洪水というよりも津波…商品の裏にあるドラマとその後

2014年12月11日     2 Comments    Posted under: インドが大好き!!, 商品について

■また問題のある商品がやってきた

いつものことなんですけど、ちょっと問題のある商品がインドからやって来ました。

「またかよ!」って正直思うんですけど、インドとの取引ではさけて通れません。

今回の問題のある商品は金属のコップです。このコップはステンレスのラッシーグラスにインド人が一個一個、手で色を塗っていったもので、手作りのあたたかみとチャーミングなデザインが素敵な逸品です。

そして今回の問題は…このコップの表面をよく見ると分かるのですが、何か薄くしわしわの跡が付いています。この跡はコップを作った後、きちんと乾かないうちにビニールに入れたか、インドの猛暑で表面のニスが溶け、外側のビニールにくっついて跡ができてしまったのだと思います。

今回は注文した全部、200個のコップ全部が同じようなダメージを受けてしまっていて、本当に残念でした。キュートでカワイイのに。職人は一生懸命作ったはずなのに。パッキングが問題で、ティラキタでは売れなくなってしまいました。

また同じことが起きると問題なので、サルでも分かる簡単な画像を作り、送ることにしました。

「まぁ、仕方ないけど…次は問題なくなるといいね」
「そうですよねぇ。」

と言いつつ、写真をメールで送信したのです。

■ハンディクラフト王国カシミール

この商品を作っているのはインドの北の果て、パキスタンと国境を接するカシミール地方の人々です。カシミール地方は標高が高くて寒いので、伝統的に人々は家にこもって様々な手工芸品を作ります。標高8000m級のカラコルム山脈があり、中国との国境には世界第2の高峰K2がそびえると聞いたらイメージが湧くのではないでしょうか?

また、カシミールに住んいる人たちはいわゆるデリーあたりで見かけるインド人ではなく、はるか昔にイランあたりから流れ着いてきた遊牧民の末裔だったりします。

カシミールで作られているものには…

カシミール絨毯とか

ペーパーマッシュの箱とか

手が込んでいて時間がかかる物が多いのが特徴です。長い冬の間、じっくりと一つのものに向き合って、じっくりと作り上げる。それがカシミールの手工芸品の魅力なのだと思います。

■インド中に散らばるカシミール人たち

インドを旅行していた人だったら「あー、そう言えば!」と理解できるかと思いますが、カシミール商人って結構色々な所でみかけますよね。 ネパールのカトマンズでも、ポカラにも、インドのデリーでも、ジャイプルでも、南の国ケララでも。およそ観光地であればカシミール商人の姿を見ない場所はありません。

「お前ら、どこにでも居るよね?」

っていうのがインドパパの印象ですが、その印象はきっと、間違っていないと思います。

彼らがどこにでも居るその理由ですが、カシミール地方はインドとパキスタンの領土紛争の舞台になっていて、日本政府からも渡航勧告が出ている程、危険だからなのです。1947年にインドがインドとパキスタンが分離独立した時に優柔不断だったマハラジャがカシミールをどっちの国に帰属させるか悩んだ結果、答えが出ず、それが今でも領土紛争の種として残っているのですね。

ツーリストが居ないということは、いくら時間をかけていいモノを作っても、お客さんがいないという事。結果、カシミールの人たちはお客さんを求めてインドのいろいろな場所に出かけて行くことになったのでしょう。

自分の土地で作ったものが売れれば一番なのに。紛争のせいで行商しなければならない…紛争のせいで親子はなればなれ…そんな悲しい運命の人達、それがカシミールの人々なのです。

■そして…問題のあるコップは

もちろんですが、カシミールの人たちが悲しい運命の人たちだったとしても、うちのお店で問題のある商品を売ったりはできません。それとこれとは別の問題なのです。ちゃんとした商品を作ってもらわないと困ります。

