インド進出の光と影について インド進出したい企業の方へのメッセージ



今日は、これからインド市場に進出される日本の企業の皆様へのエールを込めて、ブログを書かせて頂きたいと思います。

■インドに進出したいのだけど話を聞かせて欲しい
ここ最近何回かインドに進出したいのだけど話を聞かせてくださいという話をもらいます。

正直、話をするのは全然問題ありません。
大好きなインドのことですので、ぜひ話をさせていただきたいのですけれども…。
情報はただとばかり、気軽に聞いてきたりされるから困りものです。

突然のメールにて失礼いたします。
ABCD株式会社 中野と申します。

弊社は、長年に渡り化粧品や日用品の包装資材を提供しております。
最も身近なところですと、プラスチックの使用量削減のため、詰め替え用パウチを世界で初めて商品化しまして、提供して参りました。

今回メールしましたのは、インドの化粧品市場向けに、包材・容器を軸にした新たなビジネスを展開できないかと考えておりまして、市場リサーチを進めている段階で貴社のHPを拝見し、アーユルヴェーダ化粧品についていろいろご教示いただけないかと考えました次第です。

近いうちに、メンバーでのインド現地出張も行う予定ですが、その前段で詳しい方にお話を伺えたらと思っております。

お忙しいところ大変恐縮ではございますが、葉山の方にお伺いしまして、一度ご面談のお時間をいただければ幸いです。

ご検討のほど、よろしくお願いいたします


うーーん??
この文面から察するに、俺が行くから、タダでインドの話を聴かせて欲しいっていうことかしら…??

僕らティラキタは、1993年からインドに通い、経験を積み重ねてきているんだけどなぁ。

それって他の人からは得られない貴重な話だと思うんだけど、どう思う?

そうですねぇ。ちゃんと仕事になる話をしますので、お金がかかりますと答えてみましょうか

そうだね。それがイイね

そして数日後…

貴社がコンサルティング業を営んでおられること、失礼ながら存じ上げておりませんでした。
コンサルティング業としての実績など、ご紹介いただけるものはありますか。

金銭の支払いが発生しますと、弊社内でもそれなりの説明が必要になりますのでよろしくお願いいたします。

ABCD株式会社 中野

やっぱり!! 知らない会社から情報をもらおうとして、支払いが発生しないと思っていたなんて失礼すぎる!!!

この会社はただでうちの話を聞きに聞こうとしてきたんだなぁ…

と、スタッフ一同憤慨。

1993年からインドを見続けて、インドと共にやってきた会社に話を聞くには、それはそれなりの態度というものがありましょう。

まあそれはそれでさておいて。
インドに進出したい、という日本の企業の方々が多くいらっしゃるのもわかります。

中国だったら隣の国ですし、まあなんとなく事情も分かりますが。インドは全く違う文化圏で、手の手も足も出ず。ただそこに大きな市場がありそうだという夢だけがあるのも分かります。

インド進出って言ってもなぁ…
そんな雲を掴むような話なぁ…

と思いますが、まあとりあえず、大雑把な感じですけれども、インド進出の問題点と夢について書いてみることにしました。

■インドには12億人のマーケットが待っている
インドマーケットへの進出の夢といえば、インドには12億人のこれから成長するマーケットが眠っているというイメージでしょうか。
それ自体には全く間違いがなく、12億人のこれから成長するマーケットは、実際に眠っています。そしてこれから、インド経済は必ず成長していきます。それには間違がありません。

では、だからと言って。

その12億人のマーケットが簡単に手に入るのか?というと、そう簡単な話ではありません。インドは日本とは全く違う、複雑な世界なのです。

■インドは複雑に分割された世界
インド進出と言った時、どの地域に進出しようとするのかによって、色々事情は変わります。

デリーに進出するのか?
ムンバイに進出するのか?
それとも南インドに進出するのか。

日本人の我々は、日本が北海道から沖縄まで、一つの日本として成り立っているので、あまり疑問にも思っていないことですが。インドではその意識が希薄です。インドをヨーロッパに当てはめてみるとよく解りますが、インドは広すぎるのです。

