知られざる神秘の世界 – イスラームの美を作り続けるモザイクタイル工房を訪問してきました
■モロッコはモザイクタイルの国
モロッコはモザイクと幾何学模様の国です。彼らは木や金属など、様々なものでモザイク模様を作り上げますが、その中でもモザイクタイルは特に目を惹くものの一つです。美しいモザイクタイルで作られた、イスラームの美とも言える素敵なデザインをモロッコの古都フェズでよく目にします。
フェズの入り口であるブー・ジュルード門は、アラビアンナイトの物語に出てくるような素敵な形の門ですが…
よくよく近づいてみると、青い部分の模様はすべてタイルで作られています。
フェズの旧市街を歩いていると、至るところにモザイクタイルで作られたものが出現します。モザイクタイルで作られた水場がいろいろな場所にあります。
水場は今でも現役で活躍していて、トライバルな方が山羊の胴体をそのまま使った水袋に、水を入れていたりします。
街の食堂のカウンターもタイルできれいに作られていました。
今回はこんな素敵なモザイクタイルが、どのようにして作られていくのか、実際に工房を訪問してみたのでレポートしてみます。
■モザイクタイルの工房を訪問
今回ティラキタ買付班が訪問したのは、フェズ郊外にあるモザイクタイル工房のArt najji社です。モロッコにはきっと、星の数ほどのモザイクタイル工房があると思うのですが、ティラキタ買付班、縁があってこの工房に導かれました。Art najji社の工房の近くには、茫漠とした砂漠が広がっていました。ゴミゴミとしたフェズの旧市街から10分ほどタクシーで行っただけなのにこんな風景に! モロッコは砂漠の国なんですねぇ。
モザイクの原料になるのは、変哲もない四角いタイルです。こんな四角いタイルがどうやってモザイク製品になるのでしょうか。
まず、四角いタイルにこれから作成する形を描きます。
実演してくれたのは熟練の職人さんで、フリーハンドですいすいと星型を描いていきました。
描いた模様に従って、トンカチでタイルをコンコンと叩き、星型や菱形など、色々な形を作り出します。モザイクタイルの一ピース一ピースのモザイクは、このようにして職人さんが手で彫り出したものだったのでした。
20,000ピースのモザイク製品だったら、20,000個も手で掘り出さなければいけないのですね…めっちゃ気の遠くなる作業!!!
一人の職人さんが、何個のモザイクを作れるかは、形によって異なりますが、1日に500から2,000個のモザイクタイルが作れるそうですよ。
掘り出されたモザイクタイルがこちらです。星型や四角の簡単な形だけでなく、こんなチェスのピースのような複雑な形もトンカチ一本で掘り出しちゃうんですねぇ…モロッコ人凄い!!!
その次に、作ったモザイクを金属の枠にはめていきます。金属の枠の中に、1ピースづつ、ジグソーパズルの様にはめていきます。
近づいてみると…おおお!!
全く隙間なくタイルたちが詰まってます!!!
ひっくり返してモザイクが現れる瞬間が楽しみになる出来栄えです。
これ位の大きさのモザイク製品を組み立てるのに、約一週間ほどかかるのだそう。
この様な噴水はどの様に作るかと言うと、
こんな形の噴水の形に入れて作るのだそうですよ。噴水のサイズごとに型があると言っていました。
枠の中に、全部モザイクタイルを入れたら、タイルが動かないようにセメントを流し込み、二日間待ち、製品が完成します。
こちらが多少セメントを流し込んだ状態のモザイクタイル。セメントだけだと脆いので、裏に鉄の網も入れて丈夫にしています。鉄筋コンクリートと同じ原理ですね。
そしてこれが完成形!! 原料のタイルの状態から、このモザイクが完成するまでの時間は、カッティング、組み立て、そしてセメントを流し込んで大体2週間かかるそうですよ。
■気になるお値段は…
さて、気になるお値段はどんなもんでしょう?興味本位でちょっと聞いてみました。
ここでは工房で言われたそのままの値段を書いておきますね。モロッコ人たちは商売上手なので、最初はとっても高い値段を言ってきます。頑張って交渉すれば、きっと半額くらいのお値段で買えるのではないかなと思います。
これは7万円位。
これは60万円くらい。
これは20万円位だそうです。
日本まで持ってこようとすると、このお値段にパッキング代と、モロッコから地球半周分の送料と、関税と、消費税がかかる…という事で、ざっと倍額くらいになりそうです。
高いものですが、熟練の職人と長い時間をかけて作られるものですから仕方のないことなのでしょう。
ちなみにこの工房、Webpageも持っていて、オンラインでの注文も受け付けているそうですよ。