買い付けから、まさかの一年! スリランカから届いた、忘れられない貨物のお話



スリランカから、ようやく貨物が届きました

「ようやく」と、さらっと書いてしまいましたが。

現地へ買い付けに行ったのは、2025年9月。
ティラキタに荷物が届いたのは、2026年9月29日です。

気がつけば、ほぼ丸一年ですね

いやーー。今回は長かったね!!! 今回の荷物、あまりにも色々ありすぎたから、ちょっと顛末記を書いてみようか

そうしましょう。
しかし、輸入のお仕事って本当にスムーズに行かないですよねぇ…


オーダーした貨物は、ずっと船に乗っていたわけではありません。土から器を作り、災害から仕事場を立て直し、ようやく荷物になったと思ったら、今度は税関で足止め。そして日本に着いてからも、もうひと山……。

ティラキタでは日々、いろいろな国から貨物を受け取っています。

それでも今回は、箱を前にして「本当に、みんな大変だったなぁ」としみじみしてしまう、忘れられない輸入になりました。
工房で出会った、色も形もさまざまなテラコッタの器。ここから長い道のりが始まりました。(2025年9月撮影)
工房で出会った、色も形もさまざまなテラコッタの器。ここから長い道のりが始まりました。(2025年9月撮影)
■始まりは、ヤシの木が並ぶ道でした
話を、一年前に戻します。

2025年9月、ティラキタ買付班はスリランカへ。現地で買い付けや輸出を支えてくれているサナタさん、デモトさん、ダヌーさんたちと、各地を巡りました。

ようこそスリランカへ!!

スリランカの素敵な工房を、色々と案内しますよ!

車窓の向こうには、背の高いヤシの木。家々の間も、その先も、とにかく緑がいっぱいです。道を走っているだけで「ああ、スリランカに来たなぁ」と感じます。

なんか、スリランカ、ホッとしますねぇ

ヤシの木が立ち並ぶ、工房へ向かう道中の景色。
ヤシの木が立ち並ぶ、工房へ向かう道中の景色。
その旅で訪れたのが、自然に囲まれたテラコッタの工房でした。

ティラキタでは、できるだけ、商品を作っている場所へ実際に足を運ぶようにしています。どんな材料を使い、どんな人が、どんなふうに作っているのか。完成した商品だけを見ていては分からないことが、工房にはたくさんあるからです。

左からデモトさん、ダヌーさん、サナタさん。現地での買い付けから日本へ送り出すまで、ティラキタを支えてくれる頼もしいパートナーです。
左からデモトさん、ダヌーさん、サナタさん。現地での買い付けから日本へ送り出すまで、ティラキタを支えてくれる頼もしいパートナーです。
■これなら、お客さまにお届けしたい
赤茶色の素朴な器、テラコッタですが、似たように見えても、作り方や仕上がりには違いがあります。



ねえ、ここの工房の製品、凄く品質がいいよ。肌触りが街で見かけるやつと全然違う

工房では、赤いサリーを着た所長さんが、とても熱心に案内してくれました。丁寧な説明を聞きながら、器ができるまでの仕事を見せてもらいます。

訪れた工房では、まず土を丁寧に精製するところから仕事が始まっていました。原料を水と混ぜて細かくし、ふるいで粗い粒や異物を取り除く。水を多く含む「泥漿(でいしょう)」をフィルタープレスで圧搾して脱水し、さらに土練機でむらなく練り合わせます。


陶器を作るには、きちんとした精製が大切なんです

フィルタープレスで脱水した粘土を取り出すところ。ろくろに乗る前から、丁寧な土づくりが続いています。
フィルタープレスで脱水した粘土を取り出すところ。ろくろに乗る前から、丁寧な土づくりが続いています。
品質の良い土があっても、きちんと精製してこそ、品質の良い器にできるという事を教えていただきました。土の粒や水分、硬さを整えることが、その後の成形や乾燥、焼き上がりを支えているとのこと。完成品の品質の良さには、地味な手間がかかっていたんですね。