うちのお店で文句を言うための画像を作り、送って一週間後…

「ねえ、カシミールの人たちから返事来た?」
「いや、まだですね???。ちょっと電話で連絡してみますね」

と、国際電話をかけ始めます。しかし「この電話は使われていません」との返事。幾つか電話番号を貰っていたので、そこにもかけてみます。「ツーツーツー」との返事。貰ったどの電話番号も一つも繋がりません。

「店長、これ、逃げられましたよ」
「えーーー! マジか…」
「どうします?」
「諦めるしかないかな…」

なんて話をしていた一週間後に奇跡のようにメールが返って来ました。

Sorry for late reply, AS you may be aware of the world news that Kashmir
valley is hit by Tsunami Flood on 6th September and almost the entire
valley is under 12 to 28 feet flood water. Most of the cities and towns
have been washed away and with the Gods will all are alive and have been
rescued from flood water. Our homes have been damaged by flood waters and
it will take a time to resume our life though not normal. We value your
co-opperation with us at this hard time. Today our communication with rest
of the world has been restored .

要約すると…

返事が遅れてごめんな。君も知っているかもしれないけど、9月6日にカシミール谷で大きな洪水が起きて、谷のすべてが水に浸かってしまったんだ。多くの街が被害を受けたんだけど、神様の恩寵で多くの人は助かったんだ。

僕達の家もダメージを受け、元の生活に戻るには時間がかかりそうだ。ここ最近、やっとこ外界との連絡が出来るようになった所なんだ。

との事。ホント!?と思って調べてみると…

「洪水というより津波」、カシミール地方の洪水 死者480人に

インド・パキスタンで大洪水、死者300人超=カシミール地方

みんなボートで逃げ出しています

indiatoday

商店も水に浸かってしまいました

indianexpress

ああ、これはヒドイ…「洪水というよりも津波」そのタイトルに全てが集約されている気がします。

こんなヒドい被害があったのに、知らなかったとは言え、こんなコップの小さな問題で騒いでごめんなさい。
正直、家の問題に比べたら些細な事だよ。
ゴメン!!

本当に申し訳ない気持ちになりました。

と、思っていたら、追加でメールがやってきました。

「半分はうちが保証するから、半分は勘弁してもらえないか。ただ、生活が元通りになるまで待ってくれ」

との事。自分が大変なのに。家も壊れたのに。ライフラインだって寸断されたのに。
キミは遠くの国のボクに気を使ってくれているのか。

メールを読んだ時に感動して涙したとともに、「疑って悪かった。キミとはこれからずっと付き合うよ」と心の中で思ったのでした。

■【2015年3月追記】そして感動の再会

こののブログを書いた後に、2015年3月にデリーに行った際に偶然、カシミール人、ザヒール君と再開しました。

「インドパパさん!!」との声にふと振り向くと…そこには人の良さそうなカシミール人の顔がありました。

「おおおお!!! ザヒール!! 大丈夫だったか!!」
「いやーー、去年は本当に大変だったんだよ! でもまだ生きてるよ!」

一年ぶりの感動の再会です。お互いの無事を確認し合い、ハグし、喜び合います。そりゃそうです。彼は自分が洪水を受けたからって決して自分だけの利益を主張しないいい男です。もう僕らは友達。ベストフレンド。

「マイフレンド! 今年も頑張ってお店出したよ」と自分のお店に引っ張っていきます。去年よりは少なめのラインナップですが、それは仕方のない事でしょう。洪水の中から再度立ち上がり、もう一回デリーに来てお店を出す。本当に素晴らしい事だと思います。

