パタヤに向かうインド人

インド人男性はエロい。これはインドを旅する女性の共通認識ではないだろうか。何かあるとすぐに体に触ってこようとして、ちゃんと撥ね付けないと図にのって撫で回してくる。そんな話は日本人女性に限らずいろんな国籍の人からしょっちゅう聞いた。

もちろんその原因は結婚するまでは純潔を保たなければいけないというインド国内の非常に強い文化と風潮がある。周りに不順異性交遊の事実がばれたりしたら冗談抜きに大事になってしまうのだ。インドの持っている禁欲的な文化は何も男女関係のことだけには止まらない。インドの国内では牛肉は基本的に食べられないことになっていたりするし、飲酒も非常に好ましくないと捉えられている場合が多い。もちろんインドなのでいくらでも抜け道があったりはするのだが、あくまで表向きはダメである。

そんなインド人男性がタイに出かけたら?

ふと読んでいたインド製男性向け雑誌の記事の中にちょっとものすごい特集ページを見つけてしまった。その名も「パタヤの2880分」。分かりにくい。ゼロを発見したインド人諸君には簡単な計算でしかなく、洒落た表現にしか見えないのかもしれないが、正直48時間だとすぐには出てこない。そんなわけでこれはお金持ちインド人男性がパタヤで2泊程してはっちゃけまくる指南の特集である。

のっけのサブタイトルから「50過ぎの中年の危機に陥った出っ腹アメリカ人じゃなくて何が悪い!?」と驚くほど鼻息が荒い。やる気満々の脂ぎり方である。そして一泊6000Rsのインド的にはどう考えても高額なホテルから紹介が始まる。華やかなアクティビティが紹介され、CATの準備で取り逃したファンタジーをもう一度!との情熱的なそそり文句である。

飲食店の紹介にしても素晴らしいキャバレーショーが見られるお店が一軒目、そこには「ショーガールの股間の見慣れたものに注意するように」との丁寧な解説付だ。確かにタイにおいては必須の警告ではあるが、それにしてもこれもノリノリだ。Tバックのダンサーのお尻の写真がその興奮を煽っている。

さらに悪ノリしすぎて二軒目はなんと一人2000Rsもする高級ビーフステーキ店である。タイは「牛が鶏程度にしか神聖ではない国」と言っているけれど、えええええええええぇ??そういう問題なのか、インド人!!国がどうこうじゃなくってヒンドゥー教徒としてまずいんじゃあないのか??

心配してしまう外人の心配をよそに紹介はお酒に移る。「パタヤのビールを飲めるバーはデリーの牛の糞程辺り一面に転がっている」とぶち上げて、シンハービールを片手にタイ人女子を口説きまくれと激しく煽る。婚前交渉どうこうというインド国内のモラルはビーフステーキとビールを流し込む頃には忘却の果てまで吹っ飛んでいるに違いない。

しかもご丁寧なことに女子の疑わしい髭の剃り跡と喉仏をお持ち帰り前にチェックするようにとのアドバイス付きだ。インドのインド人向けの雑誌でここまで言っちゃって大丈夫なのだろうか?最後に申し訳程度にパラセーリングやスクーバダイビングもできることが載っているけれどこんなとこ読む奴はきっといるまい。

最後にもう一度大きく注意事項が示される。第一は外国人がインドに行く時に言われるのと同じで、パスポートと貴重品に注意ということ。インド人がこういうことを言われているのを見るのは新鮮である。「飲みなれない酒を飲んだ時は特にね!」と書いてあるのが微笑ましい。そして1ページの記事の中で3度目になる美女(男子)への注意書き。ど派手セクシー系な美女(男子)の写真まで載せての念入りの警告である。お酒以上に女性に免疫のないインド人男性にはいくら注意してもし足りないことはないのだろう。あるいは記事のライターが苦い思いをしたことがあるのか、それは全て推測の域を出ないのだが。。

文章:DJ sinX(しんかい)
日本での7年のDJ活動の後、世界各地でプレイするべく2007年から旅を始める。オーストラリア、東南アジアを経て現在インド亜大陸へ。活動はDJだけに留まらず、音楽イベントの開催、「Thanatotherapy」名義にて楽曲作成なども行う。
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