一つずつ、手で形を作る。作り手に会うと、器の見え方も変わります。
一つずつ、手で形を作る。作り手に会うと、器の見え方も変わります。
精製した土は肩に担がれてろくろの場所まで持っていかれ、ろくろの上で、土の塊が少しずつ器になっていきます。棚には、次の工程を待つものが並んでいて、焼き上がった器には、赤茶色の濃淡や、手で仕上げた表情がありました。

工程を見せてもらい、工房の皆さんとも話して、買い付けたい気持ちが固まりました。

この作りなら、ティラキタのお客さまにも、きちんと紹介できる

そうですね。伝統工芸の良さが残っていつつ、日本にも受け入れられるクオリティですね

帰国後は、サイズや種類、数量を相談して注文を詰めていきました。ところが、その途中で、現地から心配な知らせが届いたのです。
■工房が完全に水没した!!!
2025年11月下旬、サイクロン「ディトワ(Ditwah)」による大雨がスリランカを襲いました。各地で洪水や土砂崩れが起き、国連も「過去20年で最悪級の洪水災害の一つ」と伝える規模の災害でした。(国連スリランカ事務所・2025年11月30日)
スリランカ付近を覆う、サイクロン「ディトワ」の大きな雲。2025年11月29日、NASAの衛星Aquaが撮影。
スリランカ付近を覆う、サイクロン「ディトワ」の大きな雲。2025年11月29日、NASAの衛星Aquaが撮影。
画像:NASA
12月8日、サナタさんから届いた連絡には、こんなことが書かれていました。

土の器を作っている地域の多くが浸水し、道路も被害を受けました。私たちが訪ねた工房も大きな被害を受けています。まずは清掃と修理をしなければなりません

茶色い洪水が道路を覆い、沿道の建物の周囲まで広がっています。ディトワの洪水を扱った研究論文に掲載された、カドゥウェラ付近の浸水の様子。訪問した工房とは別の場所の写真です。
茶色い洪水が道路を覆い、沿道の建物の周囲まで広がっています。ディトワの洪水を扱った研究論文に掲載された、カドゥウェラ付近の浸水の様子。訪問した工房とは別の場所の写真です。
写真原出典:スリランカ道路開発庁(Road Development Authority)
工房の方たちは無事だったと分かり、ひとまず安心しました。でも、仕事を再開するまでの道のりは長いものでした。

後に教えてもらった浸水の高さは、僕たちが立っていた地面から3フィート。約90cmです。

あの床から、そんな高さまで水が来たのか

土を加工する機械が置かれていて、ろくろが廻っていたあの場所が水没か…

被災前に見学した工房の設備。写真は2025年9月のもので、浸水時や復旧後の様子ではありません。
被災前に見学した工房の設備。写真は2025年9月のもので、浸水時や復旧後の様子ではありません。
資料館の展示では、スリランカの器づくりと、川が運んできた粘土との深い関わりも紹介されていました。スリランカでは伝統的に後期工房は良い材料が手に入る川の近くに位置しています。

川の近くですからね。水害がやって来るんです。

年が明けた1月下旬にも、粘土の採掘場所には水や泥、砂、がれきが残り、片付けに時間がかかっているとの連絡がありました。工房の清掃や修理に加え、材料を用意するところから、立て直さなければなりません。

そんな状況のさなか、日本の地震のニュースを見たサナタさんから、こちらを心配するメッセージまで届きました。

日本の地震、大丈夫ですか?

スリランカも大変なのに、気遣ってくれてるよ。会い難いねぇ…

■土は急いで乾いてくれない
復旧を待ち、見積もりや注文内容を調整し、2026年3月には注文を確定。4月には、製作が進んでいるという知らせが届くようになりました。

出来上がったものから、ひとまとまりずつ品質を確認しています

いよいよ、あの工房の器が日本へやってきますよ!!

