素材は南アジアを巡る – アフガニスタンからインドまで!

■国境はそんなに重要じゃない
島国に住んでいる僕たちは日本は日本、外国は外国と完全に区切って考えがちですが、ユーラシア大陸の中では国境を超えてモノをやりとりするのは当たり前のことです。国境は彼らにとってそんなに重要な意味を持っていない気がします。
インドから見るとネパールはほとんど同じ国のような感覚です。ネパール人がインドに行く時には、確かパスポートは必要ありません。インドで働くことももちろん可能です。また、ネパールではインドルピーが普通に通用します。
流石に敵国同士であるパキスタンとインドはそんな感じではありませんが、国境に延々とバリケードが張られているわけではありませんので、地元の人にとっては国境を超えることは日常の一部です。
今回、商品として紹介したアフガンバッグも、そんな大きなユーラシア大陸の中でいろいろな方法モノのやりとりが行われている事を象徴するような商品でした。
■アフガンからインドへ古着がやってくる!
この写真の商品は、実は戦火の絶えないアフガニスタンからやってきた、チョリと呼ばれる女性用のトップスをインドで加工して作られているバッグです。
ミラーワークや刺繍のデザインを見ると、「これはインドのカッチ地方から来たんでしょ?」と思いがちですが、実はこれはアフガニスタンのものです。インドのカッチ地方のデザインと、パキスタン、アフガニスタンのデザインは非常に似ているのですが、その辺に住んでいる人々や文化のルーツが一緒だということを意味します。
バッグ工房のニキールさんちを訪ねてみました。ニキールさんちはデリーの郊外にありました。

ニキールさんち。超豪邸です。4階建ての非常に素敵な家に住んでいました。

ニキールさんちの中はこんな感じ。家の中に神様が「どどん!!」と飾られている様はさすがインド人です。インド人は本当に、本当に、神様を大事にしています。お金持ちらしく、使われている家具も豪華です。

ニキールさんちの3階にある材料倉庫に入ってみました。これがアフガニスタンからやってきたままの状態のアフガンチョリです。腕の部分が広いことや、ベルベットの使い方、刺繍などに特徴があります。

もう一着。こちらは全面ビーズワークのチョリです

もう一着。ミラーとビーズワークのチョリです。ミラーワークはカッチ地方のバンジャラに大変良く似ています。

しかし、なんでアフガンのチョリがインドにあるのでしょうか?
ニキルさんに聞いてみました。
「なんで、インドなのにアフガンのチョリを持ってるの?」
「アフガニスタン人から買うんだよ」
「自分で行って?」
「行かない、行かない! 危ないもん」
「そうしたら?」
「アフガニスタン人がデリーに行商にやってくるんだ」
「飛行機に乗って?」
「だいたいバスで来るかな。飛行機で来る奴もいるけど。いろいろな方法でやってくるよ」
アフガニスタンからデリーに行商に来るなんて!! アフガニスタン人、どれだけ逞しいのでしょう? そう言えば、展示会を廻るアフガニスタン人にも会ったことがありましたが…確かに彼らのガッツは半端ではなかった覚えがあります。
きっと、彼らはこの様なバスやトラックに乗って何千キロも旅をしてチョリを売りに来るのでしょう。

sorce:wikipedia
とは言うものの、ニキルさんが持っているチョリは結構どれもボロボロ。袖口が擦り切れていたり、破れていたり。いかにも中古品です。
「このチョリはどうするの?」
「チョリは使える所を切って、一枚の大きな布にするんだよ。ちょうど屋上で作業しているから見せてあげよう。」と、ニキルさんに連れられて屋上に上がってみました。
屋上ではまさにチョリからの切り出しと使える布にするための作業が行われていました。色とりどりの布が白いコットンの布に貼り付けられていきます。

近づいてみました。古いチョリから切り取られた布はつなぎ合わされて、また新しい一枚の布として再生されていました。

確かに戦火のアフガニスタンには観光客やバイヤーは来ませんが、インドのデリーであれば数多くの人々がやってきます。需要のある所に人もモノも集まるのだなぁ…と改めて感じた工房訪問でした。
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