え?ここが農園? – ネパールのコーヒー農園に行って来ました
ティラキタでは、2013年の春先からネパールのコーヒーの輸入を始めました。
輸入の発端は友達のラムさんからの連絡でした。
「ねえ、インドパパ」
「ナマステ、ラムさん。今日はどうしたの?」
「あのね、僕の親戚がコーヒーを始めたんだけど、取り扱って欲しいんだよね。」
「え? ネパールのコーヒー?」
「そう、3年前に植えてやっとこ収穫できるようになったんだ」
ネパールのコーヒーはここ数年、ネパール国内ではブームになっていますが、国際的には全く無名です。ネパールはコーヒーベルトと呼ばれる赤道地帯から離れていますし、コーヒーの栽培にあまり向いていないのではないかと思われるのですが…。しかし今、コーヒーの栽培はネパールの農家の間でちょっとしたブームになっているのだそうです。インドパパの様な外人の耳にも聞こえてくる位ですから、きっとそうに違いありません。
半信半疑だったネパールのコーヒーを実際に輸入してみると、意外にしっかりしたコーヒーでお客様の反応も上々。生豆で輸入できているので、ローストしてすぐに発送出来ます。実際インドパパも毎日飲んでいますが、ちゃんと美味しいコーヒーです。
コーヒーは確かに美味しいのですが、しかし…作ってくれているのは遠いネパール。実際に輸入し、手にとってみても「本当にちゃんとしたコーヒー豆なのか?」とか「実の入りはちゃんとしているのか?」とか「肥料や農薬はどうなっているのか?」との疑問を消すことが出来ませんでした。
お客様の口に入るものですから、自分達で輸入しているものはちゃんと見に行きたいのです。自信を持って販売したいのです。写真を見ても、実際にこの目で見るまでは信用出来ません。と言う事で、実際にネパールのコーヒー農園に行って来ました!!!
ラムさんの親戚のコーヒー畑は首都のカトマンズから40Km離れたところにあります。40Kmは日本では30分程度の道のりですが、山ばかりで道も完全には舗装されていないネパールでは3時間かかります。
朝の10時にカトマンズを出発し、市街地を出ます。8月の雨季でしたが、雨は午前中のうちに上がり、カラッとした気持ちのいい天気でした。ネパールの旅行シーズンは乾季と言われますが、モンスーンの時のネパールもいいものです。
道はこんな感じ。一度は舗装道路として作られていたようですが、舗装が良くないのか、完全にデコボコ道。広さは、車がやっとこ行き違い出来るくらいです。バスの屋根の上に人が乗っているのがネパールらしいですね。
道から見える山々には段々畑が刻まれています。山の中に点々と家があるのが見えます。
近くに目を戻すと、そこにも美しい段々畑が広がっています。日本では消えようとしている段々畑はネパールではまだまだ現役で生き残っています。
カトマンズから2時間ほど走って、小さな集落に到着。コンクリづくりの家が山肌にぴったりと寄り添うようにして立っていました。ここから山の下に歩いていきました。目指すコーヒー畑は標高で400mほど下。ちょっとしたトレッキングです。
ピースをして余裕そうな表情のラムさんと、ディリップさん。一番奥に見えるのが農園を持っている親戚のラックスマンさん。彼は元々、カタールやサウジアラビアに家の塗装工として2年間ほど出稼ぎに出かけていたが、帰国してこの仕事を始めたのだそうです。
ここ10年ほどネパールでは、海外への出稼ぎが一大ブーム。行き先はガルフと呼ばれる中東諸国で、主に建築関係の作業員として働いています。実際、カトマンズの空港に行くと、中東行きの飛行機には真っ黒に日焼けした一目で山の民と分かる若者が行列しているのを見ることができます。 ネパールでは中東諸国への出稼ぎのために若い働き手が減っていて、葬式を出すにも男手がなく禁忌とされている女性までもが死者を運ばなければいけなかったり、道路や水道、電力などの基本的な社会的インフラを作るための人手も足りず、年々、道路が壊れて行ったりする状況が出現しています。