5月には、多くの商品がそろい、船の予約も進みました。ところが、ここでもう一度、雨に足を止められます。器が、十分に乾かないのです。
工房に並ぶ、形を作り終えた器たち。一つずつ、次の工程を待っています。(2025年9月撮影)
工房に並ぶ、形を作り終えた器たち。一つずつ、次の工程を待っています。(2025年9月撮影)

今は洪水ではありませんが、天日で乾かすための日差しが足りません

5月のやり取りには、工程を急いだ一組が傷んでしまい、作り直しているという話も残っています。

形ができれば、そのまま箱に入れられるわけではなく。乾燥を待ち、焼き、出来上がりを確かめて、その時間まで含めて、一つの器なんだなぁ…と遠くの国とやり取りしてて思います。

船の予約は変更することになりました。
サナタさんたちは、製作の確認と並行して、船会社とも日程を調整してくれました。

■丈夫に包む。でも、日本で降ろせるようにね♪
器ができたら、次は梱包です。壊れやすいテラコッタを、海の向こうまで運ばなければなりません。

この相談も、実は何か月も前から始まっていました。

しっかりした木箱はどうでしょう?

木箱ですが、ティラキタ側で一箱ずつ解体しなければならないとなると、荷下ろしが難しくなります


相談の末、丈夫な段ボールに緩衝材を使い、パレットにまとめる方法へ。積み込むときの安全と、日本で一箱ずつ降ろすときの作業、その両方を考えてもらいました。



6月、ようやくコンテナへの積み込みが完了。
今度こそ、あとは船に乗るだけ。

……と思ったところで、また連絡が入りました。

■最後の関門は、楽器についていた貝殻でした

また問題が発生しました

え~~~。また~~~。今度は何の問題?

貝殻が付いている素敵な楽器を仕入れたじゃないですか

あいつ? ということは、ワシントン条約問題?

それです。ワシントン条約は気をつけているから問題ないですよね。でも、現地の税関職員が良い口実だといちゃもんを付け…


きっかけは、一緒に積んでいた楽器に使われている貝殻でした。現地からの説明では、動物由来の素材として確認が必要になり、ほかの荷物についても詳しく調べることになったとのこと。

コンテナの中身は器だけではなく、いろいろな商品が入っています。一緒に積んだ商品の確認のため、コンテナ全体が止まる事になりました。日程がようやく決まったところで、これはなかなかこたえます。

せっかく丁寧に梱包してくれたのに、検査でパレットを崩したり、何度も荷物を動かしたりして、器が割れないかな

その可能性は大いに有り得るよなぁ…


大雨で検査が延期になる日もあり、6月23日に開封検査が行われました。しかし、検査が終わっても、その日のうちに出港できるわけではありません。



7月に入っても、まだ税関。現地パートナーの説明では、担当者の定期的な異動も重なり、手続きがさらに長引いているとのことでした。

輸出の仕事を26年やっていますが、こんな状況は初めてです。もう丸一か月が過ぎました

僕らとしてもこんなトラブル続きは初めてだね

日本で到着を待つ僕たちも気をもみますが、現地で何度も問い合わせ、説明し、手続きを進めるスリランカ側の負担は、それ以上だったでしょう。

そして8月5日、ついに「コンテナがリリースされた」との知らせが届きました。

これで船に載せられますよ!!!

わーーい!!

留め置きの連絡から、約一か月半。必要な輸出手続きを改めて進め、8月12日にコロンボを出港しました。
今度こそ、本当に海の上です。

■日本に着いても、まだ到着しない
コンテナ船が海上をゆっくりと進んでやってきます。
コンテナ船が海上をゆっくりと進んでやってきます。

船はマレーシアのポートクランを経由して、日本へ。最初に聞いていた横浜の到着予定は9月7日でしたが、その予定も後ろへずれました。

9月11日には、現地から「船は横浜に着きました。通関はどうですか?」という連絡がありました。ところが日本側では、その後も貨物の到着案内、Arrival Noticeが届かず、手続きを進められない状況に。