ムンバイはムンバイ近郊
デリーはデリー近郊
チェンナイはチェンナイ近郊

などと、ざっくりとしたエリアがあって、その地域内で、各企業が活動しているイメージなのです。インドは広すぎるので、マーケットは地域ごとに分断されていると理解するのが正解です。もしくはインドの州=ヨーロッパの各国であるというイメージが正しいのかと思います。

つい先日、南インドに行ってきましたが、タミルナドゥ州とケララ州、そして他の北インド文化圏は全く違う文化圏で、物流もそんなにはないのだなという印象を受けました。南インドのものは、北インドにはあまりありませんし、北インドのものもまた、あまり南インドにはありません。

インドの多くの方々は、その地域に固着して住んでいて、その地域と宗教の価値観の中で生きています。

インド全体で見ると12億人のマーケットがあって、そこにサービスを全体として提供できると思いがちですが、それは割と難しい話です。とは言うもの、デリー圏だけで、何億人もの人がいますので、それはそれで十分に大きなマーケットなのですが。


■インドで人を雇用するには
インドで人を雇用するには、インド人にとっては当たり前であるけれども、私たちにとっては複雑である、インドの社会体系をそれなりに理解しておいた方が良いかと思われます。

宗教で言えば、インドにはヒンドゥー教、イスラム教、ジャイナ教、キリスト教、仏教などがあり、それぞれ宗教ごとに宗派があります。そしてカーストがあります。「現代においてカーストはない」と、エリートのインド人はいいますが、実際には色濃く存在します。

インド人にとっては、名前や出身地を聞くだけで、その人達が社会のどの階層に属しているか一目瞭然ですが、我々日本人にそれがわかるかというと、当然、無理です。

インド進出をする際にはそのような現地事情に詳しく、そして上手に問題を処理できる、現地の人事労務パートナーが必ず必要になってくると思われます。

とは言うものの。

エリートとだけ仕事をするとか、全然気にしないよという態度でも、なんとかなるとは思いますが、知らないよりも知っていた方が何かとスムーズです。

全部知った上で、スズキの社長は「うちの会社にはカーストは存在しない」という形を作り上げられたと聞きます。

■インドで会社を作るには
インドは国民一人ひとりが選挙を通じて国の指導者を選ぶ「民主主義」の国ですし、また、立法、司法、行政の三権分立も確立しているので、政治体制は欧米に近いといえます。

ですが、経済体制では計画経済の色彩が強く、民間の経済活動に対する規制も多いのが実情です。1990年代に、改革開放経済に移行するまではコンピューター1台輸入するのも大変だったと聞きます。

そのような国であったので、インドは未だに、官僚の力が強いお国柄です。そしてまた、当然のように社会に賄賂が存在します。インドにおいて、賄賂は社会の大きな問題であり、潤滑油であり続けています。

また、インドでは人脈やコネが大変大きな力を持っています。

インドで会社を作って運営していくには、複雑なインドの法体系を理解し、そして適切な時に人脈や、賄賂を行使できるような現地のパートナーが必要でしょうね。

日本人がひょいと行って、現地のパートナーなしに、簡単に会社を作れる生易しい国ではありません。

■インドで日本人を雇用するには
「2度とインドに入国できなくなる? インドブラック求人の闇」にもあるのですが、日本の社員をインドで働かせようとするには、年間2万5千US$を支払わなければいけません。

どんな人を連れて行こうと、これだけの金額は必ず支払わなければいけず、気がついてみたら人件費だけで、日本よりもかかっていたということにもなりかねません。



■流通網の不備
インドにおいて、日本のような商品流通網を期待したら難しいかと思います。あるかかないかと言えばありますが、こんな感じで運ばれることを覚悟してください。