アジアの各国が経済成長を謳歌している中で、海がなく山も険しい不便なネパールは20年前のまま。海外の投資家はもちろん来ませんし、ちゃんとスキルを積める仕事もなかなか無いのが現状です。
インドパパがアジアに旅行に出たのは20歳の時。それから19年が経過して、タイやインドだけでなく、アジア全部が変わりました。アジアは本当に豊かになりました。街は綺麗になり、自転車は車になり、道路は広くなりました。
でもネパールは。ネパールだけは、19年前のあの日のまま。いえ、道が大きくならないまま車だけが増えているので、状況は更に悪くなっているとも言えます。
残念ながらモンスーンの雲でヒマラヤは見えませんでしたが、広大な景色が目の前に広がっています。圧倒される程に美しい大自然。眼の前に広がる世界はただ美しく、描写する言葉を失います。
だいぶ降りた所で、ディリップさんが立ち止まって「これがコーヒーだよ」と言いました。
「え? どれ?」
「どこにもないじゃない」
廻りはただの山の中で、有用な植物などどこにも無さそうです。
「これだよ!」と、指を挿したのが、写真の中でちょっとだけ付いている赤い点の下の木です。雑草だらけで流石に判らないので、赤い点をちょっとつけてみましたが判りますでしょうか?
「え? これがコーヒー?」
「そうだよ、これは去年植えたものだ」
「ほら、あそこにもあるよ」と指差す先はやっぱりただの山の中…全然わからないと思いますので、また赤い点をつけておきましたが、その下にあるのがコーヒーの木なのだそうです。
もっと奥に行くと、だんだんとコーヒーの木が大きく、多くなって来ました。とは言うものの、雑草は生えているし、素人目にはただの山の中と全く区別がつきません。上の写真の中には10本から20本のコーヒーの木が写っていますが、まるで間違い探しのようです。でも、確かにコーヒーの木が植えられて、人間の手で管理されている感じがあります。
ラックスマンさんに話を聞いてみると、今はボウボウに見えるけど、定期的に1年に2-3回草刈りをしているのだそう。山の中は広いので、1回の草刈りに1ヶ月くらいかかり、50人、60人位の村人が総出で働くのだそうです。
また、コーヒーは直射日光が嫌いなので、この農園では、コーヒーの木を守るために元々山の中に生えている木をそのまま使っているのだとの事でした。
そして、これがネパールのコーヒーの実です。8月の初旬は既に一度収穫が終わった後で、木に残っているのは1回めの収穫の時に小さかった実が大きくなった残りなのだとか。それでも、びっしりと実がなっています。実は緑色でつやつやして、いかにも健康そうです。
実際に一個ピッキングして中を開けてみました。中には3つの実が入っていました。実の数は必ずしも3つではなく、2つのものがあったり、4つのものがあったりと様々だそうです。
肥料を作っている所を見せてくれるというので、ラックスマンさんの家におじゃましました。ラックスマンさんの家は昔ながらのネパールの農家です。壁は石造り、家の横には水牛と羊が繋がれていました。家の敷地内では鶏が平飼いされ、大変のどかな雰囲気です。周囲に家は1軒もなく、一番近い家は1Km以上離れているとの事。
肥料づくりはまず、牛小屋から。牛小屋の出口に下に黒いホースが通っているのが見えますでしょうか? これのホースが牛のおしっこをタンクに導いています。ちなみに、右の写真はラックスマンさんの奥さんと子供、そしてお母さんです。
牛小屋から出たおしっこは水色のタンクに貯められて、自然に発酵を初めます。その下の地面には大きな穴が4つ空いていますが、今は一番左が埋まっていますので、3つ開いているように見えます。ここで肥料を作るのに必要なのは牛の糞と草とおしっこだけ。本当に自然のままの農業です。私達が知っているチッソとかリンとかの、いわゆる化学肥料は一切ありません。
