インドの中の秘境 アルナーチャル・プラデーシュ州を旅するためのミニガイド
目次
■旅行者が居ないインド
基本的にインドは旅行者がたくさんいる国です。デリーのメインバザールにいけば、ヨーロッパ人、日本人、韓国人、中国人など、世界各地からの旅人に出会うことができます。リシュケシュに行けば、ヨガが好きな旅行者が居て。
ゴアに行けば、パーティーが好きな旅行者が居て。
アグラにいけば、建物好きの一般的な旅行者が居て。
インドの広い大地には個々人の希望を満足させてくれる素敵な場所が沢山あります。
だから、僕たちインドフリークは何度も何度も、インドを訪れてしまいます。
しかし、そんな広いインドの中でもほとんど旅行者が訪れない場所があります。
ミャンマーと、中国と、ブータンに囲まれた辺境地帯のアルナーチャル・プラデーシュ州。
地図で見ると、アルナーチャル・プラデーシュ州はこんな場所で、いわゆるインドからは地理的に隔絶されたエリアでもあります。
ティラキタ買い付け班、今回はインドの中でも辺境にあたる、アルナーチャル・プラデーシュ州を旅してきました。
■110の部族が住んでいる州
アルナーチャル・プラデーシュ州に住む人たちは、ほとんどが少数民族の人々です。デリー近辺に住んでいるような普通のインド人は、基本的にここには住んでいません。1883年に発効されたEastern Bengal Frontier Regulationにより、地元民以外の土地の購入が禁止されているからなのだそうです。そのため、インドの中でも昔ながらの部族社会が非常によく残っている地域です。
アルナーチャル・プラデーシュ州には26の部族カテゴリがあり、細かく分けると100以上の少数部族に分けられます。各部族はそれぞれ個別の言語を持っていて、ちょっと山を行くと、全く言葉の通じない人たちに出会うと彼らはいいます。
旅行中もタワンの町中を歩いていると、こんな不思議な帽子をかぶった人たちに出会い、いろいろな人達が住んでいるんだなぁ…と、強く部族社会を感じることができます。
また、このレストランの写真の様に一見、普通の洋装をしていても、彼は何族、彼は何族と土地の人が見ればすぐに分かるのだそう。葬送も部族によって違い、タンパ族は死者をバラバラにして、川に流し、魚に食わせるのだそうです。チベットの鳥葬みたいな感じですね。
■極端に人の住んでいないエリア
アルナーチャル・プラデーシュ州は山がちなので人口密度が非常に低く、13人/km2と、日本の中で最も人口密度が低い、北海道の6分の1。インドは基本的に人が多く、人口密度が高い国です。人口密度がもっとも高いビハール州では880人/km2と、日本の倍くらいの人口密度ですから、ビハール州と比べるとなんと、67分の1!!!!
道路を走っていても、延々とこんな山道なんですよ。
美しい湖や
急峻な峠道や
青空にたなびくタルチョや
高地にしか住まない動物ヤクや
美しい風景が次から次へと現れます
インドと言うと凶悪な大気汚染…と思いがちですが、ここ、アルナーチャル・プラデーシュ州は全く違いました。
空気がとってもきれい!!!!!
自然がたっぷりで空気がとってもきれい!!
深いジャングルの中には、野生の象もいるらしんですよ
■インドではないインド
インドというと、インドカレーを食べていて、ヒンドゥー教を信じていて、ボリウッド映画を見ていてというステレオタイプなインドを思い浮かべがちですが、ここアルナーチャル・プラデーシュ州は全く違います。ある地域の住民の多くはクリスチャンで、みんなクリスチャン名を持っていたりします。
例えば、この子はこの土地の名前ではアクーですが、クリスチャン名ではジョン。
タワン地域の住民はほとんどがチベット仏教徒。
インドでは見たことがない、たけのこの漬物が売っていたりします。小さなのは50Rs。大きいのは150Rs。保存食で、1、2年は持つとのこと。味は酸っぱいけど、酸っぱすぎず、たけのこの味わいも残っている感じです。
■ブートジョロキアの産地
ブートジョロキアの漬物が売ってました。上の段の真ん中あたりがそれ。ちょっと食べると、最高に辛くて死にそうになりますよ!!
シーズンオフでしたが、畑にちょっとだけジョロキアがありました。
山の上の集落では、屋根の上で唐辛子を干していました。
■至るところで道路工事が進行中
これは工事中のムービーですが、こんなに大きな構造物に一個一個手で石を投げ入れていました。この堤防を一個作り終わるのに、どれだけの時間がかかるのでしょうか。。。?
