インドが世界を変える! 12億人が目標の生体認証

近年、インドの経済成長は目覚しいものがあります。インドパパが買い付けにインドに行くと、ピカピカな新しい車の数が増え、牛やオートリクシャの数が減り、高速道路が伸び、まるで昨年までとは違う国のような錯覚さえ覚えます。

しかし経済成長の恩恵を受けているのは一握りだけで、街の外に住んでいるかつての不可触賤民の人々や、農村地帯の貧しい人たちには関係のない話です。インド政府は、何年も前から貧困層に大しての援助を拡大していますが、実際にそういう人の元に援助が届いているかというと、そんな事はありません。

公共工事を発注しても実際に雇用した人夫の数よりも多く申告する、いわゆるゴーストレイバー問題があり、援助金の多くは地元の有力者などに吸われて行ってしまっています。貧困者に日々の食料を援助する制作も、途中で転売されたりして決してうまく行っている訳ではありません。

「一人一人にきちんと援助を行き渡らせる」今のインドではこの基本的なことが出来ていません。インドの貧困層は僕たちが持っているような運転免許証はもちろん、人によっては住民登録がされていない場合もあります。田舎に行けば文盲の人も多く、ムラの中でみんなが同じ名前を持っていて…なんていう状況もザラ。

そんな人達はもちろん、銀行口座も作れません。新しく事業を起こしたくても、家を建てたくても、お金を借りることができません。いわば、僕たちが空気のように思っている現代社会のサービスを一切受けられないのです。

その状況を改善するためにインドが今、全力で取り組んでいるのがユニーク・アイデンティティ・スキーム、通称UIDです。日本でも議論になっている国民総背番号制のインド版で、文盲の人も多いインドの国民総背番号制は、眼の奥にある虹彩と、指紋で管理します。街に設置されたUID登録センターに行くと、両目式の虹彩スキャナーで目をスキャンされ、指紋もスキャンされるのだそう。

個人情報保護にうるさい日本人から見ると、いろいろな方面から文句が来そうですが、文字を読める人も、読めない人も、すべての住民に平たく同じサービスを提供する観点からその方式が採用されたのでしょう。

議論ばかりしててなんでも上手く行かないインドの事。UIDをはじめる時、多くの人たちがうまくいくとは信じていませんでした。「今回もいつもと同じように失敗するさ」それが多くの人の見方でした。しかし、開始から1年も経たないうちに2億万人もの人たちが登録を完了したのです。かつてのインドを知る人からすると、信じられないほどの大成功です。インドパパだって、正直、インドがそんなにうまく物事を運ぶだなんて信じられません。

インド版のUIDは、特に今まで社会的サービスをきちんと受けられなかった貧困層の人たちからの支持が強いのですが、貧困層でなくても、いろいろな人達が登録に行っています。ムンバイのネハちゃんに聞いてみたら「私と息子は登録したわよ。目と指をスキャンしたわ。でも、旦那はまだね…」という返事が帰って来ました。どうやら、いくら信じられなくてもインドで起こっていることは本当のようです。

インド版UIDによって全員がきちんと登録されると、工事の時に居ない人を水増しするようなゴーストレイバー問題や、きちんと援助物資が届かない問題などを無くすことが出来るのではないかと期待されています。

そして、このインド版UIDの特筆すべき点は、政府関係者だけでなく、民間の企業もデータベースにアクセスできるようにした事。民間の企業が容易に個人を判別することが出来るようになったわけで、これによって、今まで銀行の口座を開設することが出来なかった人が出来るようになったり、携帯電話を持つことが出来るようになったりします。

世界から見放されてきた貧困層の人たちが現代社会と繋がることが出来るインド版UID。
大きく社会を変える可能性がある、インドで進んでいる壮大な実験です。

数年後、インドはどの様な世界に変わっているのでしょうか?
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