肥料を買うにはカトマンズまで2時間かけて車で行かねばならず、近くまで持ってきても600mの標高を持って下らなければいけず。そんな事であれば、お金を使う必要がなく、自分たちで作ることの出来るこの自然のままの有機肥料が一番簡単で安上がりなのです。
今はちょうど新しく肥料を作り始めた所だとの事で、一番左を使って1次発酵中。ある程度、量が減ったら徐々に右に右にと移していき、移す段階で発酵している尿を注ぎ足して行きます。そして4回移動させて行く間に、牛の糞と草とおしっこの混合物は立派な肥料になるのです。
次に、コーヒーを加工する所を見せてくれるというので行ってみました。険しい山の中に加工小屋が立っています。
中に入ってみると、今は季節ではないので道具が片付けられていましたが…この白い布が貼られた枠はコーヒーの皮を剥いて割った豆を乾燥させるためのもの。
この水色のトレイはこの中に熟したコーヒー豆を入れて、コーヒー豆の外側の皮を柔らかくし、加工しやすくするためのものだそうです。
収穫されたコーヒーは、まず水に漬けて浮いて来たものを捨てて選別し、沈んだものだけを加工にまわします。24時間浸して、柔らかくしたあと、一回機械にかけると、2分割され、大体の皮が剥けます。その後いったん、太陽光で乾かし、乾燥したらコーヒー豆の表面に付いている薄皮を機械にかけて取って完成なのだとか。
壁にはコーヒーの作り方のポスターが張ってありました。病害虫の見つけ方、駆除の仕方も書いてありました。じっくりと見てみましたが、ポスターにはどこにも病害虫が出たら消毒しましょうとかそういうことは書いてありません。病害虫が出たら人力で探して駆除し、病気にかかった木を燃やしましょうと書いてあります。
また、コーヒー豆を精製する方法も書いてありました。水で選別し、浸して皮を剥き…写真だけでも判るようにポスターが作られています。ネパールは識字率が大変低いので、この様にひと目で判るようにする必要があります。写真をクリックすると原寸大の大きな写真が開きますので、興味がある方はぜひゆっくりとご覧ください。
生産者のラックスマンさんと、後ろの美しい滝を撮ってみました。美しい自然の中で家族と暮らせるコーヒーの仕事は、危険で家族とも会えない湾岸諸国での仕事よりも全然いいのだとか。収入面でもコーヒーで生計を立てていたほうがよっぽどいいのだそうです。
よく考えたら、コーヒーってネパールにとっては凄い作物かもしれません。社会を変えるインパクトのある作物かもしれません。だって、今まで段々畑を作って無理して米を作るしか方法がなかった人たちが、山の形を変えずに直接海外に輸出することの出来る換金作物を作れるのですから。 美しい自然をそのままに保て、家族と一緒に山で暮らせて、お金も入ってくる。まるで魔法のような話です。ネパールにコーヒーがあれば、自分の所で仕事ができるから、もうドバイに働きに行かなくっても良くなります。
コーヒーを飲む私達の側から見ても、この環境で作られたコーヒー豆はどう考えても絶対に安心。おかしな化学物質の入り込む余地はどこにもありません。政府機関が基準にしたがって認証する「オーガニック認証」よりも何倍も安心できるはずです。
なお現在、ティラキタで輸入しているコーヒーにオーガニック認証がないのは、単純にまだ現地で取得していないからというだけの理由です。現地ではオーガニック認証がなくても売れますし、「認証をとると高く売れる」という発想はまだこのラックスマンさんにはありません。 取ろうと思えばいとも簡単に取れるのですが…きっと、ネパールの山の中で働いている彼にはオーガニック認証なんて必要もなく、なぜ取るのか理解が出来ないのでしょう。
あ、もちろん今回の訪問で「あのね、オーガニック認証とるといいと思うよ。取ると、コーヒーがもっと高く売れるよ。みんな幸せになれるよ」って教えてあげましたけれども。とは言っても本当に彼が取得するのは何年先の話でしょうか?
最後にラックスマンさんの家族とパチリ!
え?なんでインドパパがニワトリを持っているかですって?
