バリ・ガムランの工房に行ってきました!!

店長のインドパパが昔シタール弾きだったこともあって、ティラキタは民族楽器や民族音楽をとても愛しています。民族楽器はその国の人達が長年かかって創りだした素晴らしい音楽で、その出音が土臭くても、洗練されていても同じように心を打たれます。ティラキタを開店して10年が経ち、ほとんどのインド楽器を取り扱いできるようになりましたので、次は本物のガムランを探しに行こうよ!と言う事でインドネシアはバリ島に飛び立ちました。

ガムランとは、ガムル=叩くと言う意味が語源で、元々はインドネシア、ジャワ島中部の伝統芸能であるカラウィタンで使われるsaronやgongなどの伝統楽器のことだったそう。ガムランはバリの物が有名ですが、スマトラやジャワなど、別の地域でも作られて演奏されています。同じ打楽器ですので、構造や装飾などは似ているのですが、バリのガムランが華やかでキラキラした音色なのに対し、他の地域のガムランはもっと優しく、丸い音色です。

さて、意気揚々とバリ島に到着した買い付け班。どこを探してもガムラン屋さんがない事に気が付きます。街を歩けばガムランのCDは売っていますし、観光客用のおもちゃガムランも見かけます。でも、僕達が欲しい、完全に本物のガムランがどうしても見つかりません。何日も何日も探しましたが、ガムラン屋さんが見つかりません。

色々探した結果、ガムラン屋さんは観光客が集まるクタには一軒もなく、バリ中部に固まっているのだとか。その情報を入手した次の日に、車で向かってみました。買い付け班、朝9時にクタを出発し、車で1時間以上走って目的地と思われる村に到着しました。でも、ガムラン屋さんが見つかりません。

「ガムラン屋さん、このへんにありませんか?」と聞いても、
「さぁねぇ…」と言われるばかり。なかなか見つかりません。

実は、ガムラン。バリでも作っている人たちはそう多くなく、工房はバリ全土でも10軒以下なのだそう。そしてまた、バリのガムラン製作者達は元々共通の祖先を持っていて、最初はひとつの家族がガムランを作り始め、その子孫たちがのれん分けしてバリ各地に工房を持つようになったのだそうです。

「限られた血族だけに伝わる伝統の業」それがガムランの本当の姿でした。正直、もっとポピュラーなものを想像していた買い付け班、あまりの事に言葉もありません。ガムランは想像以上にハードルが高く、神秘的な楽器なのでした。



みんなで延々探した結果、街の外れにとっても小さな看板を発見!! 大きさ20cmほどの小さな看板に「JUAL GAMELAN」と書いてあります。こんな小さい看板なんて…見つかる訳がありません。中に入ってみると、ガムランが並んでいます。「あった!!」と大喜びの買い付け班。でも、肝心の工房はどこにあるのでしょう…聞いてみると、「工房は別の家にあるのよ」との答え。

「え、マジで…!」がっかりしつつも、新たな手がかりを得たので、気を取りなおして探しなおしです。村の中をウロウロして、とうとうガムランの工房を発見しました!! 中でカンコン音がします。キーンと言う、金属を削っている音もします。どうやら、ここが本当の工場のようです。



中に入って製作工程を見せてもらうことにしました。入り口ではガムランの外側の部分を作成していました。ゆっくりと、丁寧に手で塗っています。既に綺麗に彫刻が施され、できあがりは間近なようです。



奥に入っていくと、バーが裏返されたガムランが置いてありました。「これは何しているの?」と聞くと、「これは、ガムランを調律しているんだ」との事。「ガムランは金属じゃない? それでもチューニングがずれるの?」と聞くと、「もちろんさ。新品のガムランは2年か3年したら調律しなおさなきゃダメだ。その後は5年に1回位調律が必要だよ。もっとも、古くなってくると安定するから、あまり調律は必要なくなるけどね」との答え。



調律は真ん中を削ったり、端っこを削ったりして行うそうです。ガムランのバーの裏面の中央部を削ると音程が低くなり、端を削ると高くなるのだそう。ピアノのような弦楽器に調律が必要なのは判りますが、ガムランにも調律が必要というのは本当に意外でした。

