Road to Goa – ゴア最大のトランスのフェス『Hill Top Festival』へ

■ゴア最大のトランスのフェス『Hill Top Festival』へ
初日はせっかくなので、皆と別れてゴア最大のトランスのフェス『Hill Top Festival』へ行ってみることに。チケットは昨年より値上がりしているらしく、3日間通しで5000ルピー、1日で3000ルピーと日本のフェスとそう変わらないもの。

しかしラインナップはシーンの大御所Astral ProjectionやRajaRamを始めDOMINO、Astrix、Space Tribe、KOXBOX、Ajjaと今や日本ではなかなか聞くことのできないアーティストばかり。最終日だったし迷わず1日券を買い、リストバンドをもらってエントランスゲートを潜った。



デコレーションが常設された会場はチルブースも合わせて3つもあり、メインフロアは2000人は優に入れそうな巨大なもの。蛍光塗料で直接ペイントされたワイルドな椰子の木が目を引く。

まだ明るい時間から音はゴリゴリのフルオントランスで、客層は白人4割インド人6割といった感じ。ヒッピーの楽園も今は昔と随分前から聞いてはいたが、実際ゴアは豊かになりつつあるインド人にも人気の観光地となっている様子。




余裕ができたので物販ブースを冷やかしていると、昔から聞いてた日本の地下足袋を売っている店もまだあった。

美しい刺繍が目を引いたフラワーオブライフというパーティーファッションのブースでは、デザイナーのルカさんというイタリア人と言葉を交わした。普段はバリに住んでいて、ハイシーズンになるとゴアに通う生活を22年間続けているそう。

ゴアはなんで特別なんだろう?と聞いてみるとニヤリと笑い「お前もここに来ているじゃないか。みんながここに来るからゴアは特別なんだ!」と言われぐうの音も出なかった。



会場はどんどん盛り上がって来ていて、陽が傾くにつれドンドン人が増えて来ていた。しかしせっかくなら初日からゴアの夕日を見たいと思い、会場を出て一人海へと向かう。

スマホで地図を見るとビーチまでは意外と距離があるが、アンジュナより北側のバガトールビーチなら近そうだった。真っ赤に落ちゆく太陽を追いかけるように、焦る気持ちを押さえながら急ぎ西へと走った。



息切らせ海が見える場所へ着くと、砂浜は遥か崖の下。遠くまで延々とビーチハウスが並んでいるのが見えた。足を滑らさない様に気をつけて浜まで降りる。ついにゴアのビーチへ来た!思わず裸足になり、アラビア海とさらさらの砂浜の感触を味わいながら写真を撮る。

有名なナインバーやシバプレイスなど、僕でも知っているような店名も見かけた。どの店もコテコテなトランスミュージックが流れていて嬉しくなる。ここでも辺りではしゃいでいるのは白人よりもインド人が多い。

雲一つなく、真っ赤に染まるアラビア海に太陽はつるべ落としに沈んでいった。実際この後もインドの空で雲を見ることはほとんどなかった。

レイやサチさん、半沢さんなどもかつてこの深紅の夕日を見たのだろうと思うと胸が一杯に。サンセットは本当は太陽が沈んでからが美しい。

しばらくすると、反射光で世界全体が一気に赤く染まるのだ。やっと訪れた地での刹那の光景を僕は心ゆくまで味わった。






暗くなると各店に電飾が灯り始め、ビーチはいかにもアンダーグラウンドなアジアのリゾートといった怪しい雰囲気へ。

ゴアの夜は始まったばかりで、歩いているとHill Topのアフターパーティーの会場を発見。ここでも慣れた手つきでインド人スタッフたちが準備をしていた。この地でレイヴカルチャーはすっかり地元産業として定着していた。

ありとあらゆるものを利用して、タフにサバイブしてゆくインド人は本当にたくましい。





暗い中をHill Topの会場に戻ると、さらにフロアは人で溢れていてもう前まで行けないほど。イギリス人アーティストによって作られたと言う巨大なDJブースのデコレーションが、プロジェクションマッピングのVJ映像に照らされまるで生き物のように動いている。

