透明の結晶は輸入できない? ティラキタさんちの輸入実務裏話



■毎日やってくるインド人のオススメ商品
ティラキタには毎日のように、インド、タイ、ベトナムなどの取引先から新製品のお知らせが届きます。新製品とは言っても、彼らが彼らの売りたいものの写真を送ってくれる一方通行的な営業なので、オススメの100個中、1個しか仕入れられるものがないのですが。

いや、100個中1個あればまだいい方かな。
300個中1個かもしれないな。

彼らは日本で何が売れるか、僕らが何を欲しがっているかを知らないので、とりあえず何でも写真を送ってきます。

ここ最近の実例を挙げてみると…

すごい素敵な雰囲気のクルタパジャマ、カップルセット。
服はインドなのに後ろの国旗はなぜか英国。僕らと同じ様に、インド人たちもヨーロッパに憧れがあるんですかね。



吠えているトラさんの絵がバッチリと描かれた洗面台。この洗面台を自宅に設置して、毎日、起きた時に見るのはちょっとどうかと思いますね。



孔雀のデコレーションプレート。日本では見たことがない造形をしています。
いくらインドの文化をそのまま紹介するのがモットーのティラキタでもこれを仕入れするのは勇気がいります。



超絶でかい孔雀の置き物。造形としては魅力的なんだけど、こんなのどこに使うのかなぁ…



どこの国からやってきたかわからないオリエントな顔達。そもそも、本物か偽物かもわからないような…
もしアフガニスタンあたりからの盗掘品だったらどうなるんだろう?



法螺貝に彫り込まれたガネーシャさん。これはちょっと欲しい人がいるかも…
でも、なかなか難しいアイテムですね。



ビビッドな色のプレート達。この原色の緑! ピンク! めっちゃインドらしいんですが、日本では流石にちょっとねぇ…


という訳で、彼らは自分たちの売りたいものの写真を送ってくれますが、なかなか仕入れられるモノはありません。まぁ、仕方ないですよね。私達日本人の好みなんてわかりませんものね。

■樟脳が輸入したかった
さて、そんな毎日やってくるおすすめ商品の中に、変わったものがありました。
Bhimsen Kapoorと説明が書いてある透明の結晶です。



調べてみるとBhimsen KapoorのKapoorとは、カンファーであり、樟脳のことだそう。樟脳はスーっとする清涼感のあるもので、日本だと虫よけとかに入っているもの。

樟脳は科学的に生成が可能な薬品ですが、その昔はクスノキから成分を蒸留、抽出して製造していたのだそうです。今でも九州あたりでは昔ながらの方法で樟脳を製造している、みやまの樟脳さんという会社があるみたいですね。

天然樟脳は化学製品の防虫剤と違い、その香りはまるで森林浴みたいな爽やかさ。この天然樟脳を広く使ってもらおうと、八女の手すき和紙に包んで発売したところ、意外にも若い人に好評で、しかも防虫剤としてよりもアロマとして使われているという。(ちくご観光案内所HPより)

なるほど、なるほど。
樟脳には、化学合成品と、天然があって、天然のものは爽やかなのね。

ちなみにインド人に聞いてみたところによると。樟脳はヒンドゥー教のプージャと呼ばれるお祈りの時に使用されるもので、聖なる燃料として扱われているのだそう。清涼感があり、とても特別な燃料なのだそうです。

なるほど、なるほど。
インドでは宗教的目的として使われているのね。

「これは割と面白い」ということで、輸入してみようと考え始めました。
でもなぁ、これ、なんかクリスタルだしなぁ…ちょっと通関に手こずりそうな気がするなぁ…と思って、事前相談してみました。

樟脳の結晶の輸入について、問い合わせたところ
下記の返答が

 ・融点が何度か
 ・覚せい剤取締法の事前確認が必要
 ・毒物及び劇物取締法の事前確認が必要
 ・麻薬及び向精神薬取締法の事前確認が必要
 ・薬機法の事前確認が必要
 ・化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の事前確認が必要
 ・MSDSが必要

以上、確認事項がかなりありますので
全てクリアになりませんと輸入が出来ません。

宜しくお願い致します。


厳しい!!!!
めっちゃ厳しい!!!!

麻薬及び向精神薬取締法って!!!
そっかぁ…これ、覚醒剤と見た目が一緒なのか!!!!!!

覚醒剤を輸入していませんよって証明しなきゃいけない訳か。
それは面倒だなぁ…

■輸入にはいろいろな障壁がある
今回の樟脳は、見た目が薬物に似ているということで、税関さんが厳しく目を光らせるのはよくわかります。
正直、当然であろうと感じます。

この樟脳の話だけでなく、海外からの輸入には、私達の生活を守るための様々な規制が存在します。

あまり一般的に知られていないところでいうと…

石鹸や歯磨き粉、シャンプーなどは化粧品に分類されるので、化粧品製造業などの免許がないと輸入販売することができません。

石鹸って、本当に身近なもので、普通に身の回りに存在するから、雑貨として輸入できるとティラキタ買付班も最初は思っていたんですよ。だって、自分たちで手作りすることも可能じゃないですか。そんなもの、雑貨だと思いますよね。

でも実際には石鹸や歯磨き粉は化粧品扱いになり、割と厳しく輸入が規制されています。



陶器などの食器類の輸入にも規制があります。陶器の表面のツルツルの部分には釉薬が塗られているのですが、その釉薬に鉛や重金属が混入している場合があるとのことで、こちらも輸入時に検査が必要です。

ホーロー製品もそうですね。ホーローの外側のガラス質の部分に重金属が入っている可能性があるということで、検査が必要ですね。

また、パロサントや、ホワイトセージなどは植物ですので、外来生物がやってこないように植物検疫があります。

意外なところではタイ土産で人気の三角枕は輸入不可です。

あの三角枕のクッション部分に稲わらが使われているものがあるのですが、日本の農業を守るため、稲わらの輸入は禁止されていて、それが理由で三角枕は輸入できないと。楽天などで売られている三角枕は実は日本用にアレンジされているもので、クッション部分の素材がコットンになっています。

■輸入は難しいが、我々は守られているとも感じる
ティラキタで取り扱いている商品は10000種類以上ありますが、その中で規制がかかって輸入時にいろいろな検査や手続を踏まなければいけないものは2-3000種類くらいはあるのかな。

インドやタイに行っても、多くの商品が輸入できなかったりします。

商品を輸入して販売する仕事を20年以上しておりますが。
常々、日本の規制の厳しさ、諸外国との違い、輸入実務の難しさを思い知らされます。

輸入は難しいのですが、様々な法律によって、我々の生活が守られているとも感じますけどね。例えばスパイスにアフラトキシンというカビ毒が発生している場合は輸入できないなど、私達の健康を守るためにだと納得できる規制がほとんどですから。

ちゃんと法律を守り、安全安心な商品を輸入する。

それがティラキタの責任ある企業としての、大切な仕事の一つなのだといつも思いながら仕事をしています。
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