「去年のメール見た?」と聞いてみます
「もちろんさ!! コップがダメだったんだろ? 半金はうちの方で保証するから、新しい注文をくれよ」とザヒール君

気を良くして色々注文しました。もちろん、問題のあったコップも。

「今年のは問題ないかな?」
「今年はもっとしっかり作るから! 大丈夫だよ」

とか言いつつ、注文していきます。注文が全部終わり…記念写真をパチリ!!
もう、僕ら仲良しです。ザヒール、君はなんていい奴なんだ…

■日本に帰ってきてみると…

そして3週間後、インドの各地を回って日本に帰って来ました。ザヒール君に連絡を取り、見積書を貰います。程なくして、ザヒールくんから見積書がやって来ました…

請求書をチェックしてみると…なぜか半金を返すと言った筈のコップの値段が倍の金額になっています。確かに半金は返金計算になってるのですが、元々の値段が倍になっているから結局同じ値段です。

早速聞いてみます…

「ねえ、なぜかコップだけ倍の値段になってるよ」
「今年はちゃんと作ったから高くなったんだ」
「え?」
「今年のは問題ないぞ」

え? そうじゃなくって…あまりの手段に空いた口がふさがりません…

「そしたら問題のあったコップの保証分だけ送ってよ」と言ったら…それっきり音信不通になりました。おい、どうしたマイフレンド…おーーい!!! おーーい!!!

商品の半金を返金すると約束しておいて、返金するときの請求を倍額にし、つじつまを合わせるって…そんなのアリ!!?

冗談でしょ?
そんなひどい話、聞いたことないよ!!

お前をベストフレンドと思った俺がバカだった!!

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2 Comments + Add Comment

  • 今日は。神戸でペルシャ料理をしています。主人は勿論イラン人です。カシミール地方の方々よそ事ではないなぁ?。と思い連絡しました。久しぶりに店内の模様替えをするのにサリーを探していました。以前何回か購入したこともあり信頼しております。
    コップ事件の事わかります!当店でもイランから直接買ったチャイカップは赤から透明に色落ちして行ってます(笑)
    まっ、それもお国柄かな?。と楽しんでます。
    さて、本題ですが、気に入ったサリーもありましたので購入予定です。サービスでついてくるカップは売るとしたら
    いくらで買えますか?アイス専用カップですか?大きさ(容量)など教えて頂ければ少ない数ですが購入したいと思います。
    で、できればそのお金をカシミールの人たちに使って頂けたらと願っております。
    お返事の後、サリーの購入に入ります。
    どうぞよろしくお願いします。

  • 井上様
    インドパパことティラキタの梅原です
    丁寧なご連絡、ありがとうございました。
    また、ブログの書き込みの確認が遅れ、御返事が遅くなってしまいましたこと、お詫び申し上げます。

    >神戸でペルシャ料理をしています。主人は勿論イラン人です。
    神戸でお店をされているのですね。神戸に行った際にはぜひ遊びに行かせて下さい。

    >カシミール地方の方々よそ事ではないなぁ?。
    確かにそうですよね。日本でも色々な災害がありますが…彼の地でもまた大変なのだと思います。

    >コップ事件の事わかります!当店でもイランから直接買ったチャイカップは赤から透明に色落ちして行ってます(笑)
    あははwww そう言う事、よくありますよね。
    やっぱり、日本の商品のクオリティはいいなぁとは思いますが、モノとしての味はインドやアラブ圏のほうが格段に上ですよね。

    >さて、本題ですが、気に入ったサリーもありましたので購入予定です。サービスでついてくるカップは売るとしたら
    いくらで買えますか?

    カップですが、まず、食品としての検査を受けておりませんので、食品用としては難しいかと思います。ニスの匂いがちょっとしますし、法的な問題以上に食品用としてはお勧めできないのですね。それでも良ければ、お値段お伝えさせていただきます。

    なおプレゼント用とした際も、ただプレゼントというだけでなく、そのプレゼントが欲しくて購入してくれるお客様が居らっしゃいますので、やはりカシミールの方たちのためのお金はプール出来ます。もちろん次回も同じ人から買いますし…ですので、あまり気にされなくても大丈夫ですよ。

    お気遣い、ありがとうございました。
    何卒よろしくお願いいたします。

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