遥かデカン高原に 蒼い鉱物カバンサイトを探して

■蒼い鉱物を探してデカン高原にやってきた
面白大陸インドを放浪し、まだ見たことがない宝物を探し続けるティラキタ買付班。今回の話はカバンサイトと言う宝石を探した話をお伝えします。カバンサイトとは、美しいブルーの色をした宝石で、鉱物マニアに人気があるのですが、世界でもインドの一部でしか算出しないレアな宝石なのだとか。
こちらがカバンサイトです。

買付班、カバンサイトを求めてデカン高原の街プネーにやってきました。プネーはインド西部のマハラシュトラ州にある都市で、海抜600mの高地にある涼しい街です。
プネーは環境が良くて、インドで最も安全な街なんだそうだよ。
研究機関などが多いんだって
地図では、こちらの位置になります。

今回の私たちのお目当ては、この土地で産出されるという宝石たちです。このエリアにはカバンサイトだけでなく、スティルバイト、スコレサイト、アポフィライトなどの亜種もあるのだそう。
宝石って言うと、山の中の鉱山に行ってツルハシでガンガン掘ると言うイメージがありますが…プネーの街は、いわゆるインドの近代都市でした。
緑の奥に高層ビルが見えます。プネーはインドで一番、緑の多い都市なんだそうです。

とは言うものの、街の中はいつものインドです。オートリクシャが走り、道はボコボコしています。

可愛くピンクに塗られた牛ちゃんもいました。おっちゃんのお顔も素敵ですが、牛ちゃんも大好きです。この2人の組み合わせかわいいな♪

プネーに来たけどさ。
こんな都市に、宝石がある訳ないよな
そうですよねぇ。ここは街ですもんね。きっと今日、車に乗って山の中まで連れて行かれるんですよ
初めてのクリスタル鉱山訪問。10年宝石を扱っていて初めてですよ。ワクワクします
■プネーとデカン高原
今回、プネーを案内してくれたのは、祖父の代からプネー近郊で宝石ハンターをしているサミさんです。
ナマステ! よく来たね。 東京ぶりだね。
本当にここまで来るとは思わなかったよ
世界中どこにでも行って、知らないモノを探すのが仕事ですからね。やってきましたよ~
で、今回はインドで取れる宝石、特にプネー近郊で取れる宝石について聞きに来たんでしょ?
そもそも、プネーって宝石のイメージがないんですが
インドで宝石って言うとジャイプルですよね?
いい質問だ。それでは、まず、プネーの大地のことから話そうか。
実はプネーは、地質学的に特別な場所なんだよ
という事で、サミさんが地質学の話を始めました。
宝石や鉱物とは地質学であり、その土地の特性が非常に重要だというのです。
インドはユーラシアプレートに、インド亜大陸が衝突してできたのは知ってるね?
衝突の結果ができたのがヒマラヤだけど、6700万年ほど前のプネー周辺は、活発な火山だったんだよ。
今でこそ平らな大地だけど、かつてここは激しい活火山だったんだ
下の写真の右側の壁に穴が空いているだろう? これは溶岩が冷えて固まる時にできたガス溜まりだ。プネーの鉱物はこう言う場所から出てくるんだ

え? 鉱物は鉱山からでてくるものだと思っていましたが
違うんだ。プネー近郊では、鉱物は街の中から出てくるんだ。
例えば、この鉱物。スコレサイトと言うんだが、これはヒルトンホテルを工事している時に出てきたものなんだよ
現在のプネー ヒルトンホテルの地下3Fあたりの地層から出てきたんだよ

え~~~~!! 街の工事現場から、出てくるんですか!!
そう。でも、とても繊細なものだから、知識がないとショベルカーであっという間に壊されてしまう。
そう言うものを保護しつつ、丁寧に収集するんだよ
宝石、鉱物と言っても色々なんだなぁ…。改めて面白すぎる!!!
プネー周辺(マハラシュトラ州、西インド、デカン地方)は、ゼオライト類や関連鉱物の産地・生成環境があると知られており、特定の美麗な鉱物がよく採れるのだそう。
プネーを含む地域は「デカン・トラップ(Deccan Traps)」と呼ばれる大規模な玄武岩流(洪水玄武岩)地帯に属しています。玄武岩流の中には多くの溶岩の空隙(ガス孔や割れ目など)があり、そこにマグマ水や熱水が通ることで鉱物の析出が起こります。
これらの空隙に、後からシリカ、水、イオン性溶液などが入り込み、長い時間をかけてゼオライトなどの関連鉱物が成長するのだそうです。
■鉱山に蒼い鉱物を探しに行く
さて、そしたら鉱物を探しに行こうか。今日はカバンサイトを探しに行くよ
カバンサイト? カバン? 鞄? それは何ですか?
カバンサイトは鮮やかな青色がとても素敵な希少鉱物なんだよ。この辺の特産で、世界でもとても珍しいんだ。
この白い石に蒼い鉱物がついているでしょ? これがカバンサイトだよ

という事で、ジープに乗り込み出発です!
鉱山に行く時は、やっぱりジープなんですね。
ワクワクします!

