男性の多くがボディーガード – インドの不思議なマッチョ村
「インドの脅威のマッチョ信仰」という話を以前、ブログで紹介しましたが、確かにインド人はマッチョ好き。街をうろうろ歩くと、雑居ビルの2Fとかに必ずと言っていいほどボディビルダーのムキムキのポスターが張ってあり、体を鍛えてモテたいインド人たちを誘っています。
このポスターはヒンドゥ教の聖地バラナシで見かけたものですが、米国人のムキムキマッチョが掲載され「お前もマッチョにならないか?」と誘っています。日本のジムがこの様なポスターを出してもきっと日本人は誰も食いつかないと思いますが、マッチョを美徳と思っているインド人には大変効き目があるのでしょう。
さてデリー郊外には、村人の男性の多くがボディーガードであると言う、大変珍しい村が存在します。村人の多くは肉体を鍛え上げ、ムキムキになり、デリーに出てきてパブやナイトクラブ等で働いているのだとか。
土曜日の夜、インド人の若者たちが向かう先は、ナイトクラブが何件か並んでいるデリー郊外の新興都市グルガオンのサハラモールの3F。安物の香水をつけて家を出かけ、仲間と合流し、酒を飲みながらナイトクラブの前に辿り着くと、そこには腕が彼らの太ももの太さくらいある屈強なボディーガードが待っている……
この様なナイトクラブや宝石店などの店頭で働いているボディガードのほとんどは、その珍しい村アソラ・フェテプリー・ベリ(Asola-Fatehpur Beri)からやって来ます。
かつてのアソラ・フェテプリー・ベリは他のインドの村と同じように農業で生計を立てていましたが、2000年あたりから農業をやめ、村の男性のほとんどがボディーガードになってしまいました。2000年頃というと、ちょうどインドが近代化し始めた時期と一致します。
アソラ・フェテプリー・ベリの男たちはデリーの中心部に建てられたショッピングモールや、塀で囲まれたゲーテッドシティ、ナイトクラブ、宝石店やサリー店などで働いています。
1990年の中頃に経済の開放政策が取られ、インドが近代化し裕福になってくると、用心棒が色々な所で必要になってきました。デリーでその需要を満たしているのが、アソラ・フェテプリー・ベリの出身者なのです。アソラ・フェテプリー・ベリではなんと、人口5万人の街の男性の約9割がボディガードとして働いているとのこと。
「うちの街ではジムに通ってない奴はいないんだよ」と村に幾つかあるジムの一つ、Akadaのトレイナー、ヴィジャイ・パヘルワンさんは言います。
「この街では全員が健康に気を使っている。タバコを吸うやつなんて1人もいないんだ」
この街の子どもたちは体を鍛え始める時、最初はオリンピックに出場して金メダルを取ることを目指すが、多くの子供は大人になって用心棒になることを選ぶのだそう。
レスリングの先生であるケシャヴ・テワールは「他の仕事なんか考えたこともないね。俺は用心棒になるんだと思っていた」と言っています。
「用心棒はいつも体を鍛えていなければいけない。俺はそれが好きなんだ。」
「15才の時からジム通いをしてきたよ。俺の夢はセキュリティーを守る仕事をすることだった」とも。
用心棒になるのは簡単なことではありません。一日に数時間のトレーニングが必須です。トレーニングの中にはオートバイを持ち上げたり、トラクターを持ち上げる練習もあります。インドですので、もちろんヨガの練習もします。食事は基本的には菜食で、生徒たちは筋肉を効率的につけるために特定の食事習慣を守る必要があります。
「1ダースのバナナと500gのフルーツ、昼食には1.5Kgから2Kgのヨーグルトを4枚のチャパティで食べる」
「夜は2枚のチャパティと、1.5Kgのアーモンドミルクを飲む」
これと同等のノンベリタリアン向けのメニューは一日に鶏一羽と卵10個、1ダースのバナナとミルク10リットルなのだそう。この量を毎日食べ続けるなんて…とってもムリ!と思いますが、彼らにとっては毎日のことの様です。