道路工事の為にダイナマイトを仕掛けているところにも遭遇しました。
インド人は気さくなのでダイナマイトも持たせてくれます。
これは工事中に更に土砂崩れが起きて、ショベルカーが半分埋まってしまったところ。これが自分が走っている時に起きたらどうしようとちょっと思いますが、そう言う事は考えないようにします。
■国境警備隊がいっぱいの州
アルナーチャルプラデーシュ州では過去に二回ほど中国の侵攻にあったことがあるので、そこら中に軍隊がいて、そこら中に基地があります。
正直な話、住民よりも軍隊のほうが多いのではないか?と思えるくらい軍隊が居ます。
インドでは軍隊やその施設を撮影することは厳禁なので、あまり写真がないのですが…
旅行していると、こんなトラックがバンバン走っていきます。
■どこにいっても秘境
本当に、アルナーチャル・プラデーシュ州はどこに行っても秘境です。
道の途中で羊飼いに出逢ったり。
チベット仏教の僧院があったり。
その中で可愛い少年僧に出逢ったり。
美しいゴンパと僧院の風景に出会ったり。
山の中で働く土地の人に出会ったり。
ヤクの肉を干している所に出逢ったり。
ヤクにであったり。
とにかく、アルナーチャル・プラデーシュ州の旅行はインドの他のどの地域とも違う旅行です。よりアドベンチャー感が強く、より秘境感が強い感じです。
今まで見たことがない世界を旅することができる、特別な場所です。
行くのは難しいけど、それを補ってあまりある、アドベンチャーがあなたを待ち受けていますよ!!
■アルナーチャル・プラデーシュ州の旅行シーズン
他の北インド地域と同じ様にアルナーチャルも10月から3月の旅行がおすすめです。ただ、12月から2月はインドと言えども、日本と同じくらい冷え込むので、ダウンジャケットなど防寒着を忘れずに持っていってくださいね。
標高4000mの峠を超えたりもするので、寒さ対策は必須です。
6月から9月の酷暑期、モンスーン期は雨で地すべりが発生して道が分断されるので、基本的に旅行できません。
■アルナーチャル・プラデーシュ州へのアクセス
アルナーチャルへの直行便はありません。アルナーチャルに行くには一旦、アッサム州のグワハティに飛び、そこから陸路で旅行することになります。
グワハティまではデリーから直行便がでていますので簡単ですが、問題なのはその先。旅行者が使用できる電車やバスなどの公共交通機関が存在しないのです。
また、Protected Area Permit(PAP)と呼ばれるパーミッションも取得しなければいけませんので、大体、現地のツアーオペレータにお世話になり、パーミッションから足の手配までお願いすると言う形になります。
デリー、コルカタ、グワハティのアルナーチャル・プラデーシュ州出張所、シッキム州出張所でパーミッションを取得できますが、現地のツアーオペレーターに頼む方が簡単です。ツアーオペレーターに頼んだ場合、数日でPAPが発行されます。
2008年までは4人のツアーでなければPAPが発行されませんでしたが、現在は2人以上のグループであればPAPが発行されます。個人旅行者はタワン僧院(Tawang)、ボンディア(Bomdila)、およびジロ(Ziro)が目的地であれば、PAPが発行されますが、状況は流動的ですので、現地のツアーオペレーターに聞いてください。
ツアーオペレーターが気を利かしてくれれば、他のグループと一緒にパーミッションを取り、グループ旅行者としてのパーミッションが取得できます。
お世話になったツアーオペレーターによると、パーミッションは30$+500rsのサービスチャージで取ってくれるそうです。30US$がパーミッション代で、500RSがサービスチャージですね。
おすすめのツアーコーディネーターは…私達がお世話になったGandhiさん。英語しか喋れません。
あとは西遊旅行の東北インドのツアーコーディネーターをしているトラベルディスカバリーも良いと思います。日本語のガイドもアレンジ可能だそうです。
彼らは村々のホームステイや、トレッキングなども案内してくれるとの事なので、ぜひ色々聞いてみてください。
なお、アルナーチャル・プラデーシュ州の中での、バスや電車を使った個人旅行は、ほぼ不可能に近いです。そもそも電車はありませんし、バスもほとんど見かけませんでした。
個人旅行をするにしても、車のチャーターが必要なので、結果として、ツアーオペレーターが催行しているツアーに参加したほうが楽ちんで安上がりということになります。
■パーミッションの由来
私達、旅行者には面倒でしかないパーミッションですが、歴史的に必要になった理由があるのだそうです。
アルナーチャル・プラデーシュ州に入るのは、旅行者だけでなく、インド人でもパーミッションが必要なのです。自国民が自国の中を旅行する時も許可が必要って…相当ですよね。
話は英国占領時代にさかのぼります。
インドが英国に占領されてた時代のこと。
この地域の部族が強力で、やってきた人を殺すので、部族の長と協議の上、パーミッションを作って、そのパーミッションを受け入れる事で、人を殺さないという協定を英国政府と作ったのが始まりなのだそうです。
それが現在は国境を守るために使用されていて、20年前までは入域が許可されていなかったのだそうですよ。