街中のインドらしい風景を通り過ぎ

牛の群れに行く手を阻まれながら進みます

そして2時間ほど走り、連れて行かれた場所は…。
なんだここは? まるで映画のアバターの世界だぞ??
ここはプネーに砂利などを供給している採石場です。ここからカバンサイトが見つかります。でも、根気よく探さないとないですよ

連れてこられた場所はまるでこの世とは思えない場所。
広大な大地にポコンと穴が開いて、湖になっています。

完全なオフロードなので、ジープじゃないと入ることができず、道の横には砕石がゴロゴロと転がっています。

全く現実感のない風景ですが、同時に壮大な美しさも感じる場所です。

この辺で見つかると思うよ
え??ここですか???
ただの赤い石だらけですけど
しかし凄い所に来ましたね。観光旅行では決して来れない所ですねぇ…
確かに。そして本当にティラキタの仕事って面白いよなぁ
3人でばらばらになり、手分けをして探します。時期はちょうど雨季で、空には厚い雲が立ち込め、雨がポツポツを降ってきていました。
下を向いて、赤い岩を一個づつ探していきます。よくよく見てみると、確かに岩の中に白い結晶が見えます。

小さな岩の隙間(ポケット)の中に結晶ができているのがわかりますか?
こちらがこの地域の岩の組成の一部分である「ゼオライト(沸石)」と呼ばれるもので、これから探すカバンサイトは、このゼオライトの近くで一緒に発見される青い鉱物なのです。
ゼオライトが綺麗に結晶化している大きな石がありました。ちょっと歩いてこれだけ見つかるのですから、真剣に探したら大きく素敵な結晶が見つかるにちがいありません。

でも今回、僕らが探しに来たのはこいつではなく、青いやつ!!
青いやつ!!
青いやつ!!
青いやつ!!
大きな結晶があるのかなと思うものの、そもそも青い色の片鱗すら見つかりません。
延々と探すこと30分、やっとこさ、ちょっとありました!!
岩の中に青い結晶があるのがわかりますでしょうか?
こちらがインドの大地の躍動感を示す青い結晶、カバンサイトです!

やった~~!!
あった~~!!!
でも小さいなぁ……。
一緒に行った仲間が「あったよ~!」と言って持ってきてくれました。
これですこれ!!
美しいブルーのこれ!!
でも小さいなぁ……。

その後もさらに色々探したんですけれども、なかなかいいものは見つからず、結局あんまり収穫なく帰ることに。。。
鉱物探しは甘くなかった…
今回見つかったプネーの鉱物はこちら。
メノウ(瑪瑙)の原石が10個ぐらいと。

ゼオライトの結晶がいくつか。

メノウは結構転がってたなぁ。小さいけど。
あと、カバンサイトがついている本当に小さな石。

宝石って、なかなか見つからないものだな~。
だから宝石なんだな……。
と言うわけで、今回は自分ではあまり大きなものを見つけられなかったので、現地コレクターの方から、この地方で発見されたカバンサイト、ゼオライト、メソライトをいくつか譲って頂きまして、持って帰ってきました。
インドの大地の証。何千万年も前からインドが生きた大陸であった証。
インドがその昔は活発な火山の大地であった証。
それを持ち帰ってきました!
■プネー近辺で産出が確認されているゼオライト・関連鉱物たち
- カバンサイト (Cavansite)
今回の主役!ゼオライトと一緒に見つかることが多い美しい青色鉱物。プネー地域の石切場で産出し、世界中のコレクターから非常に人気があります。 - スコレサイト (Scolecite)
放射状の細い針状結晶になり、“poonahlite” という名前で呼ばれたこともあるそうです。 - グリーン・アポフィライト (Apophyllite)
美しい透明~緑色の結晶(グリーンアポフィライトなど)。ゼオライト結晶を伴って発見されることが多い鉱物です。 - レッド・アポフィライト (Apophyllite)
美しい透明~緑色の結晶(グリーンアポフィライトなど)。ゼオライト結晶を伴って発見されることが多い鉱物です。




ちなみに、買ってきた標本などを飾る時にお手軽なのが、鉱物固定用の練り消し「ミネラルタック(mineral tack)」。
Amazonなどでも売っていますが、ドイツ製のものが品質が良いそうですよ~。
インドという巨大な地殻変動が生み出した大地の神秘。
皆さまも、カバンサイトを通じてそんなインドのロマンを感じてみてくださいね!






































