ものすごい人数の人たちが、食器も使わず、みんな石の床に盛られたご飯を食べている。こんな食体験、なかなか他ではできないと思います。

■礼拝の時間と、プラサードの時間
このお寺では礼拝の時間も毎日だいたい決まっていて、お寺全体がそのタイムスケジュールに沿って動いています。



朝になるとまず礼拝があり、そのあとには神様のお着替えの時間があります。そしてまた礼拝があったり、プラサードの時間があったり、再び神様のお着替えがあったりして、一日が進んでいきます。

これがなかなか面白いところで、お寺では神様も一日中ずっと同じ姿でいるわけではないんですね。朝が来れば朝の礼拝があり、時間が来ればきちんと衣装を替えてもらい、その合間に人々が参拝し、プラサードをいただく。

観光地としてお寺を見るだけだとなかなか気づかないのですが、こうしてしばらく中にいると、お寺という場所が毎日きちんと決まったリズムで動いていることがわかります。

そして、そのリズムの中に礼拝があって、神様のお着替えがあって、僕たちが楽しみにしているプラサードもある。

床にご飯をドバーッと盛られて驚いたところから始まりましたが、こういう食事も含めて全部がお寺の日常の一部なんだな、と思ったのでした。




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