地震を超える危機!! ネパールが鎖国状態になっています


■ネパールのラムちゃん
今朝、ネパールから来たラムちゃんがカトマンズに帰って行きました。うちから注文を取っていくだけでなく、日本でいろいろな会社を廻って、大阪にも新しいお客さんを探しに行って。


他のインド人やネパール人で注文をとりに日本に来る人は1人もいません。ティラキタは100を超えるインドやネパールの会社と取引がありますが、ラムちゃん以外は現地の自分の工場やお店から出てこようとしません。わざわざ航空券代を払って日本に行商にやってくる彼のバイタリティは僕らも見習わないとなぁと思わせられます。

ネパールでは海外に行ける能力のある人たちはすぐに中東や米国、そして日本に移住してきてしまいます。
ネパールで頑張るよりも、海外に来たほうが手っ取り早く稼げるからです。

ネパールのいい会社で働いても貰える給料は一ヶ月に2万円ほど。
日本に来れば20万円は貰えるのだから10倍も違います。

でもラムちゃんはネパールから動こうとしません。

「なんで海外で働かないの?」と聞いたら…

「他の人も同じ事言うよ。カトマンズでもお前は米国とか日本に何回も行っているんだから、なぜそっちに移住しないんだって言われるよ。

でも、僕はネパールのみんなに仕事を作りたいんだ。

僕が仕事を取ってこなかったらネパールで働く人が居なくなっちゃうじゃないか。

みんなご飯食べられなくなっちゃうじゃないか。

僕はネパールを、そしてみんなを支えたいんだ。」


そっか。そういう事か。
だから君は頑張れるんだね。
■インドとネパールの蜜月関係
いつも元気でポジティブなラムちゃんですが、一週間前に会ったら、珍しく落ち込んでいました。
悲しい顔で、「ウメさん、注文いくら貰っても仕事にならないよ…」と言うのです。

話を詳しく聞いてみると…なんとネパールがほぼすべての国境を封鎖され、石油もない鎖国状態に突入していると言うのです。9月中旬からインドがネパールの国境を全部封鎖したんだと。人は行き来できるけど、トラックは通れないのだと。その鎖国状態は昨日(2015年10月14日)ダサインというお祭りの期間だけとりあえず解消されたらしいのですが、事態はまだ進行中です。

今回のメルマガでは日本では全くと言っていいほど報道されない、ネパールが鎖国状態になった経緯を詳しく書いてみたいと思います。

まず、こちらが9月26日のニュースです。
ビハール州のインド・ネパールボーダーで数百台のトラックが立ち往生している状況を報告しています。
sorce:NDTV


ネパールは山の国です。隣国は中国とインドですが、中国側の道はヒマラヤの険しい山々が自然の国境になっていて容易に物資を運ぶことが出来ませんし、昨日まで中国との国境は地震で壊れて封鎖されていました。ですので、石油を含む全ての物資はインド経由でやって来る事になります。

ネパールはもちろん独立国ですが、全ての物流をインドに依存していますので、インドの属国みたいな立場です。大国インドの意向にいつも左右されています。

日本人の僕らが考える外国は遠く、船か飛行機で行く場所ですが、インドとネパールの関係は非常に近く、僕たちが想像できないほど緊密です。

・ネパール人もインド人もお互いの国に容易に入国することができます。
・ネパール人がインドで働くことも出来ます。
・ボリウッドではネパール人の俳優が活躍しています。
・インドルピーをネパールで使うこともできます。

「それって同じ国じゃん!!」って言うくらいネパールとインドの関係は緊密です。

sorce:google map

■70年ぶりの国境封鎖
インドがネパールの国境を封鎖したというニュースが入ってきたのは一週間前。ネパールとインドの間には幾つもの国境がありますが、一番北端のメジャーでない、道路も通ってないような国境を除いて全部の国境が閉じました。

全部の国境を閉じないのは国際法に違反するからだそうで、使いものにならない国境だけ一つだけ開いていると言う状況だったそうです。4月の地震で中国からの道も閉ざされていましたので、図らずもネパールは国際空港を除いて物流が出来ない準鎖国状態に陥りました。

国境が開くのを待っているトラックの列 sorce:AFP

そもそもの発端は、先週末に発効した新憲法が原因です。 今まではインド人がネパールに入国し、すぐに市民権を取得し、選挙に出馬することが可能だったそうなのですが、新憲法ではそれが非常に難しくなりました。インド人がネパールの市民権を容易に取得できなくなりました。また新憲法下においてネパールは全土を6つの州に分割しようとしていて、それも問題の火種になっているのだということです