奥に行くと、真っ黒になったガムランの工房がありました。部屋の中は石炭のススで汚れ、何十年もここで作業が行われていることを物語っています。床には熱い金属を冷やすためと思われる小さなプールが数カ所にあり、小さく火を焚ける所もありました。



工房の隅に出来上がったばかりのガムランのバーを発見しました。溶けた金属をバーの形の中に入れ込み、作成した素のままのバーです。バリもあり、デコボコもあり、まだいい音もしません。



バーを鋳込んでいる場所もありました。床にバーの形になって穴が開いていて、その中に溶けた金属を流しこんで作ります。とっても原始的で、古来からこの方法で作られたのだとすぐに理解できます。



これがガムランの原料になる金属です。ガムランは金属製品なので、既に一度使用された金属を何かをリサイクルして作成していました。元々はモーターだったと思われる銅線の束や、金属のチューブなどが転がっています。「この金属は?」と聞くと、「これは銅、これは錫だよ。これをミックスして作るんだ」とのこと。ガムランは青銅のものが一番音がいいそうなのですが、ここでは青銅を原料である銅と錫から自分たちで合成して作り上げていました。青銅は日本では銅鐸などに使われている大変歴史のある金属ですが、ここバリのガムラン工場では弥生時代と同じようなことが今でも行われているのです。



私たちが訪ねたときはちょうどお昼の時間だったので、あまり働いている人は多くなかったのですが、一人だけ、タタラ場で金属を溶かしている人がいました。タタラ場からは青白い炎が立ち上がっています。近づくとものすごい熱気です。熱くて3mくらいまでしか近づけません。ファンで盛んに空気を送り込み、温度を上げているようです。

「これから作るよ」というので、見学させてもらうことになりました。ファンのスイッチをひねると火が大きくなり、火花が盛んに上がります。タタラ場の中は熱く、熱気が離れた所にいる私達のところまでやってきます。すごい迫力です。火は青々と燃え上がり、相当の高温であることが伺えます。

その横で、お兄さんが金属の計量を始めました。さっき説明してもらった錫の板を測って、陶器のポットの中に入れます。さらに銅線をぎゅうぎゅうと詰めます。私達日本人から見ると、「もっときちんと測りなよ!」と思いますが、きっとこんな感じでいいのでしょう。



金属が入った陶器のポットをタタラ場の中に入れ、待つこと5分。真っ赤に焼けた陶器のポットを金具で取り出し、鋳型の中に流し込みました。火を上げる鋳型。ちょっとでも溶けた金属が撥ねてきたら大火傷しそうですが、お兄さんはT-シャツ、短パンのまま。「大丈夫なのかなぁ…」と思いますが、きっとタタラ場が熱いので、長袖の服などは着たくないのでしょう。



工房の端っこでは既に鋳終わったレヨンと呼ばれるタイプのガムランの最終工程が行われていました。電動のグラインダーで金属を磨いています。金属の埃が舞うらしく、一応マスクをしています。削り終わったガムランは僕達の知っている綺麗な金属の色になりました。このあと、きちんとチューニングを施して、一番最初に紹介した木の台に載せ、完成なのだそうです。

一つの家族に伝統として伝わり、作られてきたバリのガムラン。ほとんどの作業が、はるか昔と変わらない方法で作られていました。民族楽器の秘密に触れることが出来たバリの一日。私たちティラキタにとって、とても大切な日になりました

きちんとした物が欲しい買い付け班、この後、いい音のガムランを求めて数軒のガムラン工房をめぐりました。その中で一番しっかりしていて、音のいい所に注文を入れ、数ヶ月後、ティラキタにガムランが到着しました。ガムランに関する本を読んだり、色々な話を総合すると、私たちが仕入れさせてもらったガムランはバリガムランの血族の本家だったようです。

「ああ、なるほどね。確かに本家っていう感じの音だったよね。他のガムラン工房と違ったもんね」と、一同納得。バリに行ってもなかなか手に入らないガムラン、ティラキタでならクリックするだけで簡単にご購入頂けます。チューニングなどの問題がありますので、お手持ちのセットのガムランに追加するのは難しいと思いますが、練習用として、単体のガムランとしては全く問題のない、完全に本物のガムランです。ご希望の方、ぜひお問い合せください。

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