Hill Topは噂に違わぬトランスの聖地だった。

日本ではすっかり下火になってしまったカルチャーがここでは現在進行形で続いていて、世界中から人々を集め続ける強烈な磁場を形成している。

ラストのAjjaになる頃には会場の盛り上がりは最高潮に達していたが、残念ながら僕は電池切れ。旅の疲れもあって宿に帰り、こうしてゴア初日の濃厚な1日が終わった。



■やはりゴアではバイクがないと始まらない
次の日朝起きてまず行ったのは、もちろんスクーターを借りること。昨日ビーチまで徒歩で歩いて、意外とそれぞれの距離が離れていることを痛感していた。

やはりゴアではバイクがないと始まらない。

宿の前の路上で牛とバイクが一緒に並んでいるレンタルバイク屋へ。パスポートの写メを取られただけで、特に国際免許証なども確認されずにヤマハの真新しいスクーターを借りることができた。

料金は1日だと500ルピーで、連日借りると少し割安になるとのこと。結局どこに行くのにもバイクがないと始まらないので、ゴア滞在の間ずっと借りることにした。



閉口したのがお金を払い、いざ走り出そうとするとバイク屋が突然「ちょっと待て、バイクは貸したがその中のガソリンはまだ俺のだ。ガソリン代500ルピーを払え」と言ってきたこと。

そんなに正確にガソリンの量が分かるわけないと言ったら、彼は怒ってすぐに部下に合図。若い二人が口に加えたホースの切れ端をタンク突っ込み、あっという間にガソリンを抜いてしまった。空っけつのスクーターを渡された僕はなんとか一番近い商店までそろそろとバイクを走らせ、ペットボトルに入ったガソリンを買うことに。

本当にインド人はたくましい。

その時は腹が立ったが、後日バイクを返却した時には宿まで車で送ってくれ、車内で色々なことを話した。アンジュナ産まれアンジュナ育ちの35歳。オフシーズンの静かなゴアが好きで、お弁当を作って自然の中にピクニックに行くのが趣味なんだと、強面の外見からは想像もつかない意外な一面も。インド人というのは不思議と憎めない人々だ。


何はともあれ足を手に入れた僕は一気に行動範囲が広がった。となると次に手に入れたいのはゴアの地図。スマホのグーグルマップももちろん使えるが、ポケットWi-Fiに頼るのも怖い。オフラインでも見れる紙の地図はあるとやっぱり安心だし、暇な時間に眺めて少しでも地理を頭に入れたかった。

■インド人はそもそもあまり本を読まない
アンジュナ交差点の近くにあるマナリゲストハウスは、日本円からルピーへの換金もできるしブックショップも併設してある便利な宿。訪ねると僕も本が好きなので店主のミリンさんと意気投合。村上春樹やカズオイシグロの話題で盛り上がる。元々は家族が経営するゲストハウスの一角で、トラベラーが残していった古本などを販売するところから始め、10年ほど前から新刊本や雑貨を扱うきちんとした本屋にしたそう。

ただインド人はそもそもあまり本を読まないことに加え、スマホの普及で本離れはさらに加速していると言う。お客さんは殆ど欧米の旅行客で、売り上げも結局雑貨がメインになってきているらしい。

しかし本が好きなので、できる限り続けたいと知性ある目で語ってくれた。結局マナリブックショップもほぼ毎日通うことに、時々店番をしていた奥さんや子供とも仲良くなり、最終日に日本から持ってきていた自身の写真集をプレゼントするとメチャクチャ喜んでくれた。いつかまた再会したい。






宮脇 慎太郎
1981年香川県生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、日本出版、六本木スタジオなどを経て独立。大学在学時より国内外への旅を繰り返した後、2009年奄美皆既日食音楽祭を節目に高松に活動の拠点を移す。辺境bの聖性をテーマに風景やポートレートの撮影に取り組んでいる。

2012年から仲間とBookcafe solowを運営。2015年、日本三大秘境祖谷渓谷を撮り続けた写真集『曙光 The Light of Iya Valley』をサウダージブックスより出版。写真を大幅に追加してのバイリンガル版『霧の子供たち』を2019年に出版した。

次作に初のノンフィクション『ローカル・トライブ』、宇和海沿岸を撮り続けた『rias land』などを予定している。瀬戸内国際芸術祭2016、2019公式カメラマン。

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