インドパパが持っているニワトリは、これからこの家で絞められて夕飯にされるのだそうです。 このニワトリはもちろん平飼いで、全員で追いかけ回してやっとこ捕まえたのですよ。 せっかく捕まえたニワトリが逃げないようにインドパパ、必死で持っています!
電気も、石油も、化学肥料も必要としない農業と生活。山の民。
石油に過度に依存した現代文明が壊れた後も、生き残っているのはもしかしたら彼らなのかもしれませんねぇ。
輸入の発端は友達のラムさんからの連絡でした。
「ねえ、インドパパ」
「ナマステ、ラムさん。今日はどうしたの?」
「あのね、僕の親戚がコーヒーを始めたんだけど、取り扱って欲しいんだよね。」
「え? ネパールのコーヒー?」
「そう、3年前に植えてやっとこ収穫できるようになったんだ」
ネパールのコーヒーはここ数年、ネパール国内ではブームになっていますが、国際的には全く無名です。ネパールはコーヒーベルトと呼ばれる赤道地帯から離れていますし、コーヒーの栽培にあまり向いていないのではないかと思われるのですが…。しかし今、コーヒーの栽培はネパールの農家の間でちょっとしたブームになっているのだそうです。インドパパの様な外人の耳にも聞こえてくる位ですから、きっとそうに違いありません。
半信半疑だったネパールのコーヒーを実際に輸入してみると、意外にしっかりしたコーヒーでお客様の反応も上々。生豆で輸入できているので、ローストしてすぐに発送出来ます。実際インドパパも毎日飲んでいますが、ちゃんと美味しいコーヒーです。
コーヒーは確かに美味しいのですが、しかし…作ってくれているのは遠いネパール。実際に輸入し、手にとってみても「本当にちゃんとしたコーヒー豆なのか?」とか「実の入りはちゃんとしているのか?」とか「肥料や農薬はどうなっているのか?」との疑問を消すことが出来ませんでした。
お客様の口に入るものですから、自分達で輸入しているものはちゃんと見に行きたいのです。自信を持って販売したいのです。写真を見ても、実際にこの目で見るまでは信用出来ません。と言う事で、実際にネパールのコーヒー農園に行って来ました!!!
ラムさんの親戚のコーヒー畑は首都のカトマンズから40Km離れたところにあります。40Kmは日本では30分程度の道のりですが、山ばかりで道も完全には舗装されていないネパールでは3時間かかります。
朝の10時にカトマンズを出発し、市街地を出ます。8月の雨季でしたが、雨は午前中のうちに上がり、カラッとした気持ちのいい天気でした。ネパールの旅行シーズンは乾季と言われますが、モンスーンの時のネパールもいいものです。
道はこんな感じ。一度は舗装道路として作られていたようですが、舗装が良くないのか、完全にデコボコ道。広さは、車がやっとこ行き違い出来るくらいです。バスの屋根の上に人が乗っているのがネパールらしいですね。
道から見える山々には段々畑が刻まれています。山の中に点々と家があるのが見えます。
近くに目を戻すと、そこにも美しい段々畑が広がっています。日本では消えようとしている段々畑はネパールではまだまだ現役で生き残っています。
カトマンズから2時間ほど走って、小さな集落に到着。コンクリづくりの家が山肌にぴったりと寄り添うようにして立っていました。ここから山の下に歩いていきました。目指すコーヒー畑は標高で400mほど下。ちょっとしたトレッキングです。
ピースをして余裕そうな表情のラムさんと、ディリップさん。一番奥に見えるのが農園を持っている親戚のラックスマンさん。彼は元々、カタールやサウジアラビアに家の塗装工として2年間ほど出稼ぎに出かけていたが、帰国してこの仕事を始めたのだそうです。
ここ10年ほどネパールでは、海外への出稼ぎが一大ブーム。行き先はガルフと呼ばれる中東諸国で、主に建築関係の作業員として働いています。実際、カトマンズの空港に行くと、中東行きの飛行機には真っ黒に日焼けした一目で山の民と分かる若者が行列しているのを見ることができます。 ネパールでは中東諸国への出稼ぎのために若い働き手が減っていて、葬式を出すにも男手がなく禁忌とされている女性までもが死者を運ばなければいけなかったり、道路や水道、電力などの基本的な社会的インフラを作るための人手も足りず、年々、道路が壊れて行ったりする状況が出現しています。