■商慣習の違い
インドと日本で、商慣習は大きく違います。

例えば、ティラキタが商品を注文する時ですが。

必ず前金を20-40%ぐらい支払うよね。
そうしないと、彼らは注文が入ったと認めないよね。


前金がないと、彼らは働きもせず、動きもしません。

日本の商習慣では、商品を受け取った時に100%を支払うのが普通であるかと思いますが、インドでは、まず前金があります。

単純な商品の受け取り次第1つを取っても、この様な感じですので、他にも各種いろいろなお互いの違いが存在することでしょう。



■それでもあなたの会社はインドに進出するのか
他にも、インド進出においては様々な問題点があります。

こちらのインド麦茶さんの書かれている記事は、すべて実体験に基づくものであり、大変に洞察が深く、よくまとめられていると思います。「インド民の代表的言い訳とその対応」など、笑っちゃうほど的確に、そのままのインド民の言い訳が書かれています。

インド進出を考えられる際、インド出張に行かれる際は、一度目を通しておいた方がいいでしょう。
https://note.com/indiamugicha_123

語弊を恐れず言えば、日本は単一民族に近く、島国に住んでいる非常に単純な国です。1つの大きな価値観があり、美しさがあり、その常識の中で社会が運営されています。

インドは、日本とは全く違く、多種多様な人々がいて、多種多様な文化と、生活と、宗教と、地域があります。とにかく社会がいろいろな形で分割されています。

ただ行けば、成功するだろうと思って行ったら、成功するのは難しいでしょうね。インドの文化を理解し、インドになじむようにして骨を埋める気で行かないと、きっと成功はしないでしょう。

それ程までに、彼我の違いは深いです。



■ティラキタに聞くのはちょっと間違い

ここまで書いといて、言うのは申し訳ないのだが…


ティラキタに対して、インドでビジネスをしたいのですが助言をいただけますか?と聞くのは、ちょっと間違いです。

私たちはインドでモノを仕入れて、日本で売る仕事をしています。

すなわち我々は、インドではお客さんです。お客さんである以上、インドの人々が、賄賂や税金、物流など、全ての問題を解決し、仕事をし易くしてくれています。なので各種問題は、我々は知ってはいるけども、直面してはいないんです。

でも、実際にインドで仕事を始めようとするとどうでしょうか。

インドでビジネスを始めるということは、様々な問題が、すべて降りかかってくることが容易に想像がつきます。

私たちティラキタでその経験があるかと言ったら。
実際はないんです。

長年の経験上、このような問題が来るだろうね、と言う事はだいたい想像はできるのですけれどもね。解決方法までは知りませんもの。ま、お金をもらって話をする場合には、それなりの解決できそうな人も紹介しますけどね…。



■日本のモノを欲しいと思ってるインド人たちはたくさんいる
さて、そろそろ最後なのですが。

実際、日本の高品質のモノを欲しいと思っているインド人たちはたくさんいます。

インドに行って帰ってくると、日本の商品は、全ての一つ一つが美しくて。綺麗でつるんとしていて、商品価値が非常に高いなと思わされます。私達の当たり前は、インドでは当たり前ではありません。

日本の製品は素晴らしいので、インドに持っていったら、きっと売れるだろうなって素直に思います。実際、インド人からも、持ってきて欲しいと言われます。

我々の商品には力がある。ただそれをインドで売るノウハウだけがない。
そういう状況なんだと思います。

インドに進出して、大きな成功を収めている日本の諸先輩たちはいっぱいいます。
代表格としては自動車のSUZUKIであり、ホンダやヤマハなども現地工場を設立して頑張っています。

ただ彼らが、簡単にインド世界に馴染んだかというと、それは絶対にないでしょう。血ヘドを吐く思いをして、下痢をしまくって、手痛い失敗をしながら、インドに馴染んでいったのだと思います。

インド人と日本人。

30年近く、長く付き合って思うのは、我々の両方ともが、とても誠実な人たちであること。
そして目の前の目標に向かって、共に頑張れる人々だということ、

なので、きちんと手を合わせていけば、きっとうまくいくと思うのです。

■気に入ったらシェアしよう!

Comments are closed.

インド雑貨・アジアン雑貨・民族楽器- ティラキタのブログです。僕たちが大好きな面白インド&アジアを楽しく紹介しています

BLOG内から検索

今日の新入荷商品

今日のセールをピックアップ


今日人気の記事

人気の記事-全期間