タイのビリヤニ?「カオモック」の謎に迫るの巻



サワディーカップ!エスニック料理大好きなティラキタ買付班です。
旅行先で思いがけず「知っている料理」と再会することがありますね。

今回タイ・チェンマイで出会ったのは、あの「ビリヤニ」。日本でも最近はコンビニやカフェで見かけるほどになったインド料理ですが、タイでは「カオモック」という名で親しまれていました。インドのビリヤニとは少し違うけれど、これはこれでとても美味しい…!そんな出会いを今日はご紹介します。

■そもそも「ビリヤニ」ってどんな料理?
ビリヤニはインド亜大陸発祥の「スパイス炊き込みご飯」で、長粒のバスマティライスを肉や魚、野菜、ヨーグルト、たっぷりのスパイスと一緒に層にして炊き上げる豪華な一品です。

インドでは祝宴料理としても親しまれ、インド高級料理の代表格です。生肉のマリネを半茹でのバスマティライスと炊き込む方式、肉入りカレーとライスを幾層にも重ねて炊く方式、生米をサラサラのスープに注ぎ込んでそのまま炊き上げる方式、などなど日本でも「どれが本物のビリヤニか?」と喧々諤々の議論が巻き起こっていますね。

近年ではコンビニでも販売されるなど、インド料理としては破格の大躍進を遂げた料理です。

■チェンマイのムスリムエリア
今回訪れたのチェンマイの中心部ほど近くの「カオソーイ・イスラム」。歩くと微妙に遠かった(暑かった)のでバイクタクシーを利用しました。
タイでは「Bolt」というアプリがとても便利で、手配したらバイクが2~3分でやってきます。


一応タイでもヘルメット着用が義務付けられたようですが…後部座席に座ったわたしはノーヘルでした。でも風が気持ちよくて爽快♪

こちらが目当てのお店、「カオソーイ・イスラム」。

営業しているのかよくわからないのがいかにもタイらしい、のんびりした空気です。ムスリムエリアにあるので、定刻にはアザーンが近隣に鳴り響き、そして店内では「アッサラーム・アライクム・カァー」という言葉が交わされています(カァーはタイの丁寧語の語尾)。タイ語の響きってとても愛らしいですね。



広々としたキッチンが羨ましい。こんなキッチンで大量の料理をしてみたいものです。

こちらがメニュー。

店名に「カオソーイ」がついているのでおそらくカオソーイ(カレー風味のココナッツミルクヌードル)が有名なのでしょうが、ここは「ビリヤニ」を選択。せっかくなのでインドではまず見られないだろう「ビーフビリヤニ」にしてみました。90バーツですので、大体400円くらいといったところです。

注文するとおばちゃんがせっせと盛り付けてくれて、


上からグレイビーやオニオンフライをかけてくれて完成!
■カオモックとは
「カオモック」には何種類かあるようで、いちばん有名なのは「カオ・モック・ガイ」です。
カオはご飯、モックは隠れる、ガイは鶏肉。ですので、「お米に隠れた鶏肉」という料理なのですね。
実際、さきほどのおばちゃんのライスの鍋にも鶏肉が見え隠れしていました。つまり、ターメリックなどで味付けしたお米で鶏肉を炊き込んだ料理が「カオ・モック・ガイ」というわけです。



デデン!
そしてこちらが、私が頼んだビーフビリヤニ。「カオ・モック・ガイ」から鶏肉を取り除いた黄色いライスに牛肉の煮込みをかけたのが、タイ風のビーフビリヤニ=カオ・モック・ヌアということになるようです。



メインとなるビーフ煮込み。じっくりと煮込まれており、繊維がほぐれながらもゼラチン質がとろりと味わい深いです。

そして、インドのビリヤニと大きく違い、「華やかなスパイスとリッチなグレイビーで仕上げられたカレー」という感じではありません。



魚醤系の旨味がたっぷりと加わったソースを煮汁とし、クローブと八角が香る、東南アジアの香りの体系の料理なのです。動物の肉と魚介を一緒にすることが稀なインド料理の世界とは大きな隔たりを感じさせる味わいです。そして辛さもほとんどゼロといってもいいくらいです。しかしこれがウマい!



