シンギングボウルってこうやって作るんだ! ネパールでシンギングボウルの工房を尋ねる

2016年12月22日     2 Comments    Posted under: インドが大好き!!, 商品について

■シンギングボウルの模様を描いている人がいた

ネパールにはボダナートと、スワヤンブナートと言う、2つの大きな仏塔があります。スワヤンブナートへはカトマンズの中心地点のタメルから歩いて1-2時間ほど。気軽な散歩気分でテクテクと歩ける距離です。

インドパパが初めてネパールを訪問した20年前、スワヤンブナートへの道は畑だらけでしたが、今はレンガ造りの家が立ち並び、きれいな舗装道路になっていました。とは言うものの、道の横には小さな仏塔が立ち、宗教が大切にされているのが感じられます


こちらがスワヤンブナート。ネパールで一番美しい仏塔の一つで、カトマンズを見下ろす山の上に立っています。本当に素敵な場所ですので、ぜひ、ネパールに行かれた際に訪ねてみて下さい。ティラキタ買い付け班、強力オススメスポットです。


スワヤンブナートに行く途中、シンギングボウルにコツコツと彫刻している人がいました。美しい金色のシンギングボウルを樹脂の台の上に乗せ、黙々と模様を彫っています。


シンギングボウルの中を見ると、ブッダの絵が描かれたコピー用紙をシンギングボウルに貼り付け、綺麗に彫れるように工夫がしてありました。

ネパールの人たち、上手に仏様とか彫るよなぁ…コンピュータでやってるのかなぁ…と思っていたのですが、実際はこういう事だったのですね。

しかし、根気が必要で、手間暇のかかる仕事です。5日で1個のシンギングボウルが出来るかなぁ…と言うペースでした。


職人さんの作業風景を、ムービーで撮影しました。コツコツ、コツコツ。
毎日、ネパールのラジオを聞きながら作業しているみたいです。

職人さんによると、シンプルなシンギングボウルが出来た後、この工房に運ばれ、ハンマーとタガネでデザインを入れるそうです。デザインを入れた後、エッチングしてデザインの濃淡を付け、更に高品質のシンギングボウルに仕上げていくと言っていました。

こちらがその職人さんが仕上げた後の最終完成品。あまりの細かい細工にため息しか出てきません。実はこのシンギングボウルが欲しかったのですが、結構高い値段を言われたので諦めて帰ってきました。

良いものを安く売るのが僕らの仕事ですから、いくらモノが良くても高くてはダメです。


絵付けの工程をある程度理解した所で、シンギングボウルの本体がどのように作られているのか見てみましょう。

■シンギングボウルをどうやって作っているのか

シンギングボウルの工房は、ネパールの東大的な存在のトリブバン大学の近くにありました。カトマンズの中心街からトリブバン大学まではこのような道を抜けて行きます。

工房は川のほとりにあったのですが、素焼きのレンガで作られた壁の中で作られているので、知らなければ中で何が行われているか、全くわかりません。きっと毎日前を通っていても、わからないでしょう。

シンギングボウルの制作は家族単位で行われているとの事で、自宅が工房兼自宅になっていました。


中に入ってみると、いきなり、シンギングボウルを鋳造している現場が出てきました。


シンギングボウルには手で打って作る手打ちのタイプと、今回の工房の様に鋳造して作るタイプの2つがあります。

手打ちは風合いはいいのですが、出来上がったシンギングボウルの音に大きな違いがあります。その反面、この工房で作られている鋳造タイプは予めいい音が出るシンギングボウルをベースにして作られているので、安定した品質でたくさん作ることができます。

これがシンギングボウルの金属を溶かすために使われる石炭です。使う石炭は金属を溶かす為に高温になるタイプのものを使います。石炭はネパールでは算出しないので、インドのビルガンジからやってくるのだそう。この工房では鋳造釜が2つあり、最大で1日に200kgの石炭を使うとのこと。


工房の端っこに、金属を溶かしている釜がありました。


釜の中を覗いてみると…釜の中では金属が高温で溶けています。まるで水のようです。地獄の釜を覗いている気分です。この日、鋳造に使っていた金属はブロンズだそうですが、必要に応じて、様々な金属をこの炉で溶かします。

釜の横にはブロワーがついていて、常時新鮮な空気を送り込むことによって、金属を溶かせるだけの高温を維持しています。使っているのは良質な石炭ですが、それを更に高温にして使うために、どんどん空気を送り込みます。


鋳造には元の原型と、型になる物が必要です。この工房では型になるものとして、非常に目の細かい砂を使用していました。

この砂はギュッと押すと固くなる特別な砂で、指で触るとサラサラしていますが、ギュッと圧縮すると、シンギングボウルの型の形を保ってくれます。


それでは動画で、実際にシンギングボウルを鋳込む過程を見てみましょう。

鋳造職人のラジエメットさんに話を聞いてみました。ラジエメットさんはネパールでは珍しいイスラム教徒で、ここで働いて20年以上になるベテランさん。ラジエメットさん、淀みのない動きで次から次へとシンギングボウルの原型を鋳造していきます。


ラジエメットさんによれば、鋳造は朝の2時から12時頃まで行われ、一日に約100個鋳造できるとのこと。朝早い理由は、朝方の方が色々と鋳造作業に都合がいいからだそうです。

「夏の暑い中で、鋳造作業するのはイヤだろ?」

まぁ、そうですよね。
暑そうな作業ですから、涼しいうちにやりたいですよね。

こちらが鋳造が終わったシンギングボウル。まだまだ荒削りで、使用できる感じではありません。金属のバリもありますし、表面もザラザラです。これをどの様にして、ピカピカのシンギングボウルにするのでしょうか?


