素敵な金属ベルの工房を探してーインド・カッチ地方
■金属ベルの工房を探して
インドには様々な素敵なハンディクラフトがありますが、その中の一つに、手作りの素敵な銅製のハンギングベルがあります。この金属ベル、同じサイズであっても、よく見ると形は一個一個ちがい、表面は凸凹していて、なんとも言えない手作りの柔らかさがあります。
大量生産品にはない素朴な風合いに魅せられて、当店でも取扱しています。しかし、この銅製のベルが実際にどのようにして作られているのか、どのような人が作っているのか知らないままでした。
ティラキタ買い付け班、縁があって、この銅製のベル工房を実際に訪ねてみることが出来ましたので、ムービー付き、写真付きでレポートしたいと思います。
■金属ベルは乾燥した大地の国に
金属ベルの工房はインドの西の端っこ、パキスタンとの国境近くにありました。モディ首相のお膝元であるグジャラート州の一番端っこにあるカッチ地方。
カッチ地方はハンディクラフトが盛んなことで知られていて、今回のベルだけでなく、アジュラックと呼ばれる素敵な色合いの布などでも知られています。
ここに金属ベルの工房があると聞き、ティラキタ買い付け班、わざわざやってきました。金属ベルの工房はカッチの中心都市であるブジから車で20Kmほど更にパキスタンとの国境近くに走ったところにあるそうです。
金属ベルの工房を探して、ブジの街からタクシーに乗って出発です。
街を一歩でると、風景はすぐに乾燥した大地に変わりました。
道の途中でダンディな駱駝使いに出会ったり
夢の中で見たようなヤギの放牧に出会ったり
途中の村で一休憩したりしながら進みます。
村の人達、外人が来たと思ったらあっという間にお店を広げ始めました。
商魂たくましすぎ!
でもね…今日はこれ買いに来たんじゃないんですけど…
家の中では直火でチャパティを焼いてお昼ごはんの準備中。
直火のチャパティはさぞかし美味しいことでしょう
更にどんどん走って、砂漠の中の小さな村に到着しました。
目指す銅製ベル工房はこの村にあるとの事なのですが…さてどこでしょう??
村をうろつくこと15分。ありました、ありました。塀にCOPPER BELL ARTの看板がかかっています。どうやらここのようです。
■金属ベルは全て手作り
COPPER BELL ARTでベルを作り続けているのはルハール・フセイン・シディークさん。このフセインさん、カッチ地方に生まれ、髭が真っ白になるこの年齢までずっと金属ベルを作り続けてきた、金属ベル一筋のおじさんです。
フセインと言っても、イラクのサダム・フセインの親戚なわけではありませんよ(^^)
フセインはイスラム教徒の標準的な名前の一つなのです。フセインとは「善い」「美しい」を意味する「ハサン」から来た言葉で、イスラーム・シーア派の第3代イマームで預言者ムハンマドの孫にあたるフサイン・イブン・アリーにちなんで、イスラム世界では広く用いられています。
工房に座るフセインさん。金属製品を扱うからか、作業スペースは砂場になっています。
こちらがフセインさんが使用している道具類。長年使い込まれた様子が伝わります。トンカチ数本と鉄ばさみ、大きなペンチ、あと少々の道具で、素敵な音がする金属ベルを作成してしまうというのだから驚きです。
フセインさんの横に、作りたてのベルがありました。
今回は、どのようにしてこのベルが作られるのかを見ていきたいと思います。
フセインさん、ちょっと錆がある感じの鉄板を取り出して、カンカンと叩き始めました。
鉄板はみるみるうちに丸くなり…
数分もしないうちに、ベルの円形になってきました
フセインさん、今度は小さくな鉄板を、丸く切り始めます。
子供がやってくる横でカンカンと叩き…
何を作っているのかと思ったら、蓋の部分を作っているのでした!
いろいろな部分をカンカン、コンコン、キンキンと叩いて、ベルの形が完成!!
一枚の鉄板から、トンカチと鉄ばさみだけでベルができるだなんて、自分の目で見てみるまで信じられませんでした。インドの人々はこの様にして、家畜の首につけるベルを昔から作り続けてきたんだなぁ…と改めて歴史と、砂漠の中で続く生活を想います。
■古来から続く、原始的なメッキ
ベルはまだこれで完成ではありません。今作ったものは左のベル。売り物にするには右のように銅メッキをかけなければいけません。メッキしないと錆びちゃいますしね!
美しい見た目だけでなく、長持ちさせるためにも銅メッキは必要なプロセスです。
現代ではメッキは電気的なプロセスを経て行われますが、ここではまだ、古来から続く原始的なメッキが行われていました。
先程のベルに泥汁をつけ、その泥汁に絡ませるようにして、銅粉や他の金属の粉をベルに付着させます。
その上にもう一度、白い土の粉をかけ、その上から、さらに泥で覆います。
泥で覆ったベルはこのような見た目になります。
この釜の中に泥で覆われたベルを入れ、高音で熱することによって、銅粉が熱で溶けて、ベルがコーティングされると言う製造工程でした。
現代の電気メッキやもっと発達した製造方法を知っている人からすると「なんて原始的な!!!」と驚愕する製造工程ですが、ここの人々はきっと、何百年も前からこの様な製造方法を守り、受け継いできたのでしょう。
そうして出来上がったのが、こちらのカッパーベルです。伝統的なメッキ方法を使用しているのでメッキにムラがあり、それが逆にアンティック風の素敵な風合いになっています。
実際の完成品を見ると、なるほど、これが手で作られたんだなぁ…と実感させられる風合いですよね。手作りだからこそ出る、素敵な風合いがありますよね。
ティラキタにはこの工房からだけでなく、他の色々な工房からの銅製カッパーベルを取り扱っています。モノによって作り方が違うので、多少風合いが異なりますが、手作りなのは一緒ですよ!!