インド辺境のスパイス倉庫に行ってきました
■アンジャーは地の果てだった
英国や米国などに直接スパイスの卸をしている老舗のスパイス商社にコンタクトできたので、グジャラート州のアンジャーと言うインドの辺境中の辺境、パキスタンとの国境地帯の小さな町に行ってきました!!行って来たのはこの地図の場所です。パキスタンの国境まで50Kmもない場所です。
そもそもの話は5年ほど前の2010年に遡ります。
「私の親戚がスパイスの大きな卸をやっているのよ」
「え!! 本当?」
「私のルーツはグジャラート州で、そこに親戚がいるのよ。 グジャラートには色々な親戚がいるのだけど、その内の一人がアンジャーって言う場所でスパイス商社をやっているのよ」との事。
「一度行ってみたいなぁ…」
とムンバイのヒーラルちゃんと話をしていたのですが、2015年3月にやっとこ訪問する時間ができました。インドってば本当に広くって、何回行っても全部を見た気になれません。インドパパ、まだケララも行ってないし、ラダックも行ってないし…行けてない所だらけ。「インドを全部廻るのに人生3回分はかかるよな!」と思ってしまうくらい広いのがインドという国です。
今回はインドのハンディクラフトの都、ジャイプールからアンジャーに行くことになりました。いろいろ調べてみると、列車だと18時間かかるのだそう。18時間…約1日か…いくらインドの列車が快適で好きだと言っても萎える長さです。
「飛行機はないのかな?」と調べたらどうやらムンバイからしか飛んでいない様で、ジャイプールから一旦ムンバイに飛び、それからアンジャーの最寄りの空港であるブジュ行きに乗るのでやっぱり1日かかるのだそう。しかも値段は5倍位します。
仕方なく、列車で行くことにしました。ジャイプールで乗り込み、一路アンジャーを目指します。インドの列車はいつも混んでいて、なかなか空きベッドがありません。優しいインド人の好意でベッドを融通してもらい、寝台で一晩寝て、朝起きて。起きると砂漠の中を走っていました。
しばらく走るとウィンドファームが出現。インドには平らな土地がいっぱいあるので風車建てたい放題ですよね。日本は風車を建てるのにいろいろ厳しい条件があると聞きますが、インドでは土地の面での苦労はなさそうです。
ジャイプールを夜の19時に出発して、アンジャーの最寄りの駅ブジュに到着したのが次の日の16時。実に21時間かかりました。
ブジュの駅でオートリクシャーに乗ったら…なんとオートリクシャーがボラない!!
駅前のオートリクシャーに乗っても正規の料金しか言って来ません。
「ああ、ここは旅行者があまり来ない田舎なんだなぁ…遠いところに来たなぁ…」としみじみ実感します。
■スパイス倉庫を見に行く
数日後、ブジュからバスに乗ってアンジャーに向かいました。インドらしいボロボロのローカルバスに乗ること1時間。ローカルバスには伝統的な衣装を身につけ、腕に刺青を入れたおばちゃんなどが乗り合わせています。「ハロー! よく来たね!!」
アンジャーのバス停について、スパイス商社の若旦那、パラスさんが迎えに来てくれました。先にも書いた通り、パラスさんは、ティラキタがお世話になっているムンバイの取り引き先の親戚です。インドではなんでも親戚が重要で、親戚は友達よりも重要です。
バイクで10分ほど走って、パラスさんのスパイス倉庫に到着しました。スパイス倉庫を訪問した3月は丁度コリアンダーの収穫の季節で、敷地に入った途端、コリアンダーの美しい香りがふわりと漂ってきました。敷地に入るだけでスパイスの香りがするのはインドパパの長いインド経験の中でも初めてのことです。
パラスさんの会社はこの地アンジャーで35年続くスパイス商社。アンジャーのロータリークラブにも所属している地元の名士とも言える地位と信頼のある会社だそうです。
さて、ここが重役室。重役室では3人の男たちが座っていました。一番手前からパラスさんのお父さんアレンドラさん、真ん中がパラスさんのオジサンでマヌーさん、一番奥の人がお兄さんのヒマンさん。これにパラスさんの4人位が指揮を取ってスパイスビジネスを行っています。
インドでオフィスやお店を訪問すると必ずチャイが出てきます。チャイの味はどこも似てはいますが、土地によって多少の違いがあります。また、中高年が多いオフィスに行ったりすると糖尿病予防のために甘くないチャイを出してくれたりします。
チャイを頂いて、古い写真などを見せてもらった後、倉庫に案内してもらいました。倉庫に入ると芳しいコリアンダーの香りが鼻腔を強くくすぐります。この日は倉庫の半分くらいがハーフカットのコリアンダーで埋まっていました。
パラスさんによると、あと一週間もすると、クミンの収穫が始まるそうです。クミンの季節が始まったらここの倉庫はクミンでいっぱいになるのだそう。
パラスさんの会社はスパイス商社です。商社の基本は安い所で買って、高い所で売るですが、この会社でも倉庫に貯めることである程度、安い時に買って、高い時に売ることができるのだとか。クミンは3ヶ月、コリアンダーは4ヶ月、グアーガムは2-3年、キャスターシーズは2-3年倉庫に、保管することが出来るのだそうです。
倉庫の入り口ではインド人達が働いていました。スパイスをトラックから搬入しているところで、たった今、農家から来たばっかりなのだそうです。
農家から来たばっかりのスパイスには、多少の湿り気があるので天日で乾燥させて、カラカラにしてから麻袋に詰めて倉庫に、収納するのも重要な仕事の一部なのだそう。
パラスさんの会社ではここの倉庫から、地域のスパイス屋さんに送ったり、直接海外に輸出したり、大消費地であるムンバイに出荷したりしているそうです。ほら、これがコリアンダー! ハーフカットのコリアンダーです。
このティラキタブログでは以前ムンバイのスパイス倉庫を紹介しましたが、この倉庫はそれのもう一つ上流にあたり、農家と大都市を結ぶ重要な役割を担っているそうです。日本で似たようなものを探すとすると、新潟の地元の米卸の倉庫って感じになるのでしょうね。
スパイスはインド人の食生活に欠かせない必須のものです。今回紹介したコリアンダーだけでなく、唐辛子にクミンにターメリックに胡椒にシナモンに…とインドには多種多様なスパイスがあります。結果として今回はコリアンダーを追いかけてきた形になりますが、きっと、場所が変わればシナモンのスパイス卸などもこの様にあるのでしょう。ぜひ次は、別のスパイスの原産地にも行って、レポートしてみたいと思っています。
ブジュの駅の写真を見ますと、同じく写真で見ます昔の満鉄の田舎の駅の雰囲気に良く似ていますね。インドの鉄道はロシヤ(ソ連)東欧よりさらに「広軌」ですからヤジロベイモードの横揺れがずっと少ないんじゃないですか。もちろん線路の整備状態次第ですが。