この方はナザーカット・フセインさん。やっぱりイスラム教徒です。
シンギングボウルを作って40年になる大ベテラン。
慣れた手つきではありますが、真剣にシンギングボウルを削っていました



さて、ここで疑問です。

なぜイスラム教徒が、仏教のシンギングボウルを作っているのでしょうか?
イスラム教徒は偶像崇拝を否定しているし…そもそもイスラム教徒が他宗教の神様を作るなんてありえるのでしょうか?

案内してくれたアクシャットさんに聞いてみたところ、実は、金属の鋳造はイスラム教徒の伝統的な仕事なのだそうです。

イスラム教徒が他宗教の神様を作るなんて…予想もしない、本当に意外な答えでした。インドやネパールと関わって20年以上になりますが、そんな事があるなんて全く知りませんでした。

でも、今までの記憶を紐どいてみればそうです。インドにモラダバードと言う金属製品で有名な街がありますが、そこもまたイスラム教徒の街で、イスラム教徒が色々な金属製品を作りつづけています。

インドではヒンドゥ教徒が必要な金属の神様も、ネパールで仏教徒が必要なシンギングボウルや仏様も、実はその多くがイスラム教徒によって作られている…インドやネパールの文化的・歴史的な深みを覗いた気がしました。

それは古くから続く伝統的でカーストみたいな物なのだそうです。
ムガル帝国がインドを支配していた頃からの伝統ではないかとアクシャットさん。

鋳造されたシンギングボウルを一つ一つ、工具を使って削っています。


色々な工具を使ってどんどん削って行きます。工程が進むに連れて、段々とシンギングボウルらしくなってきます。


最終的にもうちょっと柔らかいバフみたいなので、ツヤを出していきます。


磨き終わったシンギングボウルはキラキラとした輝きが出てきました。これで、ほとんど完成です


このシンギングボウルを作る工程は500年前、1000年前とほとんど変わらず、昔と違うのはモーターを使う様になっただけです。

昔は鋳造から研磨まですべて人力で行われていて、研磨をする所のモーターが人力だったのだそう。今は電気が来るようになったので、モーターで出来る所はモーターでやるようになってちょっと楽になり、以前よりもいいクオリティのものが出来るようになったそうですよ。

■シンギングボウルのホントの話を伝えたい

さて、ここまで、シンギングボウルのありのままをお伝えしてきました。僕らはいつもできるだけ、インドやアジアのあるがままを伝えたいと思っていますが…残念ながら、世の中そんな人ばかりとは限りません。

以前、「セブンメタル シンギングボウルの真実」と言う記事を書かせていただいたことがあります。その時点では、僕らも実際にどの様にしてシンギングボウルを作っているか判らなかったので、私達が子供の頃から慣れ親しんでいる「科学的な常識から考える」と言うアプローチで書かせて頂いたのですが、実際、この記事を書かせていただいてから、日本国内でセブンメタル・シンギングボウルと言って販売しているサイトが減ったと感じます。

僕らは科学的でないこと、目の前に見えないことを書く事が好きではありません。「異国の文化をそのまま紹介すること」「スピリチュアルにならないこと」はティラキタの大切な基本方針です。

私達、ティラキタにとってシンギングボウルは楽器です。きれいな倍音が出る、美しい、エスニックな楽器です。ですので、きれいな音が出るシンギングボウルをリーズナブルなお値段で提供していく事ができれば、それが一番だと考えています。

これからもできるだけ、インドやアジアの面白い真実を伝えていければと思っています。
いつも、読んでいただき、本当にありがとうございます

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2 Comments + Add Comment

  • たいへん興味深く拝見しました。素晴らしい記述でした。
    イスラム教徒がシンギング製作、不思議でした。
    インドでも、露天で見かけました。ヒンドゥー教は、仏陀を9番目の神として、受け入れていますね⁉たしか?
    ブログ始めました。音の楽園➡http://nichinankaigan.blog.fc2.com/
    よかったら、覗いてください。門川

  • ありがとうございます。イスラム教徒がシンギングボウルを作るというのが大変面白いですよね。私もビックリでした。

    ヒンドゥ教は、仏教を取り込む形で拡大しましたので、確かヴィシュヌの化身ということになっていますよね。
    ブログ、拝見させていただきます。
    ありがとうございます

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