カシミール地方に素敵な布のアーティストを訪ねて

2025年10月28日 未分類
■インドの中の異国カシミール
今回の記事はインドの中の異国カシミール、そしてそこで作られている素晴らしい織物について紹介します。インドっていろいろな地域がありますが、その中でも一風変わっているのがカシミールです。

デリーから見るとカシミール地方は完全に陸の孤島。夏でも訪問するのが大変なのに、冬の間は雪に閉ざされ、アクセスも困難な地域です。デリーから北に600Km。車で行くと700kmくらいあるでしょうか。インドの辺境地域で、領有権を巡っていつもパキスタンと揉めているお土地柄でもあります。地図では、この場所です。



インドというよりも、地理的にも中央アジアと言ったほうが適切な場所で、パキスタンやアフガニスタンの近くです。インドではあるけれども、パキスタン、アフガニスタン、中国と4ヶ国に囲まれているので「まぁ、政情不安定な地域なんだろうな…」とは容易に想像がつきますよね。

街にでてみても、そこはインドではなく、なんだかどこか懐かしい中央アジアの雰囲気が漂っています。尖塔と緑色が独特なモスクはデリーやジャイプルでは見かけない風景です。



街にオートリクシャは走っていますが、建物の壁の感じや作りがインドではありません。石造りの建物に木の窓枠。赤茶けたトタンの屋根から異国感が漂います。



みんな長袖で、コートやフリースを着た姿はデリーや南インドでは見かけない姿です。自転車の少年たちも温かそうな服装ですもんね。

街の看板にはイスラム教の指導者ホメイニ師が描かれていました。

この地域で人々が生活の糧にしてきたのが手工芸品です。
カシミールの人々は、寒い冬の間、家の中にこもりコツコツと作品を作り上げてきました。

■超高級カシミールショールを作るマクブールさんのこと
一枚4500usドルの値段がつく、超高級カシミールショールを作る方がいらっしゃるというので訪問してみました。
カシミールの市街地から10分ほど。車は細い路地を走って、小さな家の前で止まりました。

ここだよ。さあ、中に入ろう

木の階段をとんとんと上がると、がらんとしたコンクリートづくりの部屋の一角にぺたりと座りながら、黙々と作業している男性がいました。シンプルな布を手に、すいすいと慣れた様子で針を進めています。


サラーム・アレイクム。ティラキタと言います。日本から、カシミールの手工芸を取材しに来ました

おお、ようこそ。日本から? まぁ遠くから来たねぇ
私がマクブール・フサイン(Maqbool Hussain)です


年の頃は雰囲気から見て70歳位でしょうか。
マクブールさん、今取り掛かっている作品からひょいと目を上げて、話し始めました。

私はカシミールショール職人だよ。
今、手に持っている作品はね、作り始めて3ヶ月目から4ヶ月目位かな

刺繍が細かいものの完成品の写真があるのだけど
インドの昔の話や、ムガル時代の宮廷の様子などをモチーフにしながら作品を作っているんだ


と、見せてくれた写真の作品は、どえらく手がかかった一枚でした。刺繍でこれだけの絵を描くのに、どれだけの時間がかかるのだろうか…と卒倒しそうになります。

素敵な完成品からはちょっと想像しづらいですが、今、まさにこれを作られているところなのですね?

そうなんだ。完成するまでには長い時間がかかるのだけどね




マクブールさん、この仕事はいつから始められたのですか?

父親がこの仕事をしていたんだよ。
父がやっているのを傍目で見ていて、いつの日から、学校に行く代わりに刺繍をしてたんだ。

子供の頃からずっとこの仕事なんですか?

そうだねぇ。

ちなみに、手に持っているこの作品はいつ完成するのですか?

刺繍だけで、あと一年半ぐらいだね。刺繍が全部できたら洗濯をして、トリミングをして、最終調整をするのに2-3週間くらいかかって完成だよ


一度作業を始めると、マクブールさんの姿はまるで瞑想しているかのようでした。額にはシワが刻まれ、歳を重ねてはいますが、彼のやってることは、子供時代とまるで変わりがないのだと言います。

老眼で細かいものは見えないはずなのに、何も考えずただ集中して、一針一針確実に進めているその姿は、一生をただ刺繍だけに捧げた一人の職人の姿でした。



■チェーンスティッチの職人バシーラムさん 64歳
この日、もう一人の職人を訪問しました。
■気に入ったらシェアしよう!

Comments are closed.

インド雑貨・アジアン雑貨・民族楽器- ティラキタのブログです。僕たちが大好きな面白インド&アジアを楽しく紹介しています

BLOG内から検索

今日の新入荷商品

今日のセールをピックアップ


今日人気の記事

人気の記事-全期間