服の中に火を入れる? 寒い国カシミールの伝統的な暖房装置
■服の中に火を入れる? 寒い国カシミールの伝統的な暖房装置
ティラキタ買い付け班、まだ冬が明けきらない3月くらいにカシミールを訪問しました。カシミールでは、取引先のザヒッドさん宅にお世話になったのですが、そこで出してくれたのがこちら不思議な鉢でした。ザヒッド、これは何?
それを服の中に入れると温かいんだぞ
え?? 服の中に?
そうだ。それはカングリと言うんだけど、真ん中の素焼きの鉢の中には炭火が入っているんだ。その炭がある間は温かいんだよ
中を見ると、灰の中でほのかに火が眠っています。灰なのか、炭火なのか。よく判らない位の加減でぼんやりと燃えています。
炭がすぐに消えちゃいそうなんだけど?
そうだな…5時間から8時間位は持つかな。じわじわと燃えるから、朝つけると夕方まで持つよ。カングリを使うには、このウールの服もあった方がいい
という事で、ウールの重いジャケットを着させられ、カングリを服の中に入れて座ってみました。
おお、なるほどです。服の中に入れたカングリからほのかな暖かさがじんわりとやってきます。
火がついているにも関わらず、過激に熱い感じはありません。ほどよく、じんわりと暖かさがやってきます。
世の中には色々な暖房がありますが、服の中に火がついた火鉢を入れてしまうなんて! これはカシミール地方の生活の知恵なのですね。そして、そうしなければ過ごせないくらい寒いのでしょうねえ…
こちらはザヒッドさんと息子さんと一緒に食事をしているところですが、厚めの絨毯が敷かれていたり、もこもこの服を着たりしていて、寒い地域なのが伝わってきます。
こちらの写真は冬が明けたので、カングリを清掃して干しているところです。工房、全員分のカングリを干しているんだそうですよ。
このカングリ。日本では使い道がないような気もしましたが、珍しいものだなぁ…と思って10個ほど輸入してみました。
■ティーポットの中にも炭火
カングリだけでなく、カシミールでは、ティーポットの中にも炭火を入れて、寒い冬を暖かく過ごす工夫をしていました。こちらの素敵な銀色のティーポットがあります。これは素敵な装飾のティーポットなのですが、なんと真ん中に炭を入れられる場所があって、保温ができるようになっています。
炭に火がついている間はずっと温かいのだそうですよ。ポットの足のところから、上に向かって空気が流れる様になっていて、中を見ると、炭が当たっている内側のチューブ状の部分がくつくつと煮立っていました。
現代であれば、なんでも電気ですけれども、カングリは電気のない時代の、エコな生活の知恵な訳です。電気がない中で、木もそんなに生えていない中で、なんとかして暖を取ろうという知恵が生活の中に息づいていました。
カシミールでは、カルダモンなどが入った、カシミールティーを飲むのですが、これが、インドのチャイとはまた違って、甘くて美味しいのですが、その上にカシミール特産のサフランを2-3本乗せるとさらに芳醇な香りになります。黄色い色でとっても美味しいんですよ。
あ、こちらは先日ティラキタに同じ形で銅色のものがやってきましたので、近日中にお披露目予定です。
■インドは暑い国なのか
ティラキタの店長がまだ学生だった頃の話です。パソコン少年だったティラキタ店長、秋葉原でバイトしていました。
まだオウム真理教のパソコンショップ マハポーシャがあったり、今では一大チェーンになっているコミック虎の穴の1号店が開店したり。Windows95の発売で徹夜で並ぶ人たちがいたり。小さなパーツ屋さんや、中古パソコンショップができては消えていったり。
小さなパソコンに夢と希望が詰まっていたそんな時代だったと思います。今のようにネットで簡単に情報が手に入るわけではなかったので、実際に秋葉原に行って足で情報を集めるのがとても大切な気がしていました。
秋葉原に行くと同時に、バイトしたお金を持って、インドやネパールへと旅立っていたのですが、バイト先の社長が「インドっていうのはホット・ホッター・ホッテストの国なんだろ?」と、何回も聞いてきたことを年月が経過した今も思い出します。
きっと、年齢が離れたバイトに対して、特に話題がなかったんでしょうね。
でも、何となく、会話して雰囲気をよく保っておきたかったんでしょうね。
今になってみればよく分かるのですが、その当時の自分にとっては、「なんで、オッサンはいつも同じことを聞いてくるのかな…」としか思わなかったのですが。
バイト先の社長が壊れたステレオの様に話しかけてくれた様に、確かにインドは暑い国で間違いありません。90%位のインドは暑い国でいいのかと思います。正直、とにかく暑いです。暑いのが嫌だから、買い付けはできるだけ10月から2月の間に行くようにしています。
でも、インドには寒いところもあるんです。簡単にわかるように地図に色付けをしてみたのですが、青い部分が涼しい。もしくは寒いところ。赤いのが暑いところです。
インド北部に位置するヒマラヤの標高は2000-5000m位になりますので、インドにはインドには雪も降るし、スキー場まであるんです。ゴンドラまであったりします。グルマルグと言うスキー場では標高2600mから3950mまでゴンドラで上がれるのだそう。3950mって言ったら富士山よりも上じゃないですか!!
インドって何でもあるんだなって思ったり。
大きい国だなって思ったり。
現代文明の横で、伝統もまだまだ残っているんだなって思ったり。
いろいろあって、ごちゃまぜだからこそ面白いインド。
これからも、素敵で面白いインドを紹介し続ける旅を続けていこうと思っています。