葬儀の基本は輪廻転生 ヒンドゥー教の葬儀について

■サラダちゃんの義母が亡くなった

ネパール人のサラダちゃんがティラキタに働きに来て、もう6年以上が経ちます。

2015年に働きに来る事になってから、一緒に家を探しに行ったり、引っ越しの手伝いをしたり、就労ビザの手配をしたり、そして何年か経って子供ができて出産したり。本当に色々なことがありました。

サラダちゃんには足の水を飲む話とか、ティラキタの出窓の装飾の話とか、ダルバートの作り方を教えてもらったりとか、いろいろ楽しい話を聞かせてもらいました。

最初はそこまで上手ではなかった日本語も、どんどん上手になりました。最近では家でご飯と味噌汁を作ってるようで、すっかり日本人化。

日々忙しくてなかなかネパールに帰れなかったサラダちゃんですが、つい先日、久しぶりにネパールに帰ることになりました。

ネパール人やインド人が実家に帰りたがるのは秋。ディワリやディーパワリと呼ばれるフェスティバルシーズンに合わせて帰ります。

ディワリやディーパワリは彼らにとって新年と同じ。働いてる人にはボーナスが出て、家族全員が集まります。海外に行っていた家族が帰国して来るのもこの時期です。

先日のディーパワリの前からネパールに帰っていたサラダちゃん。大変残念な事に、滞在中に義理の母が癌とコロナの合併症で亡くなってしまいました。



■お休み延長の連絡がやってきた
亡くなる数日前からネパールから、しきりにサラダちゃん連絡をよこしてきました。どうしたのでしょうか?

今回サラダちゃんに許可した休日は2ヶ月。1か月でネパールに行って帰って来て、2週間はコロナの自主隔離期間のために使い、2週間を予備としておくという約束で行ったのです。

いくらなんでも、さすがにそれ以上は伸ばせないよと言いました。ティラキタでは1ヶ月の休みは自由にとって良いことになっていますが、さすがに2ヶ月も休むとなると本当に特例。

このコロナ禍での帰省ということで、自宅隔離期間もあるし、まあ仕方ないよなということになったのが出発前の10月の話です。

そして、サラダちゃんがしきりに連絡したかった話は休暇の延長でした。義母が亡くなったので、さらに3週間から1ヶ月の休みを追加で欲しいというものでした。

サラダちゃんのお兄さんのラムさんが言うには。ヒンドゥー教のしきたりによれば、人が亡くなってから、2週間は喪に服し、家の中で誰とも会わず、ご飯も自分で作らなければいけないのだと言うのです。

さらに1ヶ月の休みとなると。合計3ヶ月のお休みです。さすがにそれはちょっとなぁ…いくらなんでも、困るなぁ。でも人の生死の問題だし、仕方ないのか…。

これが彼我の文化の違いなのでしょう。正直、色々と仕事が滞って困る部分はありますが、受け入れざるを得ないかなと思うのです。


いや、うちがアジア雑貨を扱っていず、コンビニやスーパーだったら受け入れないとは思いますが。ネパールやインドの文化が好きで、アジア雑貨を取り扱ってる以上、仕方ありません。

ということで今回は、知られざるヒンドゥ教の葬儀について書いてみることにしました。インドで生まれたヒンドゥー教は、この世界で3番目の進行者数を誇る巨大宗教ですが、特定の創始者を持たず、その土地ごとの土着の部分があるプリミティブな宗教でもあります。

ヨーロッパとほぼ同じ大きさを持つ広い地域をベースとしている宗教ですので、地域によって葬儀の方法も様々な違いがあります。

ネパール人のサラダちゃんちでは人が亡くなると、2週間喪に服すことになっているみたいですが、他の地域では、その期間や方法もまた違います。

■ヒンドゥー教の葬儀の基本は輪廻転生ベース
ヒンドゥー教はリンカネーションすなわち輪廻転生を基本的な思想としています。

この世に生まれた私たちの魂は、亡くなると同時に肉体を離れ、また別の形で、この世に生を受けて戻ってくると信じられています。


ヒンドゥー教の葬儀はすべてこの輪廻転生を基本として組み立てられています。

ヒンドゥー教では、私やあなたも含む、生きとし生けるもの、一つ一つの中に神が宿っていると考えます。全ての魂は神聖なものであると考えるのです。

人の物理的な身体は、魂の乗り物に過ぎず、魂には始まりもなく終わりもありません。人が亡くなるとは、魂が乗り物を離れることであり、魂が離れた体はすでに不要なものであると考えるのです。

魂が離れた後、次の生がどうなるかは、その人が現世でどのような事を行ったか(カルマ)によるとされています。

この様な輪廻転生の考え方が基本にあるので、人が亡くなった際は割とすぐに火葬をすることになっています。遺体に対しての執着は、他の地域ほどはありません。

実際のところ、インドは暑い国なので、すぐに火葬をしてしまわなければ不衛生です。インドの酷暑期である4月5月は気温が40°c を超えますので、遺体はあっという間に腐敗してきます。

