写真がマナー違反の国日本と 全員写真に写りたがる謎の国インドについて

■インドでは、みんな写真に写りたがる
この記事は、つい先日、友人との話から始まりました。

最近、Xでみたんだけどね。海外で撮った写真であっても、そこに人が写っていたら、ボカさないといけないと言う意見があるんだよ

え!! 海外でもボカすの? そんなに世知辛くなったの?

Xでも、インスタでもそうなんだけど。
ちゃんとしている人の写真は顔にぼかしがかかっている場合があるんだよ。
昔はそんな事してなかったよね
やっぱり時代が変わったのかな

いや…その感覚、非常に日本人的な感じするなぁ。で、多分この話をしても、インドの方には分からないだろうなぁ…

そうよね。インドはみんなどんどん撮れっていうもんね

確かに…。インドの人たち、写真大好きだよなぁ

という事で、全員が写真に映りたがる謎の国インドについての話です。



■日本では完全にマナー違反
日本で、知らない人にいきなりカメラを向けたら、かなり警戒されますし、完全にマナー違反ですよね。

何を撮っているんですか

私の写真、勝手に撮らないでください

その写真、どこかに載せるつもりですか


ましてや、撮影した写真をインターネットに掲載するとなれば、なおさら。本人の許可を取らずにSNSへ投稿し、後から発見されれば、場合によっては大炎上しますよね。

でも、不思議なことに、インドでは、この感覚がまるでないのです。私たちにとっても、インド人にとっても、インドは写真撮り放題の国なんです!!



■写真を撮ろうとすると、人が集まってくる
ティラキタでは、商品の買い付けや現地取材のため、これまで何度もインドを訪れてきました。

市場や工房、村の道端でカメラを構えていると、まず誰かがこちらを見ます。不思議なことに、インドでは写真を撮ると、遠くの誰かが必ずカメラを向いていたりします。



そして気がつくと、こちらが頼んでもいないのに、何人もの人がカメラの前に並んでいます。

俺も撮ってくれ

「次はこっちだ」


さっきまで店の奥で作業をしていた人も出てきます。近所の子どもたちも集まってきます。

この子も一緒に

もう一枚!




流石にカメラに慣れている都市部では、そう言う事はないですが、外国人が珍しい辺境に行くと、まだまだそんな感じです。

これはグジャラート州のブージでの一枚ですが、道端で撮影していたら、向こうからやってきたオートリクシャが突然停まって、写真を撮れと言われました。



ブラザー、写真撮ってくれよ!!!

こんな事、インドでしか起こらないぜ!!
インド面白すぎる!!

そうだろ! インド万歳!


長年インドで写真を撮っていますが、「写真は嫌だ」と言われた記憶は、ほとんどありません。むしろ、撮らなかった人から「なぜ自分は撮らないのか」という顔をされることすらあるんですよ。

■インドでは写真は「取られる」ではなく「参加するもの」なのか
もちろん、インドにもさまざまな人がいますので…地域や宗教、年齢、立場によって感覚は異なるとは思います。すべてのインド人が写真好きだとは言えませんけどね。

でも、基本、ほぼ警戒されないよなぁ…


日本では、写真を撮られることを「自分のプライバシーを持っていかれるコト」のように感じる場合がありますよね。

でもインドでは、写真はその場に参加することなんじゃないか??
そもそもの感覚が日本と違うんじゃないか?
とも思います。

日本とインドの違いは、写真に対する考え方だけではありません。インドでは、人と人との距離そのものが近いのです。

列に並んでいても距離が近いですし。電車やバスでは、知らない人同士が肩を寄せ合っていますし。初対面でも、出身地や仕事、家族、結婚について尋ねられます。



こちらが日本人だと分かれば、

結婚しているのか

子どもは何人いるのか

日本ではいくら稼いでいるのか

インドをどう思うか

と、かなり直接的な質問が飛んできます。日本であれば、知り合って間もない人には聞かない内容ですが、しかしインドでは、それが普通です。

写真も、その延長線上にあるのかなぁ…




■日本では「迷惑をかけない」が先に立つと思う
日本では、他人との間に一定の距離を保つことが礼儀とされています。勝手に話しかけない。じろじろ見ない。相手の事情に踏み込まない。写真を撮らない。人が写ってしまったら、顔をぼかす。

こうした配慮によって、日本の社会は静かで秩序正しく保たれています。一方で、配慮を重ねるあまり、人と人との間に見えない壁ができることもあります。

声をかけたいけれど、迷惑かもしれない

手伝いたいけれど、余計なお世話かもしれない


そんな事を誰しも、日常思いながら暮らしているのではないでしょうか。



■ カメラの前に立つ、堂々とした人々
そして、インドで撮影した写真を見返すと、写っている人たちの表情に驚かされます。

みんないい顔してるわ!!!


市場で商品を売っている人。工房で金属を叩いている職人。道端でチャイを飲む男性。家の前に座る女性。裸足で走ってきた子どもたち。


みんなカメラの前で堂々としています!!!!


■写真から見えてくる、二つの社会
日本の感覚からすれば、インドの人々は他人との距離が近すぎです。人との距離は精神的にも物理的にもめちゃくちゃ近いです。

反対に、インドの人から見れば、日本人はなぜそこまで人を避け、顔を隠し、知らない人との関わりを恐れるのか、不思議に感じるのかな…と思うんですよね。

どちらが正しいという話ではありません。

日本には、個人の領域を尊重する文化があり。
インドには、人間同士が互いの生活へ入り込んでいく文化があります。

写真一枚を撮るだけでも、その違いが見えてきます。

日本では、カメラを向ける前に「撮っても大丈夫ですか」と確認します。
インドでは、カメラを出した時点で、撮られたい人が寄って来ます。

そして撮影が終わると、カメラの画面をのぞき込みます。

自分を見つけて笑う人がいて。
友達の顔を指さして笑う人がいて。
もう一度撮れと言う人がいる。

それを見ていると、インドって人間臭くっていいなぁ…って思うんですよね。



■地球の歩き方に書いてあったその詩
『地球の歩き方 インド』の巻頭を飾る有名な一文があります。

「木に触れないで森を抜けることができないように、人に出会わずにインドを旅することはできない」

インドに関わって30年。
全くその通りだよなぁ…とその詩を掲載してこの話を終わりにしたいと思います。

  インドにはこういう喩えがある。
  ― 深い森を歩く人がいるとしよう。
  その人が、木々のざわめきを、小鳥の語らいを心楽しく聞き、
  周りの自然に溶けこんだように自由に歩き回れば、
  そこで幸福な一日を過ごすだろう。
  だがその人が、たとえば毒蛇に出会うことばかりを恐れ、
  歩きながらも不安と憎しみの気持をまわりにふりまけば、
  それが蛇を刺激して呼び寄せる結果になり、
  まさに恐れていたように毒蛇に噛まれることになる ―
Credit:地球の歩き方
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