死体が野ざらしに!? インドネシアの風葬の村
世界にはいろいろな葬送の方法があります。一番ポピュラーなのは、もちろん火葬。火葬は世界で最も一般的な葬送の方法で、インドでは火葬した後にその灰をガンジス河に流し、輪廻からの解脱を祈ります。
その次にポピュラーなのが土に埋める土葬。日本でも戦前は多くが土葬だったと聞きます。珍しい所ではチベットの鳥葬があります。チベットでは誰かが亡くなると、遺体を鳥が食べやすいように細切れにし、野外に置いておきます。それを鳥が食べて死体を処理します。イランのゾロアスター教も沈黙の塔と言う建物を作り、鳥葬することで知られています。ちなみに日本では、刑法190条の死体損壊罪に反するので出来ないそうですが。
葬儀の方法は色々あるにせよ、そのどれもが遺体をできるだけ素早く片付けると言う目的の下に行われていて、結果として伝染病の予防や腐敗した死体が散乱するのを防いでいます。すなわち「地域の事情に応じて、できるだけすみやかに遺体を片付ける」ことが重要なのですね。
しかし、インドネシアには「死体はすみやかに片付けなければいけない」と言う常識を覆す様な葬送の方法があるのだそう。バリ島中部のその村では死体をそのまま野ざらしにし、徐々に腐っていくに任せ、骸骨になるまで置いていく、風葬と言う葬儀の方法を取るのだとか。
「ゾンビにならないの?」
「病気が伝染ったりないの?」
「そもそも、死体がそのままあるって怖くない?」
「そんな所、行くの嫌だ!!」
と言う臆病なティラキタスタッフを引き連れて、インドパパが早速行ってみました!
風葬の村はバリ島中部にある活火山バトゥール山が作ったカルデラ湖、バトゥール湖のほとりにありました。バトゥール湖に行くにはバリの中心部クタから車で4時間ほどかかります。地図で見るバリ島は小さいですが、実際に走ってみると結構広いのです。
観光地のクタを出発し、デンパサールを抜け、ギャニャールを抜け、バリ特有のライステラスを抜け、車はどんどん進みます。途中から山道にさしかかり、周りは田舎道に変わりました。バトゥール湖のほとりからはボートで向かいます。
「道はないの?」と聞くと、「風葬の村と、お墓は道で繋がっていないんだよ」との事。
程なくして、ボートは墓地に近づきました。墓地は湖のほとりにあり、鬱蒼とした森に囲まれています。確かに風葬の村と、お墓は道で繋がっていません。きっとそれは伝染病や死者の汚れを隔離するという意味合いがあるのでしょう。
これが墓地の入り口です。もうちょっと派手な入り口なのかなと勝手に想像していたので、あまりのシンプルさにちょっと拍子抜けしました。
入口の横にはわらで作られ、お面をかぶった人形が飾ってありました。
墓地の中に入ってみると、いきなり骸骨がたくさん! 今までこんなに多くの骸骨を見たことがなかったのでビックリですが、その場に慣れてみるとそんなに違和感を感じません。人間は死ねば骨になるのだから、日本みたいに骨を直接見る機会があまりないと言うのが逆に不思議に思えてきます。
20m程奥に行くと、死者が眠っている場所がありました。死者は鳥などについばまれないように、竹かごで覆われています。眠っている死者の数は8体ほど。手前が新しく、奥に行くほど古いのだそうです。
近づいてみます。確かに、かごの中には死者が眠っています。死者は、僕達が想像するよりもはるかに綺麗な状態で、ただ眠っているような感じで地面に横たわっていました。顔色は悪いけど、生きていた時のまま、眠っているのです。足のあたりには軽く土がかけられていますが、土葬されている感じではありません。
もっと近づいてみました。何と言うか、エジプトのミイラのようでした。特に死臭がするとか、臭いわけではありませんでした。
「ねえ、ボク、こんな葬儀がいいなぁ」と誰かが言います
「どうして?」と聞くと、
「だって、愛している人がほんとうに死んだか、毎日確認できるじゃない」
たしかにそうかもしれません。亡くなってからすぐに火葬してしまうと、亡くなったという実感が乏しい気がします。でも風葬であれば、亡くなってから骸骨になるまでずっと見守り続けることが出来ます。その間に、ゆっくりと死を受け入れることができます。
別に火葬が悪いわけではないけど、愛している人が死んだ時、亡くなったからといってすぐに火葬してしまうのは残された遺族にとって残酷な気がします。もっと愛する人の死を受け入れる時間があると良いのではないかなぁ…なんて風葬の村を訪ねて思いました。
この記事はとても為になったし、風葬の是非はおいといて。
死体が腐乱していけば、見た目もグロいと思います。
それよりも、匂いがないなんて、ありえないと思うのですが。
コメント、ありがとうございました!!
腐乱とは言いますが、服を着ていますので、特にグロい部分が見えるわけではありません。また、現地は高地で湿気が少ないので、乾燥して行く感じです。
だからだと思うのですが、匂いがないのですね。
囲ってあるところが、いい感じです。日本にも風葬の歴史が有ったそうです。
山や川原に敷物を敷いて、野ざらしだったそうです。
その朽ち果てて行く様を九相図(腐敗の過程を9枚の絵で)で描いた仏教画が有ります。
亡くなった人を数か月にわたり、毎日確認・・なんて絶対に無理ですよ!!
よろしければ、九相図 で検索してください。
たぶん現地人はその辺も理解していると思います。
遺体の確認は死後何日まで・・後は数か月後にすると思います。
バリ島はホント奥深いですね。
「竹で覆屋を作る」ところに衝撃を受けました。
なぜならこれは古代の日本でも行われていた葬礼だったからです。
「虎落笛」という俳句の冬の季語があります。
読み方は「もがりふえ」で、竹垣の隙間を北風が吹き抜抜けて、笛の様にな鳴る現象です。
一方「もがり」は「殯」で、皇室で行われていたように「遺体を殯宮に安置して毎日詣でる」という
行為を指します。
この「もがり」、今でもかすかに樺太や与論島に残る風習だと、壁を割った竹を立ててつくり、その上に屋根を乗せます。
その姿は屋根こそ違いますが、このバリの風習とそっくりです。
つまり「虎落笛」はこの風葬の竹の覆屋を吹き抜ける風の音であった可能性があるのです。
この風習のルーツの1つが古代の日本に伝わっものと思います。