バリで伝説のサル酒を飲んでみた!
世界にはいろいろな種類のお酒があります。ビールやウィスキー、ワインにシャンパン。それらの多くはきちんと工場で作られ、醸造され、ボトルに詰められて販売されている、いわゆる工業製品です。
普通に日本で暮らしていると、そういった工業製品しか目にしません。自家製のお酒ってめったにありません。お酒は本来は限られた工場で作られるものでなく、置いておくと勝手にできてしまう大変簡単なもののはずですが、税金を取る都合や衛生上の都合とかが邪魔をして、自宅でお酒を作るという発想すらボクたちにはありません。
ヤシの実が落ちて勝手に発酵したものを飲んだのが、人類がお酒を知るきっかけになったという説があります。ヤシの実が風に吹かれて落ち、ジャングルの中で自然に乳酸発酵してアルコールができ、お酒になった物をたまたま飲んでしまった。人間だけでなく、森の中にはもちろんサルもいて、サルが味を覚えて酔っ払ってしまったことからサル酒と言われるようになったという話です。
このサル酒の話。暑い地域を旅行をしているとたまに耳にします。インドのバラナシに滞在していて、久美子ハウスの女主人と話していた時のことです。
「ガンジス川の対岸にサル酒がある知ってる?」と、クミコさんが言いました。初めて聞く名前だったので何かと尋ねてみると、「ヤシの実が勝手に発酵しちゃったモノよ。昔、旅行者が行って買ってきたことがあるけど…それっきり見たことがないわねぇ」
ガンジス河の対岸って言っても広すぎます。サル酒は飲んでみたくっても、そんな雲をつかむような話、実際に確かめてみる訳にはいきません。結局、その話は忘れてしまいました。
15年後のある日のことです。バリ島でアタの籠の原産地の訪問を終えて、ホテルに帰る途中でした。車の中からと外を見ていた時…道端でなにか変なボトルを売っています。
「あれ何!?」と聞くと「あれはね、ヤシのお酒だよ!」との事。その時、ふとバラナシの会話が思い浮かび「というとサル酒!! 欲しい! 飲みたい!」と即座に叫びました。
問題のサル酒は道端の小さなお店で売っていました。お店はいかにも現地の人向けで、私達外国人が興味を惹くような感じではありません。お店の中にはタバコや日用品がちょっとだけ売られています。いわゆる地元の商店です。
商店の前にはサル酒の原料のココナッツが置いてありました。まだ緑色のものを木から切り落として持ってきています。サル酒の伝説では自然に落ちたココナッツからできるとの事なので、ちょっと話が違いますが、それは原料の確保上、仕方のないことなのでしょう。
ココナッツの横にサル酒の入ったペットボトルと発酵用のプラスチックの大きな容器がありました。青い色の容器の中に半分ほどサル酒が入っています。容器のフタを開けると独特の発酵臭がします。
せっかく発見したのだから「ちょっと不衛生そうに見えても飲んでみなきゃ!」と言う事で、僕達もサル酒を分けてもらって試飲です。アルコール度数は2から3%位。ココナッツジュースみたいですが、きちんとアルコールが入っています。乳酸発酵をしているらしく、舌先が軽くピリピリします。アルコール発酵する菌の他にいろいろな雑菌が入っているらしく、硫黄の匂いや、その他のいろいろな雑味が混じっています。
これは確かにお酒ですが、僕達がいつも飲んでいるお酒とは全く違い、雑味がいっぱい含まれ、発酵もきちんとされていないものでした。
同じテーブルにいた現地の人に「ねえ、これ美味しい?」と聞くと、ほっぺを赤くし、楽しそうに「もちろんさ! 最高にうまいよ!」と言っていました。仲のよさそうな二人。仕事終わりの晩酌と見えてとっても楽しそうです。
僕達にとっては雑味のある硫黄臭のする未完成のお酒ですが、彼らにとってはいつも飲んでいる慣れ親しんだ味。所変われば、価値観も、そして味覚も大きく変わります。
でも、お酒の始まりの姿というのはきっとこんなものなのでしょう。雑味をなくしたり、アルコール度数を高めたり、人間が知恵を絞って色々工夫することによって、今のお酒が出来上がったのでしょうね。
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