騙しの手口 最新版!!
デリー、ジャイプール、アグラはインドの魔の黄金三角と呼ばれ、デリー、コルカタを結ぶ魔の黄金街道と並んで人が悪いことで有名である。インドで騙されたり大金を巻き上げられたり酷い目にあった話の9割以上がこれらエリアで発生していると言っても過言ではないだろう。昔から多くの観光客が訪れているだけに、インド中の悪者がここに集まり、てぐすねを引いて獲物を狙っているのではないかと思うほどだ。
その話は今や世界中に広まって、どのガイドブックにも彼らの手口が事細かに説明されている。それでも騙される人が絶えないのはインド人の根っからの押しの強さと話の強引さもあるのだろうけれど、それだけではなく彼らも着々と新しい手口を考えているからだ。
ローカルバスでデリーに到着した時、地下鉄を使って移動をしようと歩いていると親切そうなインド人がにこやかに話しかけてきた。
![]() いい人でもなんとなく妖しく 見えるインド人… |
「やあ、元気かい?どこに行くんだいマイフレンド?」
「ニューデリー駅に行きたいんだけど地下鉄の駅はどこ?」
そう答えると彼は申し訳なさそうな顔をして
「マイフレンド、今日は大きな国際試合があるから地下鉄は運行していないんだ。よかったら俺のリキシャに乗っていかないか?」
新しい。テロや暴動が起きていて云々という騙し方は有名だけれど国際試合と来るとは思わなかった。平和でよろしいけれど地下鉄が混雑こそすれ運行しない理由はない。そんな日に運休したらただでさえ致命的に混みあっているデリーの交通はどうなってしまうのだ?
笑ってさよならして人の波に乗って歩いていくと、もちろんデリー地下鉄は通常運行である。
そして数日後にジャイプールにたどり着き、ふらりと散歩している時のことだった。ちょうどあごひげを長く伸ばしていてちょこちょこお褒めをいただいていたので(インド人は結構ひげが好きなようで伸ばしてるとよく話題にされる)、そのリキシャワーラーのおっちゃんが話しかけてきた時もそんな一人かと思った。だが、彼は私のひげをじっと見て、
「素晴らしいひげだジャパニ。ぜひそのひげを使ってカーペットを作りたいのだが…。」
「はぁ!?ひげでいったいどうやって?」
髪の毛でカツラとかいうレベルではない。どこをどうやったらそんなことができるんだ?そう問いただすと彼は神妙な面持ちで
「そうだな、あまり一般的ではないからな。でも俺の友達がそれをやっているんだ。だから一緒にその友達のカーペット屋まで来てくれればちゃんと説明をするよ!さあ、乗ってくれジャパニ。」
うまい!村上春樹の短編小説に、あしかの首を折りに行こうと言って女の子を口説く話があったけれど、それを髣髴とさせる見事な物語展開である。話のオチを聞いてみたい気持ちでいっぱいではあったけど、もしカーペット屋までついて行ったらそんな話は一瞬で忘れ去られてひたすらカーペットを買うように説得され続けることが明らかであったのでひとしきり大爆笑した後に別れて晩ご飯を食べに行った。
こうした新ネタがずっと生き残るものなのか、それとも繰り返される実験の一つに過ぎず、ほとんどが日々の濁流の中に跡形もなく消えていく類のものなのかは分からない。でもこうしたやり取りを笑ってやり過ごせるようになったとき、インドに対する愛着も一段と大きくなるのだろう。もちろん一歩退いた警戒心といざというときの逃げ足の速さも忘れてはいけないけれど。
日本での7年のDJ活動の後、世界各地でプレイするべく2007年から旅を始める。オーストラリア、東南アジアを経て現在インド亜大陸へ。活動はDJだけに留まらず、音楽イベントの開催、「Thanatotherapy」名義にて楽曲作成なども行う。
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