農村だったアソラ・フェテプリー・ベリにいつ頃から用心棒の仕事がやって来たのかは定かではありませんが、ヴィジャイの記憶では約15年前との事。デリー在住の男がヴィジャイに5人の用心棒代として1万ルピー(2万円)を払った事が始まりだそうです。1万ルピーというと農村では見たこともない大金ですから、それから徐々に村人たちが用心棒の仕事をし始めたのでしょう。
現在、アソラ・フェテプリー・ベリの用心棒たちは1日に1500ルピー(3000円)稼ぎ、月間では3万ルピーから5万ルピーほど稼ぐそう。彼らは屈強で在り続ける限り、そして罪を犯さないかぎり安定的に雇用されます。用心棒は安定した仕事なのです。
今、インドは5年で土地の値段が3倍になるという猛烈な不動産ブームのまっただ中。かつて農民だったアソラ・フェテプリー・ベリの人々は折からの不動産ブームで先祖から受け継いだ土地を不動産開発業者に売り飛ばし、体を鍛え、用心棒として働いています。
という話なのですが…そもそも、牛乳を一日に3リットルも飲むなんてムリだよ!って普通に思います。人間イロイロだから、運動に向いている人も、向いてない人もいると思うんですが、村のほとんどの人がジムに通ってボディーガードをしているってちょっと普通じゃないですよね。
このボディガードの仕事は1990年以降に発生したものなので、あまり昔からのカーストは関係無いような気がしますが「コミュニティで全員同じ仕事をする」っていうこの体質はインドのカースト制と同じ匂いがする様な気がします。
BBCのニュースでこの町のことが紹介されていました。こちらも合わせてどうぞ。
ムキムキ、マッチョの男がいっぱい出てきますヨ!!
Sources: India Today, BBC, The India Telegraph
このポスターはヒンドゥ教の聖地バラナシで見かけたものですが、米国人のムキムキマッチョが掲載され「お前もマッチョにならないか?」と誘っています。日本のジムがこの様なポスターを出してもきっと日本人は誰も食いつかないと思いますが、マッチョを美徳と思っているインド人には大変効き目があるのでしょう。
さてデリー郊外には、村人の男性の多くがボディーガードであると言う、大変珍しい村が存在します。村人の多くは肉体を鍛え上げ、ムキムキになり、デリーに出てきてパブやナイトクラブ等で働いているのだとか。
土曜日の夜、インド人の若者たちが向かう先は、ナイトクラブが何件か並んでいるデリー郊外の新興都市グルガオンのサハラモールの3F。安物の香水をつけて家を出かけ、仲間と合流し、酒を飲みながらナイトクラブの前に辿り着くと、そこには腕が彼らの太ももの太さくらいある屈強なボディーガードが待っている……
この様なナイトクラブや宝石店などの店頭で働いているボディガードのほとんどは、その珍しい村アソラ・フェテプリー・ベリ(Asola-Fatehpur Beri)からやって来ます。
Photo:india today
アソラ・フェテプリー・ベリは、デリーのセレブ街チャタルプールの近くに位置している、昔ながらの農村です。高層マンションが立ち並び、ゲートに囲まれた街チャタルプールからアソラ・フェテプリー・ベリに入ると、風景は近代的な都市から牛が闊歩する田舎に変わり、まるでタイムスリップするような感覚を味わう事ができます。かつてのアソラ・フェテプリー・ベリは他のインドの村と同じように農業で生計を立てていましたが、2000年あたりから農業をやめ、村の男性のほとんどがボディーガードになってしまいました。2000年頃というと、ちょうどインドが近代化し始めた時期と一致します。
アソラ・フェテプリー・ベリの男たちはデリーの中心部に建てられたショッピングモールや、塀で囲まれたゲーテッドシティ、ナイトクラブ、宝石店やサリー店などで働いています。
1990年の中頃に経済の開放政策が取られ、インドが近代化し裕福になってくると、用心棒が色々な所で必要になってきました。デリーでその需要を満たしているのが、アソラ・フェテプリー・ベリの出身者なのです。アソラ・フェテプリー・ベリではなんと、人口5万人の街の男性の約9割がボディガードとして働いているとのこと。
