これはちょっと…と思う酷いニュースが山盛りのネパールの新聞を読む
目次
■ネパールの英字新聞 The Himalayan
海外に買い付けに行くと、英語の勉強を兼ねて、その土地の英字新聞を読むことにしています。
慣れない英字新聞ですが、辞書を片手に読んでいくと色々面白いことが書いてあります。
昨年の11月にネパールに行った際も新聞を読んでみたのですが…ネパールの新聞はインドよりも大分読みやすいものでした。読んでみると、日本では考えられない余りにもヒドいニュースがてんこ盛りだったので翻訳しながらレポートしてみたいと思います。
今回紹介するのはこちらの英字新聞 The Himalayan。サイズは日本の新聞と同じサイズですが、ページ数が少なめです。ネットにもHPがあり、そちらには「Nepal's No.1 English Daily Newspaper(ネパールのNo.1日刊英字紙)」と書いてありました。新聞の立ち位置的には日本のThe Japan TimesかThe Daily Yomiuriみたいなものだと思います。Web版もありますので、ネパールのニュースを知りたい時、とっても役に立つと思います。
■政治家が国費で、海外にガンの治療に行く
まずはこちらのニュースです。
Rs 5mとは500万ルピー(500万円相当)なのですが、このニュースはネパールの政党Nepal Congressのリーダー、スジャータ コイララが乳がん治療のために、マレーシアまで飛んで治療を受けるのだそうですが、渡航費や治療費として500万円を国費負担とすると言う話です。
まず、がんの治療費を国費負担とすると言うのが疑問に思えます。
日本でも国会議員には公務上の災害に対する補償がありますが、当然、公務上、被害を受けた場合だけであり、がんは対象になっていません。がんになった理由は公務によるものではないですし、当然、個人負担するべきものだろうと思いますが、ネパールの感覚は違うのでしょうか?
また、国内で治療せず、海外まで飛んで治療すると言うのがまた疑問に思えます。
第3世界のネパールでは、まだまだ満足ながん治療が出来ません。ここ最近、カトマンズの郊外にもがん専門の病院ができましたが、ネパールに住む知り合いのがん患者は、放射線治療を受けるために、わざわざカトマンズから、インド国境近くの街まで行って、放射線治療を受けています。片道、車で6時間くらいかかるそうです。
その人はお金があるから、時間がかかったとしても放射線治療が受けられますが、実際問題、ネパールではお金のない人が大半です。人口の8割以上は、満足に病院に行くこともできず、必要な薬も十分に買えていません。
そんな中、政党のリーダーだけが国費で、海外に行って、がん治療を受けるおかしさ。自分の国がしっかりしてない事を棚に上げて、自分だけ海外に治療行くって事に、政治家たちは恥ずかしさを覚えないのでしょうか。
■救急車の不正使用が蔓延
次は、Ministry of Health to check misuse of ambulances(厚生省が救急車の不正使用をチェック)と言う題の記事を見てみましょう。
翻訳してみると…
ビール病院に勤めている看護長のGoma Devi Niraulaさんは、毎日、救急車で通勤をしている。その救急車はインド政府に寄贈されたものだが、改造し、彼女の個人的な車としているのだ。
この病院では他にも近隣諸国や慈善団体から寄付された救急車を持っているが、それは患者ではなく、スタッフを運ぶために使われている。この病院にある病人移動用の救急車は1台だけしかない。「私の病院の救急車は病人を運ばない」と匿名スタッフ。
ネパールの多くの救急車は準備不足で、政府の基準には合致していない。そして患者に法外な値段を請求する。救急車は金や絶滅の危険がある動物などを密輸するのにも使われている。
この病院では他にも近隣諸国や慈善団体から寄付された救急車を持っているが、それは患者ではなく、スタッフを運ぶために使われている。この病院にある病人移動用の救急車は1台だけしかない。「私の病院の救急車は病人を運ばない」と匿名スタッフ。
ネパールの多くの救急車は準備不足で、政府の基準には合致していない。そして患者に法外な値段を請求する。救急車は金や絶滅の危険がある動物などを密輸するのにも使われている。
てか…あまりにもヒドすぎて、開いた口が塞がらないとはこの事を言うのでしょう。正直、日本に住んでて良かった、と心から思えるレベルの話です。