今度は書類が全然届きませんよ

いやぁ、この荷物、めちゃくちゃトラブル続きだねぇ…

呪われているかもしれません…

船は来たんですが、書類が来ないと、書類が来るまでどんどん追加料金がかかります。お金だけが溶けて行く状況になりました。

メールを確かめ、再送をお願いし、現地からも船会社へ問い合わせてもらい。9月17日に、ようやく到着案内を受領。そこから日本側の検査や通関を進め、9月25日には食器の検査を通過したことも確認できました。

港に着くことと、お店で受け取れることは、別の話なのです。

■ついに届いた! そして、やっぱり雨!!!
2026年9月29日。ようやく、貨物がティラキタに到着しました。
そして、よりによって、その日は雨。

本当は晴れた日に受け取りたいんだけどなぁ。荷物が濡れちゃうもんな

コンテナの受け取りは、天気予報を見て「明日の晴れた日にお願いします」と、気軽に決められるものではありません。港からコンテナを運ぶトラック、いわゆるドレージ輸送を、前もって予約しておく必要があります。

今、どの業界でも人手不足らしく、ドレージも不足していて、予約を逃すと、次は20日後とかになります。そしてその間の蔵置料はかかり続け、お金は溶け続けます。

雨の中の作業なので、テントを立て、できるだけ荷物を濡らさないように動き、濡れた段ボールは拭いていく。晴れた日にはいらない仕事が増えますが、ここまで運ばれてきた器たちです。最後まで、気を抜けません。

無事に受け取れたことを、スリランカの皆さんへ報告しました。

ついに今日、貨物が届きました! ここまでずっと支えてくれて、ありがとうございます。みんなにとって長い道のりでしたね。しかも今日は、雨の中での納品でした……




すると、サナタさんから、こんな返事が。

こちらでコンテナに積み込んだ日も、大雨だったんですよ

出発するときも、到着するときも、雨。そこまで一緒だったとは……。

思わず笑ってしまいましたが、遠く離れた両側で、同じように荷物を守ろうと動いていたんだなぁと思うと、なんだか胸が温かくなりました。

■箱の向こうに、たくさんの人がいました
壊れやすいテラコッタが、長い道のりを経て、1年の時間を経て、ティラキタまで届きました!!!

そこには、現地の皆さんが時間をかけて考え、丁寧に包んでくれた仕事がありました。
買い付けで訪れた工房の皆さんと。左から3人目の赤いサリーの女性が、熱心に案内してくださった所長さんです。(2025年9月撮影)
買い付けで訪れた工房の皆さんと。左から3人目の赤いサリーの女性が、熱心に案内してくださった所長さんです。(2025年9月撮影)
土を整え、一つずつ器を作る人。災害のあと、仕事場を立て直した人。検品して、包んで、運ぶ人。通関や書類のために、何度も確認してくれる人。そして日本で受け取り、お客さまへ送り出すスタッフ。

アジア雑貨屋の商品棚は、そういうたくさんの人の仕事につながっています。ティラキタでは恥ずかしいのでフェアトレードとかいいませんけど、日本のみんなが買ってくれることが、実際に現地の人々の雇用に繋がっています。

今回の貨物は、買い付けからほぼ一年かかりました。次は、もう少しすんなり届いてほしい。これはもう、心の底からそう思います。

全ての荷物がこれだったら本当に大変ですね…

どの荷物も、それぞれの大変さがあるけど。今回は特別すぎたな

それでも、あの工房で見た手仕事を、お客さまにご紹介できるところまで、みんなでたどり着けた。そのことが、とてもうれしいのです。
スリランカで出会った、食卓の中のテラコッタ。器と一緒に、こんな風景もお届けできたらと思います。
スリランカで出会った、食卓の中のテラコッタ。器と一緒に、こんな風景もお届けできたらと思います。

スリランカの皆さん、本当にありがとうございました

長い旅をしてきた器たちを、ティラキタから、今度はお客さまのもとへお届けしますね!!!

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