ネパールは小さな国ですが、平原部と山岳部に国が2分されていて、平原部はほぼインド的な感じです。平原部にはインド系住民が数多く住んでいて、インドからの移住者も数多くいます。新憲法制定によって、平野部に住むインド系住民の力が制限されることになったのですね。

インドと兄弟のような緊密な関係を築いてきたネパールですが、ここ最近は中国の影響も強くなり、インドとしてはちょっと面白くない事態になっています。

平原部では新憲法制定に反対するインド系住民を中心とするマデシ派のデモが起こり、それを口実に「ネパール国内の治安が確保されないので」という理由で国境が封鎖されました。実はこの国境封鎖の理由はインドとネパール側で言い分が違い、確実なことはわかっていません。

sorce:NDTV

なにはともあれ、インドからしかモノが入ってこないのに、国境が封鎖されたということです。
その日から生活に必要な物資も、石油も何もかもが入ってこなくなりました。

70年前にも同じことがあったのだとか。
その時は半年国境封鎖が続いたのだそうです。

石油に依存していなかった70年前と今の状況は全く違います。
今、石油がなくなったら、食料の物流が滞り、多くの人々が餓死状態になるでしょう。

■石油のない国とは


給油するために2昼夜待っている車の列 sorce:岐阜ネパール会
石油に依存しまくっている私達の生活から石油が消えたら…どうなるのでしょう?
「そんな事起きないよ」と僕らは思いますが、つい昨日までネパールはその状況でした。

現地からの話によると、ガソリンがなくなるとまず生鮮食料品が消えるそうです。生鮮食料品はカトマンズ郊外から車で運んできていましたが、その運ぶ車が動かせないから結果として野菜から欠乏し始めるのだそう。

また、トリブバン国際空港からのタクシーも動いていず、国際線で空港に到着したら、歩くかサイクルリクシャで家に帰らなきゃいけないという前代未聞の状態が発生していたそうです。カトマンズは観光客を受け入れられなくなったのです。
これがサイクルリクシャ。2011年撮影

■地震の時よりもひどい状況

いろいろなネパール人に話を聞いてみると、

「地震の時よりもヒドイ」
「仕事もできないし、本当に困っている」
「観光客が全然いないんだ」

と口々に言います。

地震の時はみんなが助けてくれたからまだよかったと。
地震の時はその惨状が世界中にレポートされ、世界中の人達が助けの手を差し伸べてくれました。

でも今回は日本ではWeb上に数件のニュースが載るのみで、当事者以外ほぼ誰も知りません。
石油もなにもなく、地震の時よりも大変な状況なのに、誰も知らず、誰も助けてくれません。
ネパールの内政に起因した話なので仕方ないと言えば仕方ないですが、それは政治の問題であって、実際に困る一般の人々には全く関係がないのです。

ネパールは観光立国なのに地震の余波で観光客の数が80%も減っているそうです。
そこに追い打ちのようにやってくる国境封鎖。

みんな地震の時は寄付しますが、それは一過性のものですし、南アジアの国のことですので、残念ながら寄付したお金はどこに消えてしまうか判りません。本当の支援とは継続的に関係を続けることです。商品を買ったり、ネパールに旅行に行ってお金を使って楽しむ事なのですが、商品は作れないし、誰も来てくれないのです。

「今年はネパールの厄年か!!!」って思うくらいの苦難がいまネパールを襲っています。

ラムちゃんに「うちへの荷物はいつでもいいからね。送れる時に送ってね」と言いましたが、時間厳守でキッチリしている日本人のこと、全ての会社がそんな優しい事を言ってくれる訳はありません。きっと思うように注文も取れなかった事でしょう。取れても時間を守れずお客さんに文句を言われるのでしょう。

本当に、本当に、本当に大変そう。
想像もできないほど大変そう。
力強いネパールの人々のことですから、今回もなんとかするのでしょうけど。

僕ら日本人が同じ状況に陥ったら。
大地震の後に、石油が完全になくなったら。
きっと飢え死にする人が多数出ることでしょう。
社会は崩壊するでしょう。

ティラキタスタッフは11月2日から2週間、ネパールに行ってきます。
果たしてその時のネパールがどのような状況になっているのか…現地から詳しくレポートさせて頂きたいと思います。


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