あなたも突然、英語が喋れるようになる!? 不思議な国インドの謎
■インドに行くと英語が出来る様になった気がする
基本的に英語が出来ない僕たち日本人ですが、インドに行くと英語が上手に喋れるようになったと勘違いできます。インドに行くと、なぜか英語が喋れるようになった気になれるのです。何も勉強していないのに、英語が上手になった気にもなれます。もちろんインド訛りはあるけど、一般のインド人が使ってくる英語はとっても簡単な気がします。でも、いい気になって他の国に行くと…やっぱり話せない。全く話せない。インドに帰ってくるとまた話せるようになる。 これはどう言うことなのだ??インドにはなにか謎があるらしい…■実はインド人同士でも言葉が通じない
インドに行くと喋れるようになる気がするのは、なんでかな?と思っていたある日。 インドの新聞で興味深い記事を見つけました。Hindustan TimesのHow languages intersect in India.(言語はどの様にインドを分断しているか)と言う記事です。これはインド国内で、2人のインド人が偶然出会ったときに、満足に会話ができるかどうかを調べたものです。緑の濃い部分は意思の疎通がしやすい、薄い色の部分は意思の疎通が難しいことを意味しています。おや、割と白い部分が多いですね…下の図はヒンディー語を喋るバラナシ付近の人と、インドの南端のタミルナドゥの人々の意思疎通できる割合を示したものです。第一母語であるヒンディー語を使う地域の人たちはそこそこ多くの人たちとコミュニケーションできますが、タミルナドゥなど、その州独特の言葉を使っていたりする場合、ガクンと話が通じる率が下がります。タミルナドゥの人って、同じインドの中でも全く言葉が通じないんですね… source:hindustan times日本人同士だったら、多少の方言はあるにしたって、話が通じるのが当たり前です。北海道の鈴木さんと、沖縄の与那覇さんは問題なく意思の疎通ができますよね。もちろん多少のイントネーションの違いはありますが、意思の疎通は全く問題ありません。この様に日本人の僕らは、国内で誰とでも話ができるのが当然であると考えます。そんなの当然だろ、だって同じ国なんだから。 当たり前だろ、と言われそうです。しかしこの常識がインドでは通用しない。 インド人同士でも話ができないのが彼らの常識であり、当たり前なのです。インドと言っても広いので、バングラデシュに近い北東部に行くと、この様に日本人ぽい顔立ちの人も見かけますからね。こちらは同じ州の中で話の通じる割合をグラフにしたものです。ナガランド州では同じ州の中でさえ、話が通じる割合が24.3%と極端に低いのです。ナガランドは部族社会ですから、お隣の集落は別の部族で、別の言葉を喋っていると言う状況がいまだにあるそうです。 source:hindustan times■国内でも話が分からないのだから
彼らは、国内でも話が分からない人がいるシチュエーションに慣れているのでした。インド人に話を聞くと、お互い話が通じないから、そのために英語があるんだよ。と、最もな顔をして言います。インド人にとって、母語はあくまでもヒンディー語やタミル語、マラヤラム語などであり、そして、コミュニケーションのために、英語を覚えます。だから彼らにとって英語は話のわからない人との道具。すなわち、話のわからない、僕たち日本人を話す時に使う道具なのです。だから彼らも、英語が喋れても、実はそんなに上手じゃない人たちが多いのですね。 だから使用する語彙も少ないし、喋り方も上手ではない。それが僕たち日本人に、「インドに行くと、英語が喋れるようになる」と錯覚させる原因になるのでした。■実際にインド人に聞いてみた
ティラキタでお付き合いしているデリーのドグラさんに「実際の所、言葉が通じないっていう状況を体験したことあるの?」と聞いてみました。ドグラさんは、デリーの北に位置するヒマラヤがある州、ヒマーチャル・プラデーシュ州の出身です。 ねえ、ドグラさん。あのね。今、インド国内で言葉が通じない話をみんなに伝えようと思っているんだけど、ドグラさんはそう言う状況になったことある?あるとも。これは俺が一番最初に故郷から出て、パンジャブに働きに行った時の話なんだが…
ヒマーチャル・プラデーシュとパンジャブ州はすぐお隣の州で、日本でいうと埼玉県と栃木県みたいな位置関係です。この様に地理的に大変近い場所ですが… 故郷を出てパンジャブ州に行ったら、お店の看板など色々なものがパンジャブ語で書かれていて、全く読めなくって困ったんだよ。
え、だって。故郷とパンジャブ州はすぐお隣じゃない?
それがインドなのさ。隣の州じゃなくても。自分が住んでいる州の中ですら言葉が通じない場合があるんだよ。
で、パンジャブではどうしたの?
自分で辞書を買ってきて、自分で勉強してなんとかしたよ。何とかするしかなかったしなぁ…
この様に同じインドであっても、ちょっと地域が違うだけで言葉が通じないが現実が実際にあり、ドグラさんはまるで、外国に来たような気分を味わったそうですよ。
マラティ語で書かれているムンバイの看板。