アジアの各国が経済成長を謳歌している中で、海がなく山も険しい不便なネパールは20年前のまま。海外の投資家はもちろん来ませんし、ちゃんとスキルを積める仕事もなかなか無いのが現状です。
インドパパがアジアに旅行に出たのは20歳の時。それから19年が経過して、タイやインドだけでなく、アジア全部が変わりました。アジアは本当に豊かになりました。街は綺麗になり、自転車は車になり、道路は広くなりました。
でもネパールは。ネパールだけは、19年前のあの日のまま。いえ、道が大きくならないまま車だけが増えているので、状況は更に悪くなっているとも言えます。
残念ながらモンスーンの雲でヒマラヤは見えませんでしたが、広大な景色が目の前に広がっています。圧倒される程に美しい大自然。眼の前に広がる世界はただ美しく、描写する言葉を失います。
だいぶ降りた所で、ディリップさんが立ち止まって「これがコーヒーだよ」と言いました。
「え? どれ?」
「どこにもないじゃない」
廻りはただの山の中で、有用な植物などどこにも無さそうです。
「これだよ!」と、指を挿したのが、写真の中でちょっとだけ付いている赤い点の下の木です。雑草だらけで流石に判らないので、赤い点をちょっとつけてみましたが判りますでしょうか?
「え? これがコーヒー?」
「そうだよ、これは去年植えたものだ」
「ほら、あそこにもあるよ」と指差す先はやっぱりただの山の中…全然わからないと思いますので、また赤い点をつけておきましたが、その下にあるのがコーヒーの木なのだそうです。
もっと奥に行くと、だんだんとコーヒーの木が大きく、多くなって来ました。とは言うものの、雑草は生えているし、素人目にはただの山の中と全く区別がつきません。上の写真の中には10本から20本のコーヒーの木が写っていますが、まるで間違い探しのようです。でも、確かにコーヒーの木が植えられて、人間の手で管理されている感じがあります。
ラックスマンさんに話を聞いてみると、今はボウボウに見えるけど、定期的に1年に2-3回草刈りをしているのだそう。山の中は広いので、1回の草刈りに1ヶ月くらいかかり、50人、60人位の村人が総出で働くのだそうです。
また、コーヒーは直射日光が嫌いなので、この農園では、コーヒーの木を守るために元々山の中に生えている木をそのまま使っているのだとの事でした。
そして、これがネパールのコーヒーの実です。8月の初旬は既に一度収穫が終わった後で、木に残っているのは1回めの収穫の時に小さかった実が大きくなった残りなのだとか。それでも、びっしりと実がなっています。実は緑色でつやつやして、いかにも健康そうです。
実際に一個ピッキングして中を開けてみました。中には3つの実が入っていました。実の数は必ずしも3つではなく、2つのものがあったり、4つのものがあったりと様々だそうです。
肥料を作っている所を見せてくれるというので、ラックスマンさんの家におじゃましました。ラックスマンさんの家は昔ながらのネパールの農家です。壁は石造り、家の横には水牛と羊が繋がれていました。家の敷地内では鶏が平飼いされ、大変のどかな雰囲気です。周囲に家は1軒もなく、一番近い家は1Km以上離れているとの事。
肥料づくりはまず、牛小屋から。牛小屋の出口に下に黒いホースが通っているのが見えますでしょうか? これのホースが牛のおしっこをタンクに導いています。ちなみに、右の写真はラックスマンさんの奥さんと子供、そしてお母さんです。
牛小屋から出たおしっこは水色のタンクに貯められて、自然に発酵を初めます。その下の地面には大きな穴が4つ空いていますが、今は一番左が埋まっていますので、3つ開いているように見えます。ここで肥料を作るのに必要なのは牛の糞と草とおしっこだけ。本当に自然のままの農業です。私達が知っているチッソとかリンとかの、いわゆる化学肥料は一切ありません。