そういった現実的な理由が、葬儀の形式に影響を与えているものと考えられます。

そしてヒンドゥー教の葬儀では、亡くなってから火葬までの時間が非常に短いので、エンバーミングなどの死体保存は基本的に必要ありません。

■火葬が基本
ヒンドゥー教徒が亡くなると、基本的には火葬されます。ただ、子どもや未婚の女子、感染症患者、ヘビにかまれて亡くなった人については、火葬せずそのまま死体を川に流す事があります。



ティラキタ買付版が長く滞在していたバラナシには、マニカルニカーガートと言う火葬場がありました。

インド人が生を終えたいと思う場所バラナシの一番大きな火葬場です。

マニカルニカーガートには昼夜問わず、インドのいろいろな地域から死体が運び込まれ、次から次へと火葬されていました。

火葬に使われるのは木材で、木材はガンジス川の上流から船に乗って運ばれてきます。

ガンジス川のほとりで木材によって火葬されるのはヒンドゥー教徒として一番の望み。ガンジス川のほとりで火葬されることにより、輪廻転生の輪の中から抜け出てニルヴァーナ、すなわち涅槃に至るとされているからです。


金糸と赤色の布に包まれた死体は、竹製の担架に乗せられ、ラム・ナーム・サッティヤ・ヘイとマントラを唱えながら、人に担がれてやってきます。

ラム・ナーム・サッティヤ・ヘイとは、「神(ラーマ)の名は真実である」という意味で、バグワット・プランと言うインドの古典にその起源があります。バグワット・プランの一節に、死ぬ前にラーマの名前を唱えた人は誰でも、天国に行けると言う話があるので、それをヒンドゥー教徒たちは人の死に際して唱えます。

火葬場に着くと、あらかじめ組み上げられている木材の上に乗せられ、火をつけられて、だいたい2時間か3時間ぐらいで焼きあがります。木材は高額ですし、また全ての人を木材で焼くのはやはり現実的ではありません。ですので電気炉も併用して使われています。懐事情に応じて、電気炉か薪で焼くかを決めるそうですよ。

ただやはり多くの人々は川のそばで火葬されることを望むようでして、首都のデリーでも、デリーの真ん中を流れるヤムナー川の横には必ず火葬場があったりします。

火をつける人、火葬を見守るのは基本的には長男の仕事とされています。近年になって女性が執り行うことも許されるようになったそうですが、伝統的に火葬、そして葬儀は男の、更に言うと長男の仕事でした。ヒンドゥー教は男系の宗教であります。そして多くの国々で喪服は黒ですが、ヒンドゥー教では白い薄い服を着ます。

ちょっと不謹慎な話ではありますが、火葬場の人を焼く煙の匂いは焼肉屋のそれと一緒です。バラナシの火葬場に行くと、いつも、人間もまた動物なのだなと思うのです。



■葬儀の大まかな流れ
ヒンドゥー教の葬儀は亡くなった1-2日後に行われます。葬儀は葬儀式場や寺院などではなく、基本的には自宅で行われます。この葬儀はあまり大々的なものではなく時間も短いのが特徴です。

自宅での葬儀に際し、参列者が贈り物や花などを持ってくるようなことはしません。葬儀では、僧侶が中心となって、葬儀用の特別なマントラを詠唱します。

自宅での葬儀が終わると、遺体は火葬場へと移動します。火葬場での儀式は長男が行い、僧侶は横で見守っている役となります。

焼けた灰や、燃え残った遺体は、横にある川に投げられます。お墓を作ったりはせず、遺骨を拾ったりもしません。もちろん骨壷もありません。

葬儀に際し、長男は頭を丸刈りにし、後頭部にちょっとだけ髪の毛を残す独特のヘアスタイルになります。誰が見ても、この人には不幸があったのだなと一目で分かるようになります。

そして10日間から20日間のŚrāddhaと呼ばれる喪に服す期間に入ります。これがサラダちゃんの会社を休む理由です。10日間から20日間の間、先祖やお世話になった親のことを思い、心からの感謝を捧げる期間であるとされています。

大切な一人ひとりの人生と向き合う時間がゆっくり取れるのは正直、羨ましいなと思います。いや、むしろ、一生に一度のことなのだし、そうあるべきではないのか、とも思います。自分を生み育ててくれ、この世に送り出してくれた大切な人々へ想いを捧げる日々。それは、とても大切な日々になるのだと思います。

葬儀だからと言って、1ヶ月も会社を休むのは私達にとっては難しいことではありますが。
お世話になった故人に対する尊敬の念は、同じ様に、いつも持ち続けていたいものですね。

■気に入ったらシェアしよう!

Comments are closed.

インド雑貨・アジアン雑貨・民族楽器- ティラキタのブログです。僕たちが大好きな面白インド&アジアを楽しく紹介しています

BLOG内から検索

今日の新入荷商品

今日のセールをピックアップ


今日人気の記事

人気の記事-全期間