[インドモノ辞典]インドの魔法の水差しロタについて
■インドには不思議な形の水差しがある
初めてインドに行った際、インドには壺みたいな形の道具がたくさんあるのだなと思ったものです。インドの壺はロタと呼ばれて、ぷっくりと膨れた丸い形をしていて、上部が大きく開いています。これこそが、インドが誇る機能美であり、シンプルの粋であるロタなのでした。 インドならではのシェイプの壺は、サイズと素材を変え、あちこちで使われていました。 不思議なことに、小さくても、大きくても、基本的には全部が大体同じ形をしているのです。こちらはデリーで見かけた素焼きの道具屋さんですが、ここでも先程の銅製のロタと同じ形がいくつかありますね。 若かりし頃のティラキタ買付班は「同じ形の水差し」としか思いませんでしたが、著名な米国人デザイナーが見ると、やはり視点が違うようです。20世紀における工業製品のデザインに大きな影響を与える作品を残したチャールズ・イームズは「私たちがインドを訪れたときに見たすべての物の中で、日常的に使用するシンプルなロタは、おそらく最も美しいものです。」と言ったそうです。そう言われてロタをよく見てみると、シンプルな中にも美しさと機能性が含まれているのに気が付きます。・丈夫で壊れない ・シンプルなデザインで飽きない ・くびれがあるので持ちやすい ・何段も詰めるスタッカブル仕様 ・水を注ぐ時にはねない、こぼれない、お尻にまわらないロタには、生活の中から生まれ、実用性からやってきた、機能性の美が詰まっているのでした。■ロタは万能
ロタはインド人たちの生活に根ざしている生活の基本アイテムですから、いろいろな用途に使われます。ロタはチャイを作る時に使われます。 Source:500px大きなロタはビリヤニ鍋として使われます。 スパイスたっぷりのインドのシチュー、ニハリを作る時もロタ型の大きな鍋が使われます。 礼拝で使われる、ガンジス河の水を入れる道具もロタです。 Source:ykantiques.comもちろん水くみにも使われます。砂漠の生活はロタなしでは立ち行きません。 Source:pinterest ロタはインドの古典芸能にも使われます。ラジャスタン地方の伝統芸能で、壺を頭の上に乗せて踊る踊りです。 ロタは小さいものから大きなものまで、色々なサイズがあります。 大きいものは室内での水ためとして使えますし。 中くらいのはウォータージャグとして。 Source:tumblr 小さいものは神様へガンジス河のお水をあげる時に使われています。■宗教的に必要なロタ
銅製のロタは、ヒンドゥー教的に見ると、とても重要なアイテムです。ヒンドゥー教の聖なる街バラナシではインド中から多くの人々が沐浴に訪れます。沐浴した後、インド人たちはガンジス川の神聖な水を家に持ち帰り、プージャ(礼拝)の部屋に水を置いて日常の儀式に使用すると同時に、家族やご近所さんたちにガンジス河の聖水を贈ります。その際に水を持って帰るのもやはりロタです。ガンジス川の水をペットボトルに入れて持って帰る人もいるようですが、ヒンドゥー教の視点から見ると、これはガンジス川の聖なる効力をなくす行為なのだそう。ガンジス河の水を銅製のロタに入れておくと、不運と悪を撃退する聖なる波動を生み出すのだと彼らは信じていて、またガンジス河の水を地元の井戸に注ぐと、その井戸が聖なる水になるのだとか…。ティラキタ買付班の目から見ると、あの汚染されたガンジス河の水がねぇ…と思うところはありますが。彼らはそれを信じていて、とてもありがたがっているのですからそれで良し。なのであります。■トイレに銅のロタをおいておくと良いらしい
お世話になっているシタール奏者さんによると、トイレに銅のロタをおいておくと良いらしいのです。銅のイオン効果とか半信半疑だったけど、これシンプルながら凄い。インドの銅製の壺を設置するだけで便器の黒ずみが無くなった。 pic.twitter.com/snkdh8resc
— シタール奏者 石濱匡雄 (@ishihama) December 13, 2020