肥料を買うにはカトマンズまで2時間かけて車で行かねばならず、近くまで持ってきても600mの標高を持って下らなければいけず。そんな事であれば、お金を使う必要がなく、自分たちで作ることの出来るこの自然のままの有機肥料が一番簡単で安上がりなのです。
今はちょうど新しく肥料を作り始めた所だとの事で、一番左を使って1次発酵中。ある程度、量が減ったら徐々に右に右にと移していき、移す段階で発酵している尿を注ぎ足して行きます。そして4回移動させて行く間に、牛の糞と草とおしっこの混合物は立派な肥料になるのです。
次に、コーヒーを加工する所を見せてくれるというので行ってみました。険しい山の中に加工小屋が立っています。
中に入ってみると、今は季節ではないので道具が片付けられていましたが…この白い布が貼られた枠はコーヒーの皮を剥いて割った豆を乾燥させるためのもの。
この水色のトレイはこの中に熟したコーヒー豆を入れて、コーヒー豆の外側の皮を柔らかくし、加工しやすくするためのものだそうです。
収穫されたコーヒーは、まず水に漬けて浮いて来たものを捨てて選別し、沈んだものだけを加工にまわします。24時間浸して、柔らかくしたあと、一回機械にかけると、2分割され、大体の皮が剥けます。その後いったん、太陽光で乾かし、乾燥したらコーヒー豆の表面に付いている薄皮を機械にかけて取って完成なのだとか。
壁にはコーヒーの作り方のポスターが張ってありました。病害虫の見つけ方、駆除の仕方も書いてありました。じっくりと見てみましたが、ポスターにはどこにも病害虫が出たら消毒しましょうとかそういうことは書いてありません。病害虫が出たら人力で探して駆除し、病気にかかった木を燃やしましょうと書いてあります。
また、コーヒー豆を精製する方法も書いてありました。水で選別し、浸して皮を剥き…写真だけでも判るようにポスターが作られています。ネパールは識字率が大変低いので、この様にひと目で判るようにする必要があります。写真をクリックすると原寸大の大きな写真が開きますので、興味がある方はぜひゆっくりとご覧ください。
生産者のラックスマンさんと、後ろの美しい滝を撮ってみました。美しい自然の中で家族と暮らせるコーヒーの仕事は、危険で家族とも会えない湾岸諸国での仕事よりも全然いいのだとか。収入面でもコーヒーで生計を立てていたほうがよっぽどいいのだそうです。
よく考えたら、コーヒーってネパールにとっては凄い作物かもしれません。社会を変えるインパクトのある作物かもしれません。だって、今まで段々畑を作って無理して米を作るしか方法がなかった人たちが、山の形を変えずに直接海外に輸出することの出来る換金作物を作れるのですから。 美しい自然をそのままに保て、家族と一緒に山で暮らせて、お金も入ってくる。まるで魔法のような話です。ネパールにコーヒーがあれば、自分の所で仕事ができるから、もうドバイに働きに行かなくっても良くなります。
コーヒーを飲む私達の側から見ても、この環境で作られたコーヒー豆はどう考えても絶対に安心。おかしな化学物質の入り込む余地はどこにもありません。政府機関が基準にしたがって認証する「オーガニック認証」よりも何倍も安心できるはずです。
なお現在、ティラキタで輸入しているコーヒーにオーガニック認証がないのは、単純にまだ現地で取得していないからというだけの理由です。現地ではオーガニック認証がなくても売れますし、「認証をとると高く売れる」という発想はまだこのラックスマンさんにはありません。 取ろうと思えばいとも簡単に取れるのですが…きっと、ネパールの山の中で働いている彼にはオーガニック認証なんて必要もなく、なぜ取るのか理解が出来ないのでしょう。
あ、もちろん今回の訪問で「あのね、オーガニック認証とるといいと思うよ。取ると、コーヒーがもっと高く売れるよ。みんな幸せになれるよ」って教えてあげましたけれども。とは言っても本当に彼が取得するのは何年先の話でしょうか?