「うちの街ではジムに通ってない奴はいないんだよ」と村に幾つかあるジムの一つ、Akadaのトレイナー、ヴィジャイ・パヘルワンさんは言います。
「この街では全員が健康に気を使っている。タバコを吸うやつなんて1人もいないんだ」
この街の子どもたちは体を鍛え始める時、最初はオリンピックに出場して金メダルを取ることを目指すが、多くの子供は大人になって用心棒になることを選ぶのだそう。
レスリングの先生であるケシャヴ・テワールは「他の仕事なんか考えたこともないね。俺は用心棒になるんだと思っていた」と言っています。
「用心棒はいつも体を鍛えていなければいけない。俺はそれが好きなんだ。」
「15才の時からジム通いをしてきたよ。俺の夢はセキュリティーを守る仕事をすることだった」とも。
用心棒になるのは簡単なことではありません。一日に数時間のトレーニングが必須です。トレーニングの中にはオートバイを持ち上げたり、トラクターを持ち上げる練習もあります。インドですので、もちろんヨガの練習もします。食事は基本的には菜食で、生徒たちは筋肉を効率的につけるために特定の食事習慣を守る必要があります。
Photo:india today
「俺のオススメは一日に牛乳を最低でも3リットルか4リットル飲むことだ」とヴィジャイ。「1ダースのバナナと500gのフルーツ、昼食には1.5Kgから2Kgのヨーグルトを4枚のチャパティで食べる」
「夜は2枚のチャパティと、1.5Kgのアーモンドミルクを飲む」
これと同等のノンベリタリアン向けのメニューは一日に鶏一羽と卵10個、1ダースのバナナとミルク10リットルなのだそう。この量を毎日食べ続けるなんて…とってもムリ!と思いますが、彼らにとっては毎日のことの様です。
農村だったアソラ・フェテプリー・ベリにいつ頃から用心棒の仕事がやって来たのかは定かではありませんが、ヴィジャイの記憶では約15年前との事。デリー在住の男がヴィジャイに5人の用心棒代として1万ルピー(2万円)を払った事が始まりだそうです。1万ルピーというと農村では見たこともない大金ですから、それから徐々に村人たちが用心棒の仕事をし始めたのでしょう。
現在、アソラ・フェテプリー・ベリの用心棒たちは1日に1500ルピー(3000円)稼ぎ、月間では3万ルピーから5万ルピーほど稼ぐそう。彼らは屈強で在り続ける限り、そして罪を犯さないかぎり安定的に雇用されます。用心棒は安定した仕事なのです。
Photo:india today
ヴィジャイはこれから用心棒になる若者たちには「きちんと中学校を卒業するように」と強く勧めています。「デリーの人々は俺たちを犯罪者だと思っている。でも、考えてもみろ。朝晩きちんとトレーニングを欠かさず、きちんと働きに行く奴に悪者は居ない。実際、俺はみんなに良い行動をするように薦めているんだ」今、インドは5年で土地の値段が3倍になるという猛烈な不動産ブームのまっただ中。かつて農民だったアソラ・フェテプリー・ベリの人々は折からの不動産ブームで先祖から受け継いだ土地を不動産開発業者に売り飛ばし、体を鍛え、用心棒として働いています。
という話なのですが…そもそも、牛乳を一日に3リットルも飲むなんてムリだよ!って普通に思います。人間イロイロだから、運動に向いている人も、向いてない人もいると思うんですが、村のほとんどの人がジムに通ってボディーガードをしているってちょっと普通じゃないですよね。
このボディガードの仕事は1990年以降に発生したものなので、あまり昔からのカーストは関係無いような気がしますが「コミュニティで全員同じ仕事をする」っていうこの体質はインドのカースト制と同じ匂いがする様な気がします。
BBCのニュースでこの町のことが紹介されていました。こちらも合わせてどうぞ。
ムキムキ、マッチョの男がいっぱい出てきますヨ!!
Sources: India Today, BBC, The India Telegraph