ティラキタにもネパール人スタッフが1人いますが、事あるごとに「ネパールには帰りたくない」といいますが、それもよく理解できます。
■全国規模でストライキの影響
次のニュースはBandh hits life natinwide(全国規模でストライキの影響)です。バンダと呼ばれるストライキは、2016年11月に行ったときだけでなく、ネパールで頻繁に行われています。2015年8月のThe Himalayan TimesにもBandh hits life across country(全国規模でストライキの影響)と、ほぼ同じ内容の記事がありました。
ネパールにはマオイストと呼ばれる毛沢東主義政党が存在しています。マオイストは中国建国の父である毛沢東思想の影響を受けた政党ですが、直接、中国がバックアップしているわけではない模様です。現在の中国は毛沢東主義を捨て、現実的なリベラル路線に転換していますからね。毛沢東主義の直接のバックアップは行わないのだと思います。
このマオイストだけでなく、色々な政党が自分たちの主義主張を通すために、バンダと呼ばれるストライキを行いまくっているのが今のネパールの姿です。
バンダを実行すると、その期間中、お店は閉めなければいけませんし、車も動かすことができなくなります。開店しているお店は打ち壊しにあい、走っている車は停めて炎上させられるそうです。要は、バンダの間は経済活動が停止するわけです。
バンダをやること自体がネパールにとってマイナスなのだ
これを判っていない人々が政治的に力を持っているのが今のネパールの姿です。
■大量の大麻樹脂運搬で摘発
薬物好きなバックパッカーの視点で見ると、ネパールは吸いたい放題の国だと見えるらしいですが、流石にそういう訳ではなさそうです。僕達も詳しくは知らないのですが、実際のところは個人使用もダメだけど、あまりにも国内に大量に流通しているからか、お目こぼしされているだけと言う状況のようです。
この記事は10Kgの大麻樹脂を密輸しているところを逮捕されたと言う記事ですが、10kgって…まぁまぁ大きな量ですよね。日本の警察基準だと1gが2000円くらいの相場だそうですから、日本式に言えば、単純計算で2000万円相当の大麻樹脂を運搬となりますね。
摘発される単位は違えど、ネパールでも「ダメ! 絶対!」なのですね。単位、大きすぎですけどね…
■そんな国の広告欄は…
今回のこの記事を読んで、びっくりされた方も多いのではないかと思います。
「ネパールはヒマラヤの小国」
「優しい人々が住む国」
って言うイメージが根底から崩れるような話ばかりですから。
確かに、一般の人々は正直で優しいし、慎ましい生活をしています。本当にいい国です。
ティラキタも大好きです。
でも政治が絡むことや、お金が絡むことになると…本当に申し訳ない位、残念な印象を持ってしまいます。
ネパールの識字率は65%とあまり高くはありません。教育レベルもそこまで高くはありません。みんな素朴でいい人たちだったりするのですが、こと選挙になると、自分と地元の利益を露骨に優先させないと勝てない位の民意の高さなのだろうと思います。
さて、そんな国の広告欄を見てみると…びっくりする位、留学の記事で埋め尽くされています。実は今、ネパールは若い労働者がいないという問題に悩んでいるそうです。
第3世界のことですから、実際には若い人たちはいっぱい居るのですが、ネパールでは稼げないからと、ドバイなどの中東諸国に行ったり、日本でインドカレー屋さんをやるために出稼ぎに来ていて、ネパール本国には若い人々が残らないのだそうです。
取引先のラムちゃんも
「ティラキタさん、ネパールも人手不足なんだよ」
「なんで?」
「みんな、海外に行ってしまうんだ」
と事あるごとに言います。
正直、こんな状況の国じゃなぁ…出稼ぎや留学に行っちゃう気持わかるよなぁ…
多くのネパール人にとって、育った国を離れるのは辛いことでしょう。ネパールが日本レベルにちゃんとした国になるためには、出稼ぎに行かなくても良くなる国になるためにはどうしたらいいのか。
やっぱり、国にちゃんとした仕事があるのが一番なんじゃないだろうか。そういう風に考えると、ネパール物を取扱させてもらい、ネパールに雇用を作っている私達、そしてネパール物を購入してお金を回してくださるお客様は、微力ではあるけど、政治家ではない、素朴なネパールの人々の役に立っているのかなぁ…と感じます。