最後にラックスマンさんの家族とパチリ!
え?なんでインドパパがニワトリを持っているかですって?
インドパパが持っているニワトリは、これからこの家で絞められて夕飯にされるのだそうです。 このニワトリはもちろん平飼いで、全員で追いかけ回してやっとこ捕まえたのですよ。 せっかく捕まえたニワトリが逃げないようにインドパパ、必死で持っています!
電気も、石油も、化学肥料も必要としない農業と生活。山の民。
石油に過度に依存した現代文明が壊れた後も、生き残っているのはもしかしたら彼らなのかもしれませんねぇ。
おもしろかったです
10月にネパールに行くので
どっかでコーヒー園探してみます
現地のオーガニック屋さんではコーヒー豆が高かった記憶があります
コーヒー園は山の中なので、幾ら探しても自力では絶対に見つかりません。でも現地の人に聞けば、見つかると思います。
ネパールのコーヒーはこんな感じで作られていまして、生産量が少ないのと、NGOやボランティア団体がほぼ全量を先進国に持っていきますので、コーヒー豆としてはありえないほど高いのです。価格はニューヨークオークション価格の10倍以上にもなります。
現地に行っても、つてがないとなかなか簡単には手に入りません。現地のオーガニック屋さんで諦めるのが無難かもしれませんが…あ、うちより高い値段で売っているお店もいっぱいありますので、気をつけてくださいね。
オーガニック認証を取るにはお金がかかったり色々大変だと思います。
こうしてオーガニックであるとわかればいいんじゃないのかなぁなんて思うのですが、どうかな。
コーヒー飲みたいと思いました、注文します。
ありがとうございます
向こうの友人に聞いてみます
10月はガチの山登りですが
11月はテキトーにほっつき歩くんで
コーヒー園訪問も楽しそうです
ってかNGOやボランティア団体が先進国に持っていくと
なんで高くなるんでしょーかねー?
事務経費が高すぎるんだろか?(笑)
地元のスタバ風のお店で何度か飲んだことはあります
宮っち様、書き込み、ありがとうございます。確かに仰られる通り、オーガニック認証がなくってもいいのでは…と思いますが、やはり、第3者に評価してもらうっていうのが重要なのかなって思います。より正確に、信頼性が高まりますものね。
NGOやボランティア団体は企業よりか高く売れるからだと思います。ネパールのボランティアのコーヒーだって言えば、高く売れるじゃないですか。だから、生産者から高く買っても問題ないのですよね。まだまだ、ネパールのコーヒーは発展段階。市場の原理が働いていない状態です。だから高いのですよね。今後、ネパールから普通にコーヒーが出てくるようになると、国際価格に近くなると思いますよ。
輸入の際のポストハーベスト等の対応はどうなっているのでしょうか?
こちらのコーヒー豆は一切ポストハーベスト農薬を使用しておりません。ポストハーベスト農薬が必要なのは、船便で到着までに一ヶ月程度、時間がかかる間にカビが発生するからでして、航空便の場合は数日で到着しますので、ポストハーベスト農薬の必要がないのがその理由です。
うわぁ?なんかすごく飲みたくなります!
こんな理想的なコーヒー園があったんですね。
外資におされなければいいんですが…
ところで、ネパールのおばあさん、ヘソ出しでセクシーですね。
日本ももっとこうあるべきだと思いました。
家で扱いたいです。麻袋1袋の価格を教えて下さい。生豆
瀬田様、ご連絡、ありがとうございました。こちらコメントを頂戴していることに今、気が付きました。申し訳ありません。
ネパールのコーヒー豆ですが、基本的にはフェアトレード商品でして、ネパールで生産される全量がNPO等のフェアトレード商品として買い上げられますので、通常のコーヒー豆の3倍から4倍のお値段になるかと思います。
詳しくはメールにてご連絡させていただきますね。
素晴らしい農業を感じさせてもらいました。良い報告書ですね。コーヒーを買うきになりました。ありがとうございます。