ロクタ紙-ネパール手漉き和紙の工房に行ってきました
目次
■ネパールの手すき和紙 ロクタ紙
ネパールには日本の和紙に似た風合いの素敵な手漉きの紙があります。このロクタ紙で作られた製品は、日本のアジア雑貨屋さんでも好んで取り扱われていますので、購入された方も多いかと思います。ロクタ紙の製品とは例えばこのような商品です。このロクタ紙の製品、アジアンないい感じでありつつ、お値段がお手頃なのが嬉しいですよね。
■「どのように作っているか」を確認したい
ティラキタはただアジア諸国から商品を輸入して販売するのではなく、出来るだけ源流まで遡って、「誰が作っているのか?」とか、「どのようにして作っているのか?」ときちんと自分たちの目で見て確認してから仕入れるようにしています。実際に見る事により、児童労働を行っていないことや、環境に対しての負荷などを確認できますし、製造工程を知ることにより、結果としていい商品をお客様に提供できるようになります。
ネパールでは今までにもコーヒー農園に行ったり、フェルトの工房に行ったり、チベット絨毯の工房に行ったりと、様々なモノづくりの現場を見てきました。
今回は縁があって、ネパール和紙であるロクタ紙の工房を尋ねることが出来ましたので、写真&ムービーいっぱいで、全力レポートします!!
■ロクタ紙ってどんなもの?
ネパールの手すき和紙はロクタ紙と言って、ロクタという木の皮からつくります。原料になるロクタはlokta-Daphne papyraceaとDaphne cannabinaという2種類がありますが、両者とも標高が2000-4000mの高度が高い所にのみ生える木で、ヒマラヤの国、ネパールの特産品です。ロクタは植えてから4-5年すると収穫できるそうです。苗の状態で植えたロクタは4-5年で大きな3-4mの茂みになります。ロクタを収穫するには切らないとダメですが、主幹を切り倒さなければ、脇芽がどんどん出てきて、また4-5年すると収穫可能になりますので、持続性が高く、環境にも優しいエコロジーな紙と言えるでしょう。
■ロクタ紙の工房に行ってみた
ロクタ紙は木から作られるので、通常、工房はカトマンズから7-8時間行った山の中なのですが、幸運にもカトマンズ盆地の中にあるロクタ紙の工房に巡り会えました。カトマンズのタメル地区から車で一時間位。カトマンズ盆地の外れにTibetan Handicraft and Paperの工房がありました。
素焼きレンガで区切られた工房内に入ると、いきなりぷんとロクタ紙の独特の香りがしました。
雑貨屋さんと言う仕事柄、ロクタ紙の香りは嗅ぎ慣れているのですが、それが空気の中に自然とあるのはやはり特別なものです。中に入ってみると、庭には一面のロクタ紙畑がありました。このロクタ紙畑は漉いたロクタ紙を乾かしているところになります。
■ロクタの木からパルプを作るまで
ここから実際にロクタのパルプがどの様に作られるかを見ていきましょう。これが原料になるロクタの束です。生皮は5ダルニ(12.5Kg)の束になって山からやってきます。
よく分かるようにもっと拡大してみました。木の皮の部分だけを使用しているのが、わかるかと思います。
繊維を苛性ソーダを入れた水に一晩浸漬してからすすぎ、材料に含まれている黒い斑点や不純物を除去します。
その後、苛性ソーダを含むドラムで7-8時間煮沸してパルプにします。
苛性ソーダを取り除くために再びすすがれた後、最後に機械で繊維をほぐしてパルプ状にします
■パルプからロクタ紙を作るまで
ロクタ工房の約300坪はあろうかと思われる庭は一面、ロクタ紙で覆われていました。庭の一角では、おばさんがジャバジャバと音を立てて、ロクタ紙を作り続けています。一枚のロクタ紙を漉くのに必要な時間は一分そこそこ。手慣れた様子で、おばさんがロクタ紙をどんどん作って行きます。
おばさんの名前はシャンタ・マヤ・マガルさん。10年位ここで働いているそうです。彼女は北ネパールのドラカからやってきて、カトマンズには20年位住んでいます。カトマンズに来たのは、農村では十分な仕事がなく、子供の将来を考えるとカトマンズに来たほうがいいからだと言っていました。
ロクタ紙を漉くと言っても、ここのロクタ紙は、僕達が考える漉くではなく、ネパール産のコウゾを溶かしてパルプ状にしたものがすでに大きなバケツの中にあって、それを水の中で平らに伸ばす感じです。だからロクタ紙の表面はちょっと凸凹してて、独特の風合いがあるのですね。
マネージャーさんによれば、この工房ではネパールの伝統的な方法と、日本のミツマタを使った方法の二種類の紙を作り分けているそうです。下のムービーはネパールの伝統的な方法で紙作りをしているところです。
シャンタさんがロクタを掬っているバケツを覗いてみました。中には白いパルプが入っていました。これが原料のパルプです。ふわふわとしていて、お餅のような、マシュマロの様な、なんとも言えないさわり心地です。
シャンタさんの後ろには、たった今、漉いたばかりのロクタ紙のフレームが立てかけられていました。この様にしてざっと水を切ったあと、一つ一つ天日に干されます。漉いたばかりのロクタはクリーム色をしています。
ロクタ紙同士ができるだけ影にならないように、上手に立てかけます。クリーム色だったロクタが、乾燥するにつれ、だんだんと白くなってきています。
ここではなんでも人力が基本です。紙を漉くのも、フレームにかけ乾燥させるのも、フレームから乾燥した紙を剥がすのも、すべて人の手で行われていました。
この工房ではロクタ紙を一日に400-500枚くらい作れるそうです。出来上がったロクタ紙はこの様に手でまとめられ、カトマンズ、そして海外に出荷されます
毎日のように取り扱っているネパールのロクタ紙ですが、実際に工房に行ってみると、単純な一枚の紙にもその土地ならではの作る理由があり、伝統があり、作る人々の生活や、気持ちや、様々なドラマがあるのだなぁ…とすごく強く伝わってきました。
「工場制手工業(マニュファクチュア)の真骨頂! 全てが手作りのロクタ紙工房を尋ねる」に続きます
ティラキタさんには
主にスパイスの購入で
時々利用させていただいております。
私はカトマンズに住んでいます。
最近、気に入ったロクタペーパーを見つけ
買い集めるようにしていたのですが
(小物作りやラッピング用です)
私もいつか作っている工房をのぞいてみたいと思いました。
こんな風に作られていたんですね!
興味深かったです。
誤字を指摘します。水酸化ナトリウムの俗称は化成ソーダではなく苛性ソーダです。
日本の和紙の製造工程には苛性ソーダ液のような化学的に強烈な物で煮るステップはありません。みつまたの皮を精製した上で杵で長時間叩いてほぐしてから水性環境で刃物で切り刻んで「パルプ」に相当する原料にします。ネパールの山中で苛性ソーダ液の廃液を如何に無害化して廃棄しているか、もしくはそのままその辺に投げ捨てているか、大変興味あるところです。参考事項:検索語「技のココロ・和紙」
ありがとうございます! 早速修正しました!
「苛性ソーダ液の廃液を如何に無害化して廃棄しているか」
これは…どうなのでしょうね。ちゃんと無害化していると書きたい所ですが、きっと違うだろうなぁ…と思ってみたり。実際に現地に行って、機会があったら調べてみたいと思います。