お米も、バスマティライスのように長さにこだわった感じはありません。短めのタイ米にほんのりサフランを感じさせるぱらりとした炊き上がりです。

鶏肉の旨味が乗っていて、単体で食べても美味しい仕上がり。

そして付け合せはキュウリと人参の甘酢漬けにスイートチリソース!



「ビリヤニの付け合せといえばライタ(野菜のヨーグルト和え)に決まっている!」と、インド料理に慣れ親しんだ我々にはビックリの、とっても東南アジアのテイストですね!

全体として食べると、ほんのりとクローブやスターアニスが香るものの、味の中心はナンプラー系の旨味。インドから離れ、魚醤の風味がタイ料理らしい個性を加えていました。辛さはかなりマイルドで、スパイスの刺激的な主張はありません。そしてライスには鶏肉の旨味が加わっているので、魚介・牛肉・鶏肉の旨味が一皿に同居しています。これもインド・インド周辺料理では考えにくい状況です。しかし不思議なことに、食べると「おや、確かにビリヤニの味…」と思わされる味なのです。



■ミニコラム:タイの氷は筒状!
ビリヤニに合わせるドリンクといえばやっぱりコーラ。ということで注文してみました。

タイの食堂ではドリンクを頼まなくても氷入りのグラスがテーブルにヒョイと置かれることが多く、お客さんは適当な飲みものを開封してグラスに注ぎ、最後に店員さんがそれをカウントしてお会計という流れになっています。



そして、その氷が筒状なのですね。インドやネパールでは普通のブロック状の氷だったので、東南アジアに初めて訪れたこの独特の形状に私(スタッフT)は大いに驚きました。 調べてみると、これは英語では「Tube Ice」というものだそうです。

筒状の製氷機に水を入れて冷やすと外側から凍っていき、中心部に不純物が集まっていきます。それを凍り切る前に洗い流すことで衛生的で安全な氷が作られるのですね。また、その副次的な効果として、表面積が広くなるためドリンクが効率的に素早く冷えるのです。東南アジアならではの知恵ですね。

なお、この器具を輸入できたら面白いなー!と思ったのですが、大きな製氷マシンで製造しているのを業者が毎日配達するそうで、個人や店舗単位では作らないみたいです…残念。

■これは「ビリヤニ?」なのか?いや、間違いなく美味しい
「これはビリヤニなのか?」と問われると、答えは少し複雑です。インドのビリヤニほど華やかなスパイスはなく、代わりに東南アジア独特の旨味が前面に出ています。特に、ライスの上に肉とソースを注ぐという方式には、「こんなのビリヤニじゃない!」という声も聞こえて来そうです。

しかし、これはこれで間違いなく美味しい。ビーフのグレイビーが特徴的で、チキンではまた違った味わいが楽しめそうです。価格も手頃で、現地の人々にとって日常的な食事であることがうかがえます。



カオモックは、イスラム商人たちがインドからタイ南部に持ち込んだ料理が現地化したものと考えられています。タイ(特に)南部にはイスラム教徒のコミュニティが多く、彼らの食文化として根付いています。インドのビリヤニが現地の食材や調味料と出会い、タイ人の味覚に合わせて変化した結果が、この優しい味わいのカオモックなのかもしれません。

そして現地の人々が日々「これがビリヤニだ」と言って作り、みんなが美味しい美味しいといって食べているのですから、外野からガヤを入れるのは野暮というものですね。



日本ではまだほとんど知られていない「カオモック」。もしタイでムスリム食堂を訪れる機会があれば、ぜひ試してみてください。ビリヤニを知っている方にも、きっと新鮮な驚きがあるはずです。

料理の旅は、単なる味覚の体験を超えて、文化と歴史の交差点を教えてくれる貴重な機会でもあります。カオモックという一皿から、インドと東南アジアを結ぶ豊かな物語が見えてくるのです。
■気に入ったらシェアしよう!

Comments are closed.

インド雑貨・アジアン雑貨・民族楽器- ティラキタのブログです。僕たちが大好きな面白インド&アジアを楽しく紹介しています

BLOG内から検索

今日の新入荷商品

今日のセールをピックアップ


今日人気の記事

人気の記事-全期間