アジア・インド雑貨屋さんのジレンマ
最近、インドからとっても素敵な商品が入荷しました。入荷したのは民族刺繍の入っているバッグやポーチなどで、インド西部のカッチ地方の人たちの作品です。
このポーチに使われている布地は大変素敵で、無地の生地を装飾するために女性たちが一針一針作ったもの。遠い昔から親から子へと伝えられてきた伝統の刺繍で、作った人の手のぬくもりを感じることができる、作り手の手触りまで伝わる、素晴らしい逸品です。上質の布地だと、女の子が生まれたときに、花嫁衣裳に使うからと言って10年もかけて作られます。
インドでこの布地を見た瞬間、布に恋してしまい、惚れて譲ってもらった、インドパパにとっても思い入れのある一品です。
でも、いざ商品を出してみると…しばしば返品が発生してしまいました。
「細かいほつれがあります」
「色あせがあります」
などと言った、問題を指摘されてしまいました。
正直、そうかもしれません。
一目惚れしてしまうほど布は素敵だけど、全く完璧な商品ではないのですから。
日本のコンビニやデパートなどの基準で言えば絶対に問題のある商品なのです。100個バッグがあるとして、日本のコンビニやデパートなどの基準を適用したら、一個もOKが出る商品はないかもしれません。
お客様が感じられる事はその通りです。ホツレや色あせは問題だし、きちんとそれを解決するのが僕達の仕事です。きちんとすること。いつもそれが何よりも大切だと思っています。
でも…そもそも、それを作っている人たちは完璧な商品を作れません。僕達の身の周りにある様な、いい商品を見たことがない、ということもあります。家族のために作っている布だからという事もあります。また、毎日使っている古布をリサイクルしているのだからという部分もあります。
実は、ここだけの話、品質問題を解決するために、ある大手の雑貨屋さんは「日本でエスニック風にデザインした物を、中国の工場に作らせる」という事をやっています。
そのエスニック屋さんに行って「カワイイ!」と思うものは、実は、日本人が「日本人だったらこんなのが好きだよね」と言って、エスニック風にデザインしているからカワイイのです。中国の物価はインドの半分以下だし、しかも、中国人のほうがクオリティがいいものを作れるから、ビジネス的には中国でなんでも作るのが正解なのです。
でも「それって、なんだか違うんじゃないかなぁ」と感じます。クオリティがいいものはできるけど、大切な魂が抜けている感じなのではないかなと思うのです。ただ、可愛くって、クオリティが良ければいいのかなぁ…って凄く思うのです。
インド雑貨屋である僕達は雑貨を売るだけでなく「違う価値観を紹介すること」、「世界は広いんだよ」と言う事を発信することが大切な仕事だと思っています。多くの人達が同じ方向を向いて同じ意見を言い、どこか閉塞感がある時に、「違う世界もあるんだよ」、「常識が通用しない不思議な世界もあるんだよ」ってヒントを出すのが僕達の仕事だと信じています。
違う文化を紹介することと、いい商品を提供すること。
僕達はどっちもやりたいのです。
でも、なかなか上手くいかなくって、この相反するジレンマにいつも悩んで、しばしば凹んでしまいます。
と思っていた矢先、写真付きで長年の付き合いがあるムンバイの友達からメールが届きました。いつもお世話になっている人の家族の出身がなんとカッチなのだとか。「うちでカッチの物を扱い始めたよ」というと、「地元のものを売ってくれてありがとう」と言うのです。

ただのトライバル、ただの民族衣装だと思っていたのに、実はすごく身近なものだったなんて。
友達のおばあちゃんや親戚達が作っているものを販売させてもらってるんだって。
その時も凹んでいたのだけど、なんだか凄く嬉しくなりました。
地球は広いようでいて、凄く狭くて。
好きでやっていたことが、実はこんなにも密接に関係しているんだって改めて気がついたのです。
僕達がやらせてもらっている仕事はただ単純に商品を売るのではなく、商品を通じて日本とインド、アジアの橋渡し役になると言う事なんだって、改めて気がつきました。
ティラキタをはじめて10年。今までも、これからも。
インドとアジアの風を日本に伝える存在になれればと願いながら仕事していこうと思っています。
今までと同じように、できるだけクオリティの良い商品を取り揃えるように努力はしますが、現地の事情などで難しいものについては作られた背景などもきちんと説明し、できるだけ本物を紹介し続けたいと思っています。
いつも有難うございます。
これからも、ぜひ、よろしくお願いいたします。
このポーチに使われている布地は大変素敵で、無地の生地を装飾するために女性たちが一針一針作ったもの。遠い昔から親から子へと伝えられてきた伝統の刺繍で、作った人の手のぬくもりを感じることができる、作り手の手触りまで伝わる、素晴らしい逸品です。上質の布地だと、女の子が生まれたときに、花嫁衣裳に使うからと言って10年もかけて作られます。
でも、いざ商品を出してみると…しばしば返品が発生してしまいました。
「細かいほつれがあります」
「色あせがあります」
などと言った、問題を指摘されてしまいました。
正直、そうかもしれません。
一目惚れしてしまうほど布は素敵だけど、全く完璧な商品ではないのですから。
日本のコンビニやデパートなどの基準で言えば絶対に問題のある商品なのです。100個バッグがあるとして、日本のコンビニやデパートなどの基準を適用したら、一個もOKが出る商品はないかもしれません。
お客様が感じられる事はその通りです。ホツレや色あせは問題だし、きちんとそれを解決するのが僕達の仕事です。きちんとすること。いつもそれが何よりも大切だと思っています。
でも…そもそも、それを作っている人たちは完璧な商品を作れません。僕達の身の周りにある様な、いい商品を見たことがない、ということもあります。家族のために作っている布だからという事もあります。また、毎日使っている古布をリサイクルしているのだからという部分もあります。
実は、ここだけの話、品質問題を解決するために、ある大手の雑貨屋さんは「日本でエスニック風にデザインした物を、中国の工場に作らせる」という事をやっています。
そのエスニック屋さんに行って「カワイイ!」と思うものは、実は、日本人が「日本人だったらこんなのが好きだよね」と言って、エスニック風にデザインしているからカワイイのです。中国の物価はインドの半分以下だし、しかも、中国人のほうがクオリティがいいものを作れるから、ビジネス的には中国でなんでも作るのが正解なのです。
でも「それって、なんだか違うんじゃないかなぁ」と感じます。クオリティがいいものはできるけど、大切な魂が抜けている感じなのではないかなと思うのです。ただ、可愛くって、クオリティが良ければいいのかなぁ…って凄く思うのです。
インド雑貨屋である僕達は雑貨を売るだけでなく「違う価値観を紹介すること」、「世界は広いんだよ」と言う事を発信することが大切な仕事だと思っています。多くの人達が同じ方向を向いて同じ意見を言い、どこか閉塞感がある時に、「違う世界もあるんだよ」、「常識が通用しない不思議な世界もあるんだよ」ってヒントを出すのが僕達の仕事だと信じています。
違う文化を紹介することと、いい商品を提供すること。
僕達はどっちもやりたいのです。
でも、なかなか上手くいかなくって、この相反するジレンマにいつも悩んで、しばしば凹んでしまいます。
と思っていた矢先、写真付きで長年の付き合いがあるムンバイの友達からメールが届きました。いつもお世話になっている人の家族の出身がなんとカッチなのだとか。「うちでカッチの物を扱い始めたよ」というと、「地元のものを売ってくれてありがとう」と言うのです。

ただのトライバル、ただの民族衣装だと思っていたのに、実はすごく身近なものだったなんて。
友達のおばあちゃんや親戚達が作っているものを販売させてもらってるんだって。
その時も凹んでいたのだけど、なんだか凄く嬉しくなりました。
地球は広いようでいて、凄く狭くて。
好きでやっていたことが、実はこんなにも密接に関係しているんだって改めて気がついたのです。
僕達がやらせてもらっている仕事はただ単純に商品を売るのではなく、商品を通じて日本とインド、アジアの橋渡し役になると言う事なんだって、改めて気がつきました。
ティラキタをはじめて10年。今までも、これからも。
インドとアジアの風を日本に伝える存在になれればと願いながら仕事していこうと思っています。
今までと同じように、できるだけクオリティの良い商品を取り揃えるように努力はしますが、現地の事情などで難しいものについては作られた背景などもきちんと説明し、できるだけ本物を紹介し続けたいと思っています。
いつも有難うございます。
これからも、ぜひ